子供のころは、カブトムシやザリガニをよく取りに入ったものです。
「えっ、新宿の歌舞伎町でもカブトムシやザリガニが取れたんですが」
そうですよ。だいだい、今の西口なんかはビル一つ何も建っていなかったですしね。
よく取りに入ったもんですが、すっかり町は変わってしまって、今じゃ全く取れないですよね。
今の子供たちはデパートなんかでカブトムシを買ってくるんでしょうがねえ。
歌舞伎町だって今のように怖いところじゃなかったんですよ。
住んでいるのは昔からいる地元の人たちだけだからねえ。
でも今はずっと住んでいる私だって怖いですよ。
知らない人間が知らない土地にくるということは怖いことですよ。
中野なんていったらもう田舎って感じでしたしね。
もうその先なんていったらど田舎ですよ。
でも今じゃ、みんなすっかり山を切り開いて住宅街になってしまったけどね。
昔はそれなりのその土地その土地の独自性みたいなものがあって、
たとえば六本木なんていったら、ハイグレードの人たちの隠れ場みたいな感じだったわけですよ。
でもその場所についに風俗店が最近出来たらしくってね。
信じられないことですよ。
もうそういう店が一つできたら、その場所はあっというまに変わってしまう。
せっかくのその土地ならではの良さがなくなってしまう。
なんだかすごく残念なことですよね。そういう場所が年々失われていくことは。
今じゃどんな場所いっても同じですもんね。
なんだか随分老成してしまったおじいさんのような発言に聞こえるでしょうが、私まだ50歳ですよ。
時代の流れがあまりにも早くて、
変わりいくのがあまりに早いから、失われてしまったものがあまりにも多いから
歳よりはるかに歳取った発言になってしまうんでしょうよ。
世の中、お盆だって田舎に帰るけど、私の実家は歌舞伎町ですよ。
帰ったところで、「ふるさと」っていう感慨なんてないですよね。