「新しい」戦争か?
2001年 10月 29日
正直いって、今回の一連の事件(世界貿易センタービル倒壊からアフガン空爆まで)は、
どちらかというと従来型の20世紀の負の遺産が表出したに過ぎない。
難解な言葉が入り乱れる現代社会だが、
その根本的意味や言葉の背景を調べるのに便利なのが、
「現代思想を読む事典」講談社現代新書、今村仁司編である。
1988年というから、今から13年も前に出た本であるが、
ここに集められた用語は、今を読み解くには十分である。
アイディンティテイ・カタルシス・カリスマ・クローン・ジェンダー・情報社会。
イスラム原理主義、イスラーム、イラン革命、そしてテロリズム。
こういった言葉の解説が一冊となった便利な本だ。
今、本屋に急遽並べられているようなにわか仕込みのイスラム解説本とは分けが違う。
問題の本質を見極めるには、この本が役に立つことだろう。
この本でテロリズムとはこう書かれている。
現代においても外国の反体制運動を支援して行われる国際テロリズムがみられ、
ハイジャック事件や無差別発砲事件などが起こっている。
これは大国の政治的圧迫に対する政治的抵抗ともいえるが、
その反面、大国が軍事的武力を背景に行使する政治的圧迫の中にも、
構造的で組織的なテロリズムの要素が含まれていることも見逃せない。
この解説を今のアメリカとビンラディン氏の構図に当てはめてみれば、ぴったり重なることだろう。
「新しい」といえるのは、ハイジャックと無差別殺人を組み合わせたテロの方法であって、
テロリズムの構図的には何ら従来と変わることはない。
しかもここでは、大国の武力行使でさえ、形を変えた「テロリズム」の可能性を指摘している。
テロを撲滅するために大国の武力行使という、小国からみた「テロ」によって成し遂げようということは、
あまりにナンセンスなのだ。
時代は21世紀を迎えたにもかかわらず、為政者は20世紀の負の遺産から抜け出す事はできない。
アメリカも、そしてビンラディン氏も、テロによっては何の問題も解決しない事を、
肝に命ずるべきだろう。