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男と女のクリスマス

<1>
酔わしてやろって下心もって近づいて飲んでいた女の子が、
次第に悪酔いしてくるのをみて、急になえはじめた。
目がすわっていた。その目で真正面からにらみつけ、目をそらそうともせず、
「わたしの何が悪いっていうのよ!」 と周囲も気にせずでかい声で話し始めた。
男はひく一方だった。

お互いに酔って気分が良くなって、楽しくなったところで、
「さあ寝ましょう」みたいな、そんなシチュエーションを何度も頭の中に反芻していたにもかかわらず、
目の前にいる女の子は、たちの悪い酔っ払いおやじと何ら変わりはなかった。

「まあ今日はどんどん飲もうよ」
「ええ、私弱いから・・・でも飲んじゃおうかな」
なんて遠慮していた飲み始めの頃がかわいらしくていいわけで、
こっちもなんとか飲ませて酔わせてどさくさにまぎれてこの機会に・・・と思う下心に火がつくわけだが、
「もう一杯!おかわり!早く早く」
とこっちがすすめもしないのに、大声で酒をオーダーする態度を見ると、ただひくばかり。

<2>
「もうやめたら?相当酔っ払ってるみたいだし。帰れなくなっちゃうよ」
酔わせて帰れなくさせようと願っていたはずの男は、もうこの時点で下心は消えうせていた。
早くこの場から去りたい。もうこの酔っ払いとは関わりたくない。
途中までは楽しい酔い方だった女の子が、一時期をさかいに悪酔いに転じたのだった。

「何いってるの?まだまだ飲むわよ!あんたもつきあいなさいよ」
ほんとたち悪い。こんな女の子、彼女にするのは絶対にやだなと思う。
すすめもしないのにすごい勢いで飲んでいく。
やばい、どこかで逃げ出したい。このままだと間違いなく・・・吐いた世話役をしなくてはならない。
「だいだいさあ、男って何なのよ!ねえどう思う?答えて。いいから答えて!!」
うるさいな、このあま。ほんとどうしようもないな。
酔っ払うとこんなにたち悪くなるなんて思いもしなかった。

テキトーに返事を返していたが、いつのまにか静かになった。
ふと見ると、寝ていた。
ほんとならこのままホテルに連れこんでなんてことを思う場面だが、
もうこの酔っ払いとは関わりをもちたくない。
やってしまえば、酔っ払いも何も関係はないが、
やはりそこにはある程度のムードみたいなものが必要なわけで、
悪酔いしてげろ吐きそうな女の子かついでやるきには到底なれない。
というより、次第に目の前の女の子は、
性欲の対象としての女性ではなく、ただの重い物体にしか見えなくなっていた。

<3>
とはいえこのまま知らんぷりして店においていくわけにもいかない。
まったくこんな悪酔いのために金は出したくないなと思いながらも、
仕方がないのでお会計を済ませ、終電に帰れるようにと、叩き起こす。

なかなか起きない。
機嫌が悪い。
起きたっと思った瞬間、げろげろげろ・・・・

最悪だ。この女。

女の子をタクシーにかつぎこむと、行く先だけいって男は乗らなかった。

「もしもし、ねえ今、暇かな。ちょっと飲みたいんだけど」
男は男友達に電話する。
こんな日は、男同士で飲んで話でもしないと、行き場のない感情が抑えきれない。

はあ、最悪。
悪酔いの女はかんべんだ。

by kasakoblog | 2001-12-24 20:56

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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