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すれちがう都会の街角

金曜日、夜中1時半過ぎ。
赤坂見附駅前に人通りはないものの、客待ちしているタクシーは延々と列をなし、
水商売の客引き女は、寒い中、獲物を狙っている。
どちらも無駄に思える。もう人は歩いていないじゃないか?
それでも街は明るい。
客が少ないとはいえど、カラオケや居酒屋など、あちこち明るい光がともっている。

僕はサンダルで、ちょっと近くのコンビニまでアイスを買いに行く。
珍しい獲物が来た!と思ったのか、
厚手のジャンバーをはおって寒そうに立ちつくしていた女の子が、僕めがけて飛びついてきた。
「マッサージいかが?」 「行きましょうよ」 「ねえ1時間だけ」
この界隈はなぜか水商売は中国人が多い。
韓国料理店も多いが、夜の街に立っているのはなぜか中国人ばかりだ。

「中国人ですか?」
「そうです」
「どこの出身?」
「ペキン」
「ベイジンか。なつかしいな。前に4回ほど行ったことがあるんですよ」
「へえ!」
「ウルムチとか敦煌にも」
「ねえ、行きましょうよ。1時間だけ」

まきついてくる腕をふりはらって僕はコンビニへと向かう。
何かあまりに明るいその客引きぶりに、なんか元気になりそうな気分になれる。

当然、帰りも同じ道を通るのででくわす。
僕はでくわさないようにと目をそらしてさっさと歩くが、見つけられて、またとびついてくる。
今度は手をとりひっぱってくる。
でもそれはけっして強引ではない。あくまで自分の意志を試されている。
でもこうして実際に物理的な攻撃に出られると行くつもりなど全くないのにたじろいでしまう。

「ハダカ・スマタ・クチ。ねえマッサージ1時間だけ・・・」
明るさと無邪気な態度とは裏腹な、直接的な下劣な言葉に、なんだか妙な寂しさを覚える。

友達にならなりたいけど、金を払って下の世話してもらいに客として行きたくはない。
友達になれれば中国語を教えてほしいな。外国人の友達ができれば楽しいだろうな。
そんなささやかな僕の願いも、彼女の現実主義にいとも簡単にふきとばされる。
彼女らにとっては金を払って店に来てくれる人がいいひとなのであって、
友達になりたいなんていい迷惑に過ぎないのだろう。

「名前は?」
「キョウ」

都会で出会った二人の距離は、これ以上縮まることはない。
互いの欲望が虚しくすれ違う、都会の街角。

by kasakoblog | 2001-12-21 20:57

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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