「別冊宝島Jポップ批評桜井和寿イノセントワールド大全」批評2
2002年 03月 14日
ダーリンに対して「君は誰」(誰をダーリと発音)、ノータリン、悩んだり、わだかまり、夢物語と、
立て続けに韻を踏んでいることに関して、解せないと評しているが、
これは桜井君の良さをまったくわかっていない、素人論評だ。
桜井君の魅力は、これだけメガヒットを連発した超人気バンドボーカルにもかかわらず、
消費者(聞き手)に迎合しないことと、一般的ヒット曲へのアンチテーゼを含みつつ、
「かっこいい」というイメージに対する裏切りを常に意識し、
それでいて素晴らしい曲を作り上げることなのだ。
音楽論評的には、この本の指摘のように、無理な押韻は必要ない。
しかしこれがなかったらミスチル桜井はただの現代マスコミに踊らされた、
一時期だけ人気のある、どこにでもいるミュージシャンに過ぎなくなってしまう。
これだけの強引な押韻にこだわりながら、
この「名もなき詩」は、多分ミスチルの中の曲では間違いなくナンバーワンのできの曲である。
トータルでみていい曲を作っていながら、これだけ強引な押韻を折り交ぜる、
その桜井君の既成概念、既成社会に対するアンチテーゼをよみとれず、
「強引な押韻は異議あり」とこの曲を論評するのは全くもっておかしい。
特にこの押韻に含まれる「ノータリン」という歌詞など、従来の人気ボーカリストの口にする言葉ではない。
事実、名もなき詩を主題歌にしたドラマ「ピュア」では、「ノータリン」を別の言葉に変えていたという。
「ロックよりポップの方がタフだと思う」
ポップの中に潜む桜井君のロック的精神。
この強引な押韻やノータリンという言葉があるからこそ、
彼が他のどこにでもいる売れっ子ミュージシャンとはケタ違いの、
異質な存在にしている所以ではないだろうか。