ニオイ
2002年 03月 05日
インド・ヒンズー教の最大の聖地ベナレスの映像が映し出された途端、
僕はそこにいた時の「匂い」を思い起こした。
テレビでどんなに世界の果てを映し出そうと、
景色を見ることはでき、音を聞くことはできるが、匂いを嗅ぐことはできない。
しかし不思議なことに、行った場所の映像を見せられて、まず思い出すのが、
テレビで映し出されることができない匂いなのだ。
「匂い」といっても強烈なものではない。
とりたてて特徴的な匂いでもない。
にもかかわらず、その土地土地には独特の匂いがあって、
その地にいる時は意外と気づかないのだけれど、
自分の記憶の中には意外と鮮明に残っているものなのだ。
今から考えてみれば、よくあんな旅をしたなと思う。
インドのベナレスに着いた時には、日本を出て3ヶ月が過ぎていた。
あの景色とあの騒音と、そしてあの匂いの中で、
僕はそこにいたということが不思議でならないのだが、
間違いなくそれが事実であったこともよく覚えている。
匂いが土地の記憶と結びついている。