直販しないから客がわからない
2011年 02月 09日
例えば出版社と読者。
直接結びついていない。
間に書店が入っている。
書店はどんな人がこの本を買っているかはわかるが、
出版社にはわからない。
例えばカメラ。
カメラメーカーが客に直接販売することはなく、
家電量販店を通して販売している。
例えば音楽。
ミスチルがリスナーに直接曲を売ることはなく、
間に事務所が入り、レコード会社が入り、
CDショップが入って売られている。
このように生産者と消費者の間に流通業者が入る場合、
生産者にとっても消費者にとって便利な点がある反面、
困った問題点が起きる可能性がある。
それは生産者が消費者と直接接しないために、
消費者のニーズに合った商品を提供できない可能性があること。
もう1つは生産者が意図した消費者の方に販売されず、
ミスマッチな客に売られてしまう可能性があるということだ。
第一の問題。
生産者が消費者のニーズがわからない。
出版なんかはまさにこれに近いかもしれない。
出版社は直接読者の顔を見ることはなく、
出版物の反応は書店を通して聞く。
「こんな本は20代には売れない」
「こんな内容なら30代女性に売れる。
こうして書店の声から読者のニーズを想像し、
新たな本や雑誌を作ったりする。
間に入っている書店が、
出版社に読者のニーズをきちんと吸い上げ、
出版社に伝えていれば、
ミスマッチは起こらないだろう。
しかし所詮はまた聞き。
直接、自社の出版物をどんな人が買っているのかは、
わからないわけである。
だから時としてミスマッチな本を、
大量に市場に供給し、売れ残りの本をいっぱい作ってしまう。
第二の問題。
生産者が意図した消費者の方に販売されない。
例えば投資信託。
投資信託は、投資信託を作っている運用会社が販売することなく、
証券会社や銀行=販売会社を通して販売する。
運用会社としてはこの投資信託は、
若い年代ではなく60代以降の方で、
そこそこお金を持っている人に合う商品だと思って、
販売会社に商品を卸す。
しかし販売会社は手数料稼ぎのために、
誰彼かまわなく売りまくる。
結果、商品とは合わない投資家に販売することになり、
あとから問題になったりする。
間に流通業者が入るメリットは、
客がいちいち各メーカーの店に行って、
商品比べをすることなく、
一同にいろんな会社の商品が集まっていて、
その中から自分に合ったものを紹介してくれる機能だ。
例えば、カメラを買いたいと思った場合、
消費者がカメラを作っている何社ものサイトを見て、
何十ものカメラの中から自分に合った商品を探すのは大変だ。
でも家電量販店に行けば、あらゆる商品が一同に集まり、
比較検討がしやすく、かつ店員がアドバイスしてくれる。
だから流通業者が入る意味がある。
でもどうだろう。
流通業者がそのような役割を果たしていない商品もある。
また最近ではネットのおかげで、
消費者が自分自身で情報収集して、
比較検討がしやすくなった面もある。
生産者にとっても今まで販売することは、
かなり手間のかかる作業だったが、
ネットの登場で直販が今までより容易になった。
直販になれば作り手が買い手の顔が見える。
買い手も作り手の顔が見える。
間に紹介者が入らない。
作り手は買い手の属性を知ることができる。
性別や年代、職業などがわかれば、
次回の新商品の際には、
こんな機能を加えようとか、
自ら判断できる。
そのおかげで企業と客のミスマッチが少なくなり、
お互いにとっていい関係になれるチャンスがある。
商品やサービスによっては、
間に入る媒介者が必要なものもたくさんあるだろう。
しかしネットによる直販が今までよりしやすくなったのだから、
消費者に直販する企業がもっと増えていいはずだ。
直販する企業が増えれば、
企業が客に合わない商品を作る可能性は低くなるし、
その商品が合わない客に売りつけることも少なくなるのではないか。
日経新聞が電子版をはじめて、
最も大きかったのは顧客情報を集められたことだという。
なぜなら今まで新聞は、街の販売代理店が扱っていて、
新聞社には顧客情報がなかったからだ。
だから本当のところ、
どんな読者が読んでいるのか、
正確にはよくわからかなったのだ。
しかし電子版販売を機に読者とダイレクトにつながることができた。
これは企業にとって革命的な出来事だろう。
今後は直販企業が増えるかもしれない。
直販によって企業も顧客もお互いに距離を縮め、
直接、情報交換ができれば、ミスマッチが少なく、
今まで以上に必要なものを届けられるようになるのだから。