小さい頃から「和」ものは嫌いだった。寿司・刺身・天ぷら・そば・漬物・魚など、
ようはさっぱりしているので、物足りなさを感じてしまうのだろう。
そりよりなにより、肉は大好き。
ステーキ・焼肉・しゃぶしゃぶ・すき焼き・しょうが焼きなど、とにかく肉だった。
また「かっこよさ」への憧れもあったのか、和食より洋食がはるかに好きだった。
朝はごはんよりパン。 箸で食べるよりナイフとフォークを使うような料理が好きだった。
さらに7年間の一人暮らし生活で、食の偏りは加速化する。
松屋・マックのオンパレード。
マックでアルバイトしていたこともあり、その傾向は著しかった。
たまに食べるものといえば、ラーメンかパスタ。
ぎとぎとこってりしたものばかりを好んで食べていたように思う。
ただ、この1年ぐらいだろうか。
自分でも驚くべきほどに食の好みが変わりつつある。
今まで年に1度食べるか食べないかの、そばや天ぷらを好き好んで食べるようになったのである。
しかし天ぷらそばを安く食べようと思っても、チェーン店でもさすがに値段が高い。
天丼チェーン店や安いそば屋があっても、天ぷらそばとなると手間がかかるせいか、
まず1000円はしてしまう。
ところが、つい最近、安い天ぷらそばを発見した。
その名も「てん天」。チェーン店であるらしいが、今まで見たことはない。
鶴見にあって、店の前に掲げられたメニューには、天ぷらそばがなんと720円だという。
まあ、まずいか量が少ないかのどちらかだろうと思いつつも、
どうしても天ぷらとそばが食べたくって、失敗してもいいからと入ってみた。
たいした期待をしていなかったが、これがなかなかいけるのである。
そばはちゃんとしたそば屋から比べたらたいした味ではないが、まあなかなかいける。
ちょっと量が少ないのが難点か。
ところが驚いたのは天ぷらが多いこと。「多い」のは量だけでなく種類が多いのでありがたい。
えび・ピーマン・ちくわ・きす・のり・かぼちゃと6種類もある。
これをあたたかい天つゆに浸してそばと一緒に食べると最高なんだな。
720円でこれだけのものが出せるなんてたいしたものだ。
あまり聞かないチェーン店だけに、つぶれないよう、今後に期待したいな。
思えば、天ぷらとそばに目覚めたきっかけは、
1年前に長野に日帰りで藤原新也の写真展を見に行った時のことだった。
雪の降る中、やっとたどり着いた店に入ったそば屋のそばのうまかったこと。
ささやかなきっかけで、これまで嫌いだったものを食べるようになるのだから不思議だな。
でもきっと、多くの人も食わず嫌いか、はじめにそのものを食べた時の印象が、
あまりにも悪かったからその後食べてこなかっただけで、
きっとうまい店に当たれば開眼することだろう。
先入観を捨て、新しいものにチャレンジする。
これはなかなか難しいことだけどな。