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希望の国のエクソダス

いやあ、実におもしろい本に出会った。
入院中、山崎豊子や辻仁成、 宮本輝と、書評ランキングの偏差値65~69の本は何冊も読んだが、
久しぶりに最高ランクの70以上の評価を下せる作品に出会った。
村上龍の「希望の国のエクソダス」である。

僕はあまり村上龍は好きではないし、なんとなく読むのも抵抗感があるのだが、
この作品はめちゃめちゃおもしろいですよ。
村上龍を見直した。こんな小説が書けるんじゃないか。
久々の超おもしろかった、大ヒット作品だったな。

何がおもしろいか。
今の日本をリアルに描いた近未来シミュレーションなのだ。
いつまでたっても腐敗だらけの日本に、中学生の不登校から、
中学生がインターネットを介してネットワークを作り上げ、それを利用してネットビジネスを展開する。
彼らの計画はあまりに壮大である。それは日本からの独立国家の建設。
それも突拍子もないストーリーではなく、
きわめてありえそうなリアルな筋書きに、驚きを禁じえない。

ネットビジネスによる豊富な資金と、全国の中学生ネットワークを作り、
まず自分たちで自分たちが勉強する学校を作る。
そこから優秀な人材を育て、各事業をはじめ、北海道に土地を買い、
そこに独自通貨を発行させる。
通貨を独自に発行することで、それは一つの独立国たりえる。

それを全国各地に広げていき、今の日本の諸問題に対応した社会をそこに作り上げていく。
腐敗しきった日本はぶっつぶれるのは必然で、
日本国内内部から、既成の選挙から政治家を出したりとか、官僚や政治家を武力で倒すわけでもなく、
自分のビジネスとネットワークを武器に、日本内部に独立国家を次々と作り上げる。

それはまさしく今の日本であっておかしくない、
超現実味を帯びた未来シミュレーションだ。

この本を読んでいる時、住基ネットの問題が出た。
もしかしたら住基ネットからの離脱を国民の多くが表明し、
独自の路線を各自治体で歩み始めると、この本と基本的には同じ方向性になる。
つまり住基ネットを脱退した自治体が一つの独立国家となり、
日本から離脱する自治体が増え、
その地域に応じた税制なり法案なりを成立させ、
腐敗しきった日本国と切り離して社会の改革を行っていく。

この本はすごい。夢物語ではない。
日本が日本内部から崩れ去っていくプロローグは、
住基ネットからはじまっているのではないかと思うと、わくわくしてくる。
もしかしたら住基ネットというオオバカ政策によって、
日本の改革が大きく進む転機になるやもしれぬ。

そう考えると、日本にいることが希望を捨てたものではないことにはなるのだが。

by kasakoblog | 2002-08-09 23:12 | 書評・映画評

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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