文句なく素晴らしい傑作!!!
最近流行りの、ただ泣かせるだけの、
安直なストーリーなんかじゃなく、
日常にひそむ様々な問題を深く考えさせられる、
現代文学の最高傑作といっていい作品。
ぜひ読んでほしい、おすすめの一作。
おもしろいのでストーリー紹介は一切しない、
抽象的な書評ですのであしからず。
冷徹なまでに徹底したリアリズムに基づいて書かれているのが、
何より好感が持てる。
本や映画にありがちな、絵空事的理想な話なんて、
そういう展開になりそうながら、
まざまざと現実社会の壁を見せつけられる。
しかもその壁をつくっているのは、
特定の権力者とかそういうことではなく、
私たち一人一人であることにまた愕然とさせられる。
でもそんな絶望的な世の中にも、
数少ない希望もあったりして、
そうした光を頼りに紆余曲折する主人公の苦悩と、
取り巻く周囲の人たち。
そして、ラストがほんとやばい!
まさかこんなことになるとは・・・
あり得ない奇想天外な結末でもなく、
かといって予想しうる結末でもない、
なるほどそういうことだったのかと、
深く納得させられる実に示唆的なエピローグに、
私の目に自然と涙が浮かんできた。
映画「涙そうそう」みたいに、
そりゃそういうストーリーにすりゃ誰だって泣くだろうっていう、
泣かせて観客のストレスを発散させるような安直なもんじゃなく、
ほんと自然にね、涙が出てくる。
ほんとすごい、この作品。
東野圭吾をはじめて読んだ。
イメージ的には、
今受けする流行りの軽薄なストーリーを、
量産する作家だと思い込んでいたので避けてきたけど、
文学とか社会を深く追求した筆致に、
同じ物書きとして脱帽せざるを得ない。
それほどまでにこの作品、すごい。
ほんとよく描かれている。
ある意味ではミスチルの「彩り」に通ずる何かがある。
社会をよくしていくこと、
社会を悪くしていかないことって、
やっぱり1つ1つの、一人一人の、つながりなんだなと。
ちなみに「解説」も素晴らしい。
小説の解説ほどつまらなく無駄なものはないと思っているんだけど、
ほとんどネタバレせず、
かつ単なるストーリー紹介でもなく、
単純に自身の感想や作家との思い出とかでもなく、
この作品を考える上での1つの広がりをちりばめているのが、
実に素晴らしいなと思った。
ほんとおもしろい。
ぜひ読んでみてください。
そしてこの本をすすめてくれた方、ありがとう。
・手紙