日本全体が“被災地”という感覚

e0171573_7354825.jpg

「あの震災のせいで商売にならないですよ。
外国人団体旅行客は全部キャンセルですよ」

週末に訪れた長野の湯田中温泉で泊まった、
温泉旅館のおやじさんが嘆いていた。

「ここは地震の被害があるわけでもないし、
中部電力だから計画停電もないのにもかかわらずですよ」

私は今年1月にも湯田中温泉を訪れている。
そこからバスで15分、さらにそこから山道を歩いて30分行くと、
サルが温泉で入ることで有名な地獄谷温泉があるのだが、
外国人観光客の多さに驚いた。

山道の入り口には温泉宿のマイクロバスや、
大型バスが停まっており、
何十人もの外国人観光客が温泉サルを見るために、
ここを訪れていた。
この周辺の温泉宿は外国人観光客で潤っていたのだ。

しかし地震。いや地震だけならそれほどキャンセルは少なかっただろう。
すべての元凶は原発事故だ。

「イギリスから予約のあったお客さんからメールで、
『日本は原発事故で危ないから行かない』とキャンセルの連絡があった。
『それは懸命な判断ですね』としか言いようがないですよ。
海外の人にしてみたら、福島も長野も東京も、
その位置関係を正確にわかっている人なんかいないんだし、
そうでなくても海外の人から見たら、
そりゃ、怖くて行けないと思うのが当然ですよね」

地震の直接的な被害がひどかった「被災地」でなくても、
海外から見たら日本全体が「原発の被災地」だ。
「そんなの風評被害だ。安全だ」
と言ったところで何の説得力にもならない。

それは逆の立場になって考えればわかるだろう。
例えば中国の北京で大きな事故が起きたら、
北京から何百キロも離れた上海だろうが広州だろうが、
日本人なら「中国は危ない」と考え、
旅行や出張をキャンセルするのではないか。

海外の「風評被害」は、
相手国への「無知」から来ているから仕方がないとしても、
そこに輪をかけるように、日本人が自粛したらどうなるか?
日本全土で経済被害続出だ。

「地震があったのに楽しんでいる場合じゃない」
「被災者のことを思ったら旅行なんかしている場合じゃない」

地震後に旅行、宴会、結婚式などをキャンセルした人は多数いる。
ただでさえ外国人が多数キャンセルしたのに、
日本人までキャンセルしたらどうなるか?

「被災地」でないところの売上が減り、
税収も減り、被災地支援に回すお金も減り、
それに派生したさまざまな商品も売れなくなり、
日本全体として雇用が減って、復興にさらにマイナスになる。
いわば日本人の意味不明な自粛ムードが、
「被災地」を苦しめる「加害者」になっているのだ。

外国人のキャンセルを止めるのには限界がある。
だからこそ日本人が意味不明な自粛をしないことが大切だ。
にもかかわらず「桜を見て一献やってる場合じゃない」という、
「被災地」をないがしろにした発言を堂々とした石原都知事が、
らくらく当選してしまうという情けない民意こそが、
意味不明な自粛をし、日本全体を苦しめている。
言っておくが、その行為は「被災地の加害者」となっているだけでなく、
いずれ自分の仕事や収入にも被害をもたらす自滅行為だ。

e0171573_7364947.jpg

e0171573_737324.jpg
ただ幸いなことに、日曜日に訪れた地獄谷温泉には、
外国人観光客はめっきりいなかったが、日本人観光客はそこそこいた。
若いカップルで訪れる人もいた。

別に過度な消費や贅沢を推奨するわけではないし、
なんでもかんでも売上が上がることがいいことだとは思わない。
ただ意味不明な自粛行為は、
日本全体を自滅させる加害行為だということを、
もっと多くの人が認識した方がいい。

長野の温泉宿にまでこんなにも影響があれば、
日本全体のキャンセル被害といったら相当なものだろう。

「ひとつになろう」とか「がんばろう」なんて、
気休めみたいなこと言ってる暇があったら、
金を稼いで、金を使って、
雇用を生み、税収を増やし、それを被災地に回す。

避難してきた被災地の人だって、
仕事がなければこの先、食っていけないのに、
自粛しているせいで「被災地」以外の場所でも仕事がなかったら、
この先、本当に困ってしまう。

“道徳的”に考えるより、
実害を補うための合理的な行動こそ、
日本復興の第一歩だ。

原発事故の“風評被害”がある限り、
日本全体が被災地だ。
だから外国人の収入はあてにならない。
こんな時だからこそ、少なくとも日本人は自粛しちゃいけないんだと思う。

by kasakoblog | 2011-04-12 07:37 | 金融・経済・投資

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


by kasakoblog