被災地イメージと現実~石巻日帰りレポート
2011年 04月 20日

東日本大震災の被害がひどいと言われる、
宮城県の石巻市に日帰りで電車とバスで行ってきた。
震災から「もう」1ヵ月なのか、「まだ」1ヵ月なのか。
とにかく「現場」を自分のこの目で見たいとずっと思っていた。
行ってみるとテレビのイメージとはまた違った「現実」が見えてきた。
<驚いたこと>
・石巻での被害格差に驚き

上記の写真が私たちが何度となくテレビや雑誌で見せられ、
「洗脳」されてきた「被災地」イメージであろう。
石巻もその1つ。
海岸沿いはまさに廃墟。
津波によって町が完全に壊滅状態になっており、
しかも1ヵ月たった今もなおこのような状態だ。
ところが。
この甚大な被害地域から歩いて数分行った高台にある家は、
見た目はまったくといっていいほど、被害を受けていない。
高いところにあったから、
津波被害を受けていないのはわかるが、
でも大地震だったし、すぐそばがあのような惨状なのだから、
ここもさぞひどいのかと思いきや、
倒壊している家屋は見当たらないし、
道路が変形しているとか電信柱が傾いているとかほとんどない。

えっ、あのすさまじい甚大な被害地域のすぐそばの光景?!
こういう場所はテレビは一切映さない。
ひたすら甚大な被害地域ばかりの映像を流すから、
石巻すべてが、宮城すべてが、
下手すると東北すべてがあのような凄惨な光景になっているのかと、
錯覚する視聴者も多いのではないか。
(海外ではより勘違いする可能性大)
地震被害は「まだら模様」が特徴だ。
道路一本隔てただけで、
こっちはすさまじい被害なのに、
あっちはぜんぜん大丈夫、
といったようなことが起こるのが当たり前。
メディアは甚大被害映像や避難所ばかり移さず、
普通に大丈夫だったエリアもあわせて報道すべきではないか。
あのすさまじい津波被害のすぐそばにある高台のエリアは、
「甚大な被害な石巻」というくくりをされるが、
被害状況という意味では千葉の浦安の方がひどい。
でもテレビの報道の仕方をすれば、
浦安なんかより東北すべてはひどいと思うのではないか。
ただだからといって石巻がひどくなかったわけではない。
高台にある家は無事のようだったが、
海から遠く離れた場所でも津波が押し寄せたせいか、
床上浸水し、商店や家など1階のものすべてが台無しになり、
そのゴミが回収されることなく道に山のように積まれている。

単に海が近い場所だけが被害がひどいわけでもなく、
相当広範囲に甚大な被害があることは間違いない。
・スーパーもコンビニも営業
こんなすさまじい被害なのだから、
食糧は避難所ぐらいにしかないのかと思い、
食糧を買い込んで現地に行ったが、
スーパーもコンビニも普通に営業しているところがあり、
特にあの凄惨な海岸沿いの廃墟から程近い、
セブンイレブンでは被害がなかったのか、
この1カ月で復旧させたのかは定かではないが、
おにぎりやジュースが品不足ということもなく普通に売られていた。

これにもちょっと驚いた。
無論、床上浸水のひどかった店はまだ営業はしていないが。
・仙台駅前の方が東京より「被害」が少ない?
テレビが報道するのは海沿いの甚大被害地域ばかりで、
あの地震が起きた時、私が真っ先に気になったのは、
海沿いの街はともかく、仙台駅前とかも廃墟になってしまったのか?
ということだった。
相当な被害があったとは思うし、
つい先ごろまで電気や水などのライフラインが復旧せず、
苦労したであろうし、
仙台市内でも海沿いの地域は、
壊滅的な被害があったようだが、
1カ月たった今の仙台駅前は、
地震などまるでなかったかのような、
普通の暮らしに戻っている光景に見えたことが驚きだった。
(この1ヵ月での復旧の成果かもしれないが)

「普通」にみな通勤・通学しているし、
すべてではないが、駅前では、
ホテルも飲食店もコンビニもみやげやも、
本屋もデパートも営業している。
しかも東京と違って節電はあまり関係ないせいか、
夕方になると今の東京では信じられないが、
ビルの看板や店の看板はネオンつけ放題、
駅の案内板もすべて灯りがついており、
下りエスカレーターだって動いている!
変な話だけど、甚大な被害エリアに指定されている、
宮城県(仙台)より、東京の方が節電して暗くなっている分、
見た目には「被害」がひどい「被災地」のように見えるのではないか。
無論、仙台の海沿いは津波により甚大な被害を受け、
また市内でもライフラインがストップし、
余震が起きているから、
東京の比ではない「被災地」ではあると思うが、
震災から1ヵ月たった今、
仙台のほうが東京より明るいという事実に、
私は戸惑った。
今後の影響考えたら、
特に夏なんかは東京の方がひどい「被害」なんじゃないかと・・・。
私のなかでは勝手に、
宮城県=被災地=仙台もまだまだひどい、
と思い込んでいたから、
東京と変わらぬ光景が広がっていたことに驚いた。
店もほとんどやってないんじゃないかと思っていたし。
・・・・・
たった1日、しかも1ヵ月後に数時間いただけの私の感想なので、
現地にいる人にとっては違和感のある感想かもしれないが、
「被災地」をテレビだけで見ている人にとっては、
意外とえっと思うことが多いのではないか。
しかも私はこの石巻まで、
今日、マイカーで行ったわけでもなく、
JRと公共バスを乗り継いで、
日帰りできているという事実もある意味、驚きではないか。
えっ、そんな甚大な津波被害エリアまで、
公共交通機関を使って、東京から日帰りできちゃうの?と。
もちろんそれは「がんばろう日本」という、
ださいフレーズではなく、
「つながろう日本」という素晴らしいメッセージ掲げるJR東日本のおかげ。
東京から福島まで新幹線で2時間。
福島から仙台まで在来線で1時間。
(仙台までの新幹線はもうすぐ復活するとのこと)
仙台から石巻までバスで2時間。
(仙台から石巻までの仙石線の復旧のめどはたっていない)
これで石巻まで行けてしまうのだ。
逆にいえば、あの甚大な被害があった人が、
今、東京に来ようと思えば、
5時間あれば簡単に来れてしまうということでもある。
それも知らない人にとっては意外な驚きではないか。
今回は前日に「日帰りで石巻まで行けるかも」と、
突然、思いついて、会社を休んで行ってきた。
もうすぐ仙台まで新幹線が復旧すれば、
もっと短い時間で行けるようにもなる。
被災地にとっては不謹慎で迷惑かもしれないけれど、
日本を襲った恐ろしいまでの自然災害を、
テレビの切り取って編集された映像ではなく、
自分の足を使って自分のこの目で、
現地を見てみるというのは大切なことかもしれない。
※写真は近日中にアップします。
まだまだ被災地への支援が長期に必要なことが、
写真からわかると思います。