紙がない~日本製紙石巻工場写真
2011年 04月 21日
震災により社会全体にさまざまな影響が出ているが、
私が真っ先に影響を受けたのは紙問題である。
東北地方に製紙工場が多く、
今回の地震で被災したため紙の確保が難しい。
ちょうど地震が起きた時に、最終ゲラを確認していた、
4月に発売した拙著写真集「ヨーロッパの邸宅・宮殿・教会」は、
すでに紙の手配を済ませていたため、
影響はなく無事に出版できたが、
多くの出版社が紙の確保に苦労し、
商品である書籍が販売しずらく悲鳴を上げていた。
私は紙物の制作物の仕事が多いので、
いくつか実際に影響があった。
東北地方の紙工場といえば、日本製紙の石巻工場だ。
2011年3月の大地震で甚大な被害を受けた地域の1つが石巻。
奇しくも1年前、2010年1月22日、
私は工場写真撮影のため、
日本製紙石巻工場写真を撮影していた。
http://www.kasako.com/1001isinomakifoto1.html
震災から1カ月が過ぎた今、
日本製紙の石巻工場はどうなっているのか、
2011年4月20日に現地に赴いたが、
「1カ月でまだこの状態か・・・」
とその深刻な状況を目の当たりにした。
工場付近の電信柱はあちこち倒れたまま。
工場付近には車なども含め、
津波でだめになってしまった大量のゴミが散乱。
工場内の貨物列車の引込み線は、
いまだコンテナ車などが倒れたまま。
1カ月でまだこの状態か・・・。
というかそもそもこの場所を復旧させることに、
意味があるのだろうかという根本的な問題がある。
また地震が起き、また津波が起きれば、
いくら復旧させたところでまた同じことの繰り返しになる。
「想定外」の大津波や大地震が平然と襲い、
しかも今回の地震で地盤沈下が起き、
今まで以上に津波被害を受けやすくなっている状況で、
ここで工場を再開しても大丈夫なのかと。
地図を見ていただければわかるが、
今回、津波によって周囲が完全な廃墟となってしまった、
黄土色で囲んだエリアのすぐ隣に日本製紙の工場がある。
構内入口にある「安全は何ものにも優先する」
と書かれた看板自体が斜めに倒れたまま、
建物内部も崩壊しているような状況で、
もし本当に「安全第一」を掲げるなら、
コストも手間もかかるが、
工場の場所を変えざるを得ないのではないかとすら思ってしまう。
地震被害だけなら念入りな耐震工事をして復旧すれば、
復興になるかもしれないが、
津波被害の再発リスクという観点から考えると、
日本製紙の工場に限った話ではなく、
海に近いエリアは何も建てられないんじゃないかと。
復興とは元に戻すことではなく、
今後、甚大な被害が出ないように工夫することだと思う。
そのためにお金がかかるなら、
義援金や復興国債や復興増税で賄えばよい。
それが長い目で見て日本社会にとってプラスになるはず。
安直に目先の利益を追い求めるあまり、
「単に元に戻す」という選択肢は、
避けたほうが懸命なように思う。
震災後の日本製紙石巻工場写真
http://www.kasako.com/1104ishi2.html
被災地レポート
http://www.kasako.com/110311top.html
被災地イメージと現実~石巻日帰りレポート(2011/4/20)
http://kasakoblog.exblog.jp/14642108/