「被災地」旅行は不謹慎か支援か
2011年 04月 23日
遠慮したり自粛することが美徳だという風潮がある。
地震が起きて被災地が苦しんでいるのに、
自分たちだけが楽しむのは不謹慎だという考えから、
実害があった被災地への旅行だけでなく、
全国各所で旅行がキャンセルされ、
地震被害のない場所まで自粛という「風評被害」で、
経営に苦しみ、従業員を解雇したりする動きも出てきている。
今年のGW(ゴールデンウィーク)はカレンダーの並びがよく、
4/29~5/1までが3連休、5/3~5/5までが3連休、
5/2を休めば7連休、5/6を休めば4連休、
5/2、5/6両方休めば10連休というまさにゴールデンな週なのだが、
震災の不謹慎・自粛ムードで旅行業界は大打撃。
JTBの発表によると、国内旅行人数は前年比27.8%減、
約600万人の減少だという。
旅行とは水物商売で、何か具体的な危険があるのなら、
行くのをやめるのは当然の判断だと思う。
テロ、戦争、疫病、災害などがそうだろう。
また3月にあったように計画停電のせいで、
電車本数が減ってしまった箱根が大打撃を受けたが、
交通機関がマヒしていたら行きにくくなるので、
キャンセルというのはやむを得ない判断だと思う。
しかし今、震災から1ヶ月以上が過ぎ、
いまだ壊滅的な打撃のままの地域がある一方、
徐々に復旧している地域もある。
4月20日に仙台駅前に行って驚いたのは、
見た目はもう普通の暮らしに戻っていたこと。
市バスもタクシーもエスカレーターも動いている。
デパートも飲食店もみやげ店もホテルもやっている。
私はてっきり仙台ではホテルはまだ営業再開しておらず、
泊まれるところはないんじゃないかとか、
飲食店やコンビニはやっておらず、
食べ物は東京で全部仕入れていかないと、
ダメじゃないかとか思ったらそうではなかった。
だってそんなこと、わざわざどこも報道しないから。
さらに4月25日からは仙台までの新幹線が再開し、
1日44往復、最短2時間7分で東京ー仙台間を結ぶ。
4月29日にはプロ野球もJリーグも、
仙台でのホーム開催が決定している。
しかし国民の多くは、
テレビニュースのイメージの世界で判断しているから、
甚大な被害地域や避難所のつつましい生活ばかり映されるから、
「被災地」=「東北地方」に旅行や出張なんかで、
行ってはいけないし、そもそもライフラインが復旧していない、
と思い込んでいる人も多いのではないか。
そうした思い込みがより「被災地」を苦しめている。
宮城県内の温泉地、鳴子温泉ではライフラインが復旧し、
入浴、滞在は通常通り楽しめる環境になったが、
「被災地=大変=行くことなんかできない」
というイメージからか、キャンセル続出で、
ある大型観光ホテルは4月末までに、
従業員の3分の1を解雇することを決めたという。
もちろん余震が恐いから東北方面に行かないというのは、
ある意味では合理的な判断かもしれないが、
見方を変えれば「余震」で済む東北地方より、
誘発してさらなる大地震が起きる可能性がある、
他の地域にいる方がはるかに「危険」ともいえるかもしれない。
そう思うと、いつまでも意味不明な「被災地配慮」という名のもと、
被災地に遠慮してキャンセルしてしまう行為は、
配慮どころから被災地迷惑行為になっている可能性もある。
実際に、自粛、不謹慎、まだ甚大な被害で大変といったイメージから、
合理的ではない判断がより「被災地」を苦しめる例は数え切れない。
「花見で酒なんか飲んでいる場合じゃない」
ととんでもない発言をした石原都知事に対して、
岩手県の酒蔵が「花見を自粛して東北地方の酒を飲んでくれないと、
さらに経済的被害で被災地は苦しみ復興ができなくなる」
と嘆いたのはその最たる例だろう。
もはや日本全体が大地震で壊滅的、
放射能汚染で危険というイメージから、
外国人観光客にいくら「風評被害だから来てください」
といってもまあ無理だろう。
逆の立場になって考えればわかるが、
アメリカで原発事故が起きたら、
その付近でなくてもアメリカへの旅行や出張は延期するだろう。
なぜなら情報が少なく漠然と不安で危険だと思うからだ。
しかし日本人が日本にいる限り、
ネットなどで調べれば現地の情報はわかる。
甚大な被害の被災地と、
すでに復旧している被災地とがあることはわかるだろう。
別に無理して行けというわけではないが、
GWに「被災地」に行くことの方が、
中抜きされて全額支払われるかもわからない、
義援金に金を使うより、
自分が楽しめて、かつ現地の人たちの雇用を生む、
旅行に行って金を使うことの方が、
むしろ経済的「支援」効果は大きいのではないか。
いやでも被災したばかりの地域で旅行を楽しむなんて、
不謹慎ではないかとか、
3月にも問題になったが被災したエリアに大勢の見物客が来て、
被災者が迷惑するというニュースもあったが、
だからといっていつまでも「被災地」や「被災者」を、
「病人」扱いして、腫れ物にさわるかのように、
「治療」は「医者」にまかせて、
我々一般人は「面会」に行くべきじゃないと思っていると、
通常の経済活動が滞り、その分、収入が減って、
宮城県内の温泉地のように、
1/3の従業員を解雇しなくてはならないとか、
かえって悪影響を及ぼしてしまうのではないか。
4月29日には東北新幹線が全線(東京-新青森)再開する。
新青森は2010年12月に開業したばかりで、
延伸開通による特需で青森なんかは、
かなり観光収入を期待していただろうが、
震災により電車が寸断されてしまったことで、
地震の実害被害が少なくても大きな経済的な打撃を受けただろう。
東北地方に限った話ではないが、
日本全国の観光地が震災の影響で悲鳴を上げている。
GWに旅行する予定だったが、
今は不謹慎だからやめようかとか思っている人がいるなら、
今こそキャンセルせずに、
「被災地」でなくてもどこかに旅行して、
お金を使って楽しむという行為が、
日本の復興に役立つ活動になると捉え直してみてはどうだろうか。
義援金を払っても自分は楽しめないが、
旅行をすれば自分も楽しめて、
相手にもお金や雇用を生む。
そうした「支援」も必要なのではないかと思う。
例年と違って、今からでもGWの予約は十分間に合うと思います。
※もちろん旅行を楽しむ基本は、
「行きたいところに行く」ことなので、
「支援」という観点だけでなく、
旅行するなら自分が行きたいところを選ぶというのが基本ですが。
※GWに旅行ではなく、
被災地にボランティアとして行くのも、
もちろんいいと思います。
キャンセル相次ぐ観光地からの悲痛な叫び【福島・会津若松】
http://www.j-cast.com/2011/04/22093941.html