ボランティア迷惑論・十分論はデタラメだった~被災地レポ
2011年 05月 16日
※写真:福島県いわき市久ノ浜
がれきはこれでも1/3は片付いたというが、
2ヵ月過ぎた今もなおこの状態
「被災地のために何か役に立ちたい」
「お金はないけど現地で手伝いならできる」
甚大な被害映像を見せられる度に、
こう思った人は多いのではないか。
ところがボランティアは行っても迷惑だとか、
行っても受け入れ先がないとか、
もう足りているとかいう何となくの雰囲気から、
「行っても迷惑ならやめておくか」
「もう十分、人数いるなら自分が行かなくてもいいか」
とせっかく気持ちがある人が多いのに、
それが活かされず無駄になってしまうケースが多い。
現地ではいくらでも人手が必要にもかかわらず。
土日に、福島県いわき市を取材して思ったのは、
震災から2ヵ月が過ぎた今もなお、
避難所をはじめ被災地を支えているのは、
自発的に支援活動をしている個人や組織ということだ。
はっきりいって国や県や自治体はあまりあてにならない。
ボランティアがいなければ成り立たないほど、
ボランティアに支援に依存しているといってもいい。
しかもボランティアの多くは、
ボランティアの豊富な経験者でも災害ボランティアのプロでもない。
潤沢な資金を持っている大企業などでもない。
ほとんどが普通の人たちばかりだ。
彼らはボランティア迷惑論や十分論に惑わされず、
被災地では必ず人手が必要だし、
何らかの手伝いが必要なはずだと行動し、
現地に赴き、そこで何が必要かを聞き、
自分ができる範囲で活動を行っている。
今回、知人の紹介で同行取材の機会を得た、
東京文京区のNPO法人・響きの森netさんは、
文京区の子供たちをキャンプに連れていくといった活動をしている団体。
つまり災害ボランティア団体でも何でもない。
にもかかわらず、この大震災で何かできることはないかと、
3月下旬に被災地に赴き、
福島県いわき市の避難所の1つ、
平工業高校の運営を任されることになった。
響きの森netの1人、加藤良彦さんは、
1週間に1度、東京に帰ってくるぐらいで、
ほぼこの1ヵ月半、現地にほぼずっと寝泊りして、
避難所運営を行っている。
文京区の子供キャンプを行うNPO法人の方が、
被災地の避難所運営を行っている不思議!
避難所にいる地元の自治体の人は、
福島県の人が1人、いわき市の人が1人。
避難所には代わる代わる交代交代に来るから、
誰も避難所の状況はよくわからない。
避難所に何の物資が足りないのか、
どんな物資が余っているのか、
どんなニーズがあるのかなど、
響きの森netに聞かないとよくわからない状況だ。
私はその事実にまず驚いた。
地元の自治体よりも東京のNPO法人の方が、
避難所の状況をよくわかっているという不思議。
響きの森netは今は避難所運営にとどまらず、
他のボランティアと連携しながら、
付近の避難所への物資支援など活動を広げている。
災害ボランティアの専門でも何でもない、
東京のとあるNPO法人が“たまたま”ここに来たおかげで、
避難所が運営されているという事実。
もしこうしたボランティアがいなかったら、
自治体の最低限の支援のみで、
生きてはいけても避難所の状況は悲惨だった可能性が高い。
ちなみにこの避難所には、
長崎県庁・長崎市役所の人が3人、派遣されており、
2週間交代で避難所に寝泊りして支援を行っている。
これもなんだか不思議な光景だった。
まるで地元の自治体の人のごとく、
朝から晩までなんでもやとなって、
支援活動を献身的に行っていた。
響きの森netに限らず、
避難所や被災地を支援するボランティアの方々は数多くいる。
その1人で今回取材したのが、響きの森netと連携し、
物資の提供を行っているのは小針丈幸さん。
これまで東京で、障害者支援イベントや医療事務をしていたが
今回の被災を機に、会社を辞めて災害弱者支援を行っているNPO法人、
日本ユニバーサルデザイン研究機構の活動に参加し、
故郷の復興を行うため、いわき支部を立ち上げ、
日々かけずりまわっている。
もう1人取材したのは、いわき市に住むマイミクさんの紹介で、
お会いしたいわき市在住のサクさん。
震災後、放射能パニックで混乱した状況のなかで、
(いわき市は福島原発から30~50kmと極めて近い)
震災直後、子供のために山形に避難したものの、
「現地で何が自分でできることはないか」と思い直して、
自分だけいわき市に戻り、仕事をしながらも、
生活に必要な情報を発信するmixiのコミュニティを立ち上げた。
店の営業状況、避難所の炊き出し、水道復旧状況、
医療関連情報などを自身が集めて発信するほか、
多くの投稿者も情報発信し、
立ち上げ2週間でコミュ参加者は6000人に。
混乱する震災後の貴重な情報源となった。
別にIT企業に勤めているわけでもなく、
独自の情報網を持つ記者などでもなく、
いわき市に暮らし働く一市民として、
何かできることはないかとはじめた活動だった。
その他、多くの個人や組織が、
困っているから何かしなくてはと、被災地に行き、
どんなことが手伝えるのか、
現地でヒヤリングし、支援活動を行い、
被災地を助けている。
別にプロでも専門家でもない、
多くの普通の人たちが、
ボランティアは迷惑だとか十分だなんて、
現地に行けばそんなのウソだとわかることに気づいて、
行動している結果、今の被災地が成り立っていた。
私はもう震災から2ヵ月も過ぎたのだから、
専門的・組織的なボランティアでない限り、
必要ないのではないかと思っていたが、
それはとんでもない間違いだった。
今回の震災はあまりにも被害地域が広く、
複合的要因も多いことから復旧が遅れている。
復旧ができない以上、復興なんてできるわけがない。
圧倒的にマンパワーが足りないのだ。
今も多くの地域で人手が必要とされている。
しかし現地の自治体があまり機能しておらず、
受け入れ態勢がないから、
足りているとか迷惑だといって断ってしまうが、
実際には人手や物資はいくらでも必要で、
自主的に活動している団体では募集しているところも多くある。
震災直後から活動している個人や組織の多くが、
今回、口々にしたこと、それは、
「もうそろそろ体力もお金も限界」ということだ。
「有償ボランティアでないともう支援活動を継続することは難しい。
このままでは自分がぶっ倒れてしまう。
でもまだまだやらなければならないことはたくさんあるし・・・」
と苦悩している人も結構多かった。
震災が2ヵ月過ぎた今もなお、
被災地には問題が山積みだ。
人手もお金も足りないという現実がある。
もう2ヵ月ではなく、まだ2ヵ月。
被災地周辺の交通機関や宿泊施設も復旧している今、
もし自分のできることがあったら、
ネットなどで調べてやってみるとよいと思う。
・被災地レポート
http://www.kasako.com/110311top.html
・GWにボランティアが足りているというのは“ウソ”(日経新聞)
・ボランティアは押し掛けていい(ニューズウィーク日本版)
・響きの森net
・響きの森netの活動(取材:日本ユニバ・小針さん)
・東日本大震災@いわき市生活情報