ホットドッグ屋さんではなかったホットドッグ~被災地レポ
2011年 05月 20日
「義援金だけですればいいのか?って思って、
それで避難所に炊き出しに来ることにしたんです」」
5月15日、福島県いわき市の避難所、平工業高校。
東京からホットドッグの炊き出しに来てくれた方々がいた。
ここの避難所には幸いなことに食べるものはいっぱいあるが、
さすがにホットドッグのような洒落たものはない。
私ですら「ホットドッグ食べたい!」と思ったのだから、
2カ月も避難所生活している被災者の方々にとっては、
さぞうれしかったに違いない。
それにしてもホットドッグって珍しい。
昼は、東京の小石川そばの会が、
そばの炊き出しに来てくれたが、
ホットドッグ専門店か何かなのかなと。
話を聞くと、ホットドッグ専門店でもなく、
バーのオーナーを中心にした有志の集まりだった。
「義援金以外にも何か被災地を支援したい。
そう思って、飲み屋さんのオーナーを中心に、
常連さんが集まって、毎月、炊き出しやることにしたんです」
彼らは1ヵ月に1度のペースで、避難所の炊き出しをしており、
4月は宮城の東松島市でプルコギ!をしたという。
今回はホットドッグなんと約800人分も用意し、
いわき市内の避難所を中心に配ったという。
なんかこういうのってすごくいいなと思った。
私も同じように思った。
あの甚大な被害を見て、すぐさま義援金を振り込んだけれど、
お金だけでいいんだろうかと。
彼らは別にホットドッグの専門店でもなく、飲食店でもない。
普通に仕事を持っている人たちが、
自分たちの生活や仕事に支障のない範囲で、
何かできることはないかと1ヵ月に1度の炊き出しを始めた。
そっか、有志を集めて炊き出しに行くって、
そんな支援の方法もあったのかって、
なんかはっとさせられた気がした。
「ホットドッグ持ってきてくれた方って、
ホットドッグ店の人じゃないんだよ!」
って他のボランティアの方に事の経緯を説明したら、とっても驚いていた。
そうやっていろんな人が、いろんな形での支援に来ている。
そういえば石巻に行った時には石原軍団が炊き出しに来ていて、
すごい行列で、もはや整理券ないと食べれない、
みたいな状況のようだったけど。
ただ炊き出し支援って難しいところもある。
今回も震災から2ヵ月が過ぎているにもかかわらず、
この方々は1箇所の避難所でなぜか当日になって、
予定していた時間の炊き出しは断ると言われたそうだ。
その避難所の予定表にはちゃんとホットドッグと書いてあり、
避難所の方々もホットドッグを楽しみにしていたのに、
避難所内の運営者が国やら市やら県やら支所やらボランティアやら、
ちゃんと情報共有がうまくいかない場合もあり、
それで当日断られるという事態になってしまったという。
今回、取材をしていると、
会う人会う人から必ずといっていいほど市の対応のひどさの不満を聞いた。
今回はどこに連絡ミスの原因がわからないが、
そんな状態だから、現地の方々が「またか」と思ったに違いない。
せっかくの善意が無駄になってしまうような体制は、
早く改善して欲しいと思うのだが、
現実はひどい状態だ。
だからこそ文京区のNPO法人の方が避難所状況に詳しいとか、
避難所に来ている長崎県の人の方が詳しいとか、
妙な状況になっており、彼らに依存する体制になってしまっている。
また今はもうないが、
以前は炊き出しがバッティングすることがかなりあって困ったと、
いわき市の避難所運営をしている文京区のNPO法人、
「響きの森」の方々が話をしていた。
「以前は事前連絡なしに炊き出しに来る人も多くて、
日曜日は5団体も炊き出しに来て、
みんな食べきれずに終わってしまうのに、
その後、数日は何の炊き出しもないとかいう状況がありました」
最近ではちゃんと事前に避難所に、
炊き出しボランティアの方から連絡が入り、
この日はすでに別の団体が来ているから、
できれば別の日にしてほしいとか、
今は避難所に何人いるから何人分ぐらいあるといいとか、
そういう調整を行っているので、そうした混乱は少なくなったみたいだが。
炊き出しがそんなに来るなんて贅沢だ、
なんて思う人がいるかもしれないけど、
炊き出しがないと市から支給されるのは、
ごはん、缶詰、野菜ジュースだけ、
といったところもあるらしい。
あとは送られてきた大量のカップラーメンかレトルト食品。
これではさすがにつらいだろうし、
体も心もおかしくなってしまう。
そういう意味で炊き出しが来てくれるって、
ほんとありがたいことみたい。
ただ少し残念なのは、日本人ってこうした個人的な支援活動って、
あんまりアピールしたがらない。
なんかそういうのは言うべきじゃないみたいな。
でも私はどんどんこういう活動したって、
自慢でもいいから周囲の人に言ったらいいと思う。
そしたら「私も行きたい」っていう人がいるかもしれないし、
「私も友人に声かけて行こう」って思う人がいるかもしれない。
黙って隠すことが美学なんてことより、
周囲に言いふらすことで、
支援活動の輪がどんどん広がっていけるのにって思う。
※今回の「ホットドッグ集団さん」の活動レポートは、
話をしてくださった映像制作をしている、
武井修平さんのブログに詳細にレポートがアップされています。
宮城・東松島市炊き出しレポート(映像制作をしている武井修平さんのブログ)
http://d.hatena.ne.jp/funnysketch/20110426#p1
福島・いわき市炊き出しレポート
http://d.hatena.ne.jp/funnysketch/20110517#p1