心の闇
2011年 06月 28日
東京から来た知らない人たちに、
すぐになついて好意をふりまき、
自分の味方を増やそうと、
必死になってビーズやおもちゃをくれる女の子が避難所に1人いた。
はじめは1個。
それからもう1個。
さらにもう1個・・・。
どんどん、どんどんビーズをあげていく。
自分との信頼の証を確かめたいかのように。
でもみんなに気をふりまくわりに、
特定の誰かとは仲良くならないよう、
警戒している?注意している?そんな感じもある。
他の子どもたちがみんな仲良く遊んでいるのに、
一人だけ輪に入らず、
東京から来たボランティアの大人たちばかりに、
おもちゃをあげてはまとわりついてみたりする。
何かあったのだろうか?
とても心配になる、
とても気に掛かる女の子だった。
笑顔があまりに無邪気であどけないだけに、
余計に心配になる女の子だった。
もしかしてその笑顔は、
周囲にこびをうるための笑顔で、
何かこう心の闇みたいなものがあるんじゃないかって。
写真を撮ってってせがんだ。
いっぱいいっぱい撮った。
200枚ぐらい撮った。
スライドショーにして見せたら、
「動く!」って喜んだ。
何かエネルギーがあまって、
その力を持て余してるのかなって思って、
「よし、一緒に走るか!」なんていったら、
「走らない」なんていって、
でもその辺を力を持て余し、走り回っている。
私の考え過ぎなのかもしれない。
別に単に複雑なお年頃なだけなのかもしれない。
でも彼女が明るくふるまえばふるまうほど、
何か底知れぬ闇があるんじゃないかって、
気になって仕方がなかった。
彼女の写真をプリントアウトして、
渡そうって思って再訪したけど、
見かけることはなかった。
どうしてるのかな?
また会えるかもしれないチャンスがもう1回めぐってきた。
もう1回会ったところで彼女のことは何もわからないかもしれない。
ただ彼女が存在するって証が、
写真に写し撮られている。
写真を撮るって基本的に、
その存在を肯定してあげる作業だと思っている。
そこに確かにあなたがいる。
自分自身の存在を疑っている。
自分なんかこの世にいらないんじゃないかって思っている。
自分は社会でやっかいものだと思っている。
自分は何の役に立たない人間だと思っている。
でもそうじゃないんだよって言ってあげたい。
でも言ってあげてもわからない。
だから写真を撮って肯定してあげたい。
もともとこの世に必要とされない人間なんていない。
でも自分を肯定してもらえないから、
どこかで道を踏み外し、おかしなことになってしまう。
あなたはこの世界に生きていて、
社会に必要とされる大事な存在。
そんなことを言いたくて写真を撮る。
そして見せて、写真をあげる。
自分で自分を見る機会なんてない。
しかも何十枚も。
でもね、でもね、
あなたはバーチャルな存在じゃなく、
リアルに存在している一人の人間。
そんなに無理に愛想ふりむかなくてもいいんだよ。
そんなに無理しておもちゃをあげまわらなくていいんだよ。
そんなに無理して笑顔ふりまかなくていいんだよ。
みんな、君のこと、ちゃんと見てるし、
みんな、君のこと、好きだと思ってる。
だから自分に自信がないことから、
無理に何かしなくたっていいの。
あなたはこの世に存在し、
自分の人生を幸せに楽しく生きればいい。
そんなメッセージをあなたに伝えたい。
だからあなたの写真を撮りました。
あなたの存在を肯定してあげたかったから。