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仕切る人次第で避難所の待遇が激変する

「この人、ほとんど仕切らないし、
頼りない感じで、大丈夫かな?ってはじめは思いました。
でもこの緩さ加減がよかったんだと、後でわかりました!」

避難所を誰が仕切るかでその雰囲気が180度変わる。
そんな話を東京の女性ボランティアから聞いた。

福島県いわき市の平工業高校体育館の避難所を、
3月末から仕切っていたのは、
東京文京区のNPO法人響きの森の加藤良彦さん(60歳)。
いわき市の災害対策本部に行き、ボランティアをしたい旨、
伝えると、避難所をいくつか紹介された。
そのなかで「平工(へいこう)の避難所は雰囲気が悪い」と言われたというが、
響きの森の加藤さんが入って以来、
平工の避難所の雰囲気も評判も良くなり、
避難所が閉鎖される頃には、
「平工は避難所のなかでもすごく良かった」と、
当初と評価が一変したのだ。

前出の女性ボランティアは、各避難所を巡ったなかで、
なぜ平工の避難所が良かった、こう分析する。

「平工の避難所は加藤さんが仕切っていた。
でも加藤さんはとっても緩い。いい意味で仕切らない。
私らボランティアが来れば、
できることはどうぞ自由にやってと任せてくれる。
ボランティアにあれやれこれやれと細かい指図はせず、
ボランティアがしたいことをやらせてくれる。
だから平工にはいろんなボランティアが集まってきて、
みんながみんないいと思ったことを自主的に率先してしていくので、
どんどん避難所の環境が良くなったのではないか」

そんなこと当たり前、と思うかもしれないが、
他の避難所は必ずしもそうではないらしい。

「同じいわき市内の別の避難所に行き、
そこを仕切っている人に、何かお手伝いできることありますか?と、
そこの避難所を仕切っている人に話を聞いたが、
『今はボランティアも物も足りているから必要ない』
と断られた。
でも避難所にいる被災者の方に話を聞いたら、
これから夏になるので、夏用の薄手の服が足りないという。
それを持っていって配ったらすごく喜ばれた。
もし仕切っている人の話を鵜呑みにし、
被災者の話に耳を傾けなければ、夏服に困っていたのではないか」

細かな状況はわからないので、
そこの避難所の仕切っている人が、
なぜボランティアを断ったかは不明だが、
もしかしたらその人はあまり被災者に話を聞かず、
自分が何でも仕切って、よそ者ボランティアは、
面倒だから受け付けないという態度をとっていたのかもしれない。
だからボランティアも寄り付かないし、
統制がとれていたとしても、
他の避難所に比べて支援が行き届かなかったのかもしれない。

こうして避難所を仕切る人によって、
避難所格差、待遇格差が現出した。

ボランティアを仕切る人が自治体だと、
ゴールデンウィークなんかにボランティアが集中しても、
「ボランティアはいっぱいで足りてる」と断ってしまったところもある
でもそれは被災者のニーズをすべて聞きまわっているわけではなく、
限られたニーズしか聞いていないため、
「もう十分」「もういらない」という話になる。

しかし実際には被災地ではいくらでも人手がいる状態で、
自治体仕切りのボランティアではダメだと考えた人たちは、
自分たちで勝手に被災者の人に聞き回り、
「何かお手伝いできることありませんか?」と聞いて回ったら、
いくらでもニーズがあったという。

ニーズとボランティアのミスマッチは、
被災者に話を聞いてもよく出てきた。
「床上浸水してしまった1階のゴミ清掃をしたいと思い、
とても家族だけでは手が回らないので市にボランティアをお願いしたが、
ゴールデンウィークにもかかわらず、回せるボランティアはいないと言われた」

ボランティアは十分足りていると、
断ってしまっているからこのようなことが起きるのだろう。
仕切る人が悪いと、
ボランティアに助けて欲しい人もいっぱいいて、
ボランティアをしたい人もいっぱいいるのに、
両方を断ってしまうというとんでもないことが起きてしまう。

仕切る人によって避難所の支援状況が変わり、
ボランティアの数も変わる。
面倒なのは嫌だから、
個人ボランティアは一切断ってしまえというのも、
それはそれで一つの考え方だが、
そこにはボランティアは寄り付かなくなる。

一方、加藤さんのように、
何か支援したいという意志があるなら、
どうぞやってくださいという緩いところには、
いろんなボランティアが集まり、
いろんな支援ができる。

もちろん加藤さんは何でもかんでもオールOKしているわけではなく、
「私はシンプルな原則で判断している。
避難所にいる被災された方のためになるのかならないのか。
それだけだ」
と言っていた。

しかし仕切りすぎの人たち、
仕切りの見当違いの人たちって、
「被災された方のためになるかならないか」ではなく、
「自分が管理しやすいか、しにくいか」で判断するから、
度量が狭い仕切り屋だと何でも断り、
手が行き届かなくなってしまうのだろう。

最近「災害ボランティアの心構え」(ソフトバンク新書) 村井 雅清著を
読んだが、そこにもボランティアはどんどん押しかけて、
自分でニーズをどんどん拾って自主的に活動すればいい、
みたいなことが書いてあった。

とかく日本では事なかれ主義というか、
問題が起きると困るという発想が強いのか、
何でも管理しないと気がすまない、
みたいな志向が強いせいか、
ボランティアの自主性を阻んでしまい、
非常に危機的な状況にもかかわらず、
平時のマニュアルに沿って行動しよう、
という原理が強すぎるような気がする。

時期によって避難所を仕切る人に求められる能力は変わるのだろうが、
避難所の初期の頃には、
いろんな人を呼び込み、
いろんな人に手伝ってもらうような、
寛容なリーダーが必要なのかもしれない。

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by kasakoblog | 2011-07-15 20:14 | 東日本大震災・原発

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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