ペットを巡る被災地の悲哀~正直者がバカを見る?!

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「地震後、会社から家に戻って、
残っていた犬を助けに行き、
車に乗り込んで逃げるところを津波にのまれてしまった。
幸いにして津波がひいたら、
車は大きな木のところで引っかかってくれて、
私も犬も九死に一生を得ました。
先頭が地面に突き刺さって、
後部が浮き上がった、立っているような車から、
命からがら犬とともに脱出したのです」
(福島いわき市に住むAさん:63歳男性)

そんな生死をともにした犬と、
2ヵ月の避難所生活の後、
一時的に別れざるを得なくなってしまった。

「ペットを飼える仮設住宅なんてないし、
借上住宅なんてない」
と市の職員から言われたからだ。

ペットといえど家族同然のようなもの。
ましてや一緒に津波にのまれたものの、
生きて帰ってきた同志でもある。

しかしペットを理由に市が用意した仮の住まいを断れば、
90歳になる義母に避難所生活を強いることになる。
ましてやいつかは避難所は閉鎖され、
どこかの住まいに移らざるを得ない。
仕事の関係上、福島にとどまらざるを得ず、
いずれにせよペットはあきらめなければならないのかもしれない。

幸い、ボランティアの方で犬を預かってくれる人がいた。
犬を連れて行きたいのは山々だったが、
義母のことなども考え、市が用意した雇用住宅に移った。

「ところがですよ、引っ越した途端、
両隣から犬の鳴き声が聞こえてくるんです。
ペット禁止だっていうのに、
持ち込んだ避難者の方もいたのです。
それだったら私も連れてくればよかった・・・」

今から連れてくるという手もあったが、
市に正直にペットがいることを言ってしまったので、
もはや今さらペットを連れ戻すなんてできなかった。

正直者がバカを見るのか・・・。
Aさんは表情には出さないが、
はらわたにえくりかえる想いでいるだろう。

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同じ地区に住み、津波被害で家を失った、
志賀修一さん(46歳)一家も犬がいた。

やはり市からは「ペットが入れる家なんて用意できない」
と突っぱねられた。
でもペットと別れるなんてあり得ない。
長くてもいい、避難所生活を続けるまでだ、
と思っていたが、
月日が経つと状況が変わってきた。

「市が用意した住宅でなくても、
自分で探した住宅でも被災された方には家賃補助が出る」

待った甲斐があった。朗報だ。
これならペット可能な住まいを自分で探せばいい。
避難所から会社に通い、
その合間をぬって、新しい住まい探しに奔走した。

しかしほとんど賃貸住宅はなかった。
いわき市には多くの原発被災者が避難してきており、
こうした人も家を探して住むようになっていたせいか、
ほとんど家がない。

ペット可で家族4人で暮らせる家はないか。
探し続けて見つかったのは、微妙な位置の一軒家だった。

「海沿いにある家でちょっと高台にあるとはいえ、
手前の家まで津波被害にあった場所なんだそうです。
地盤沈下もしているし堤防もないし、
津波が来たらまた逃げるしかないけど、
ひとまずはここで暮らすしかない」と考えた。
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志賀さん夫婦は「海が見える開放感のある場所はやっぱりいい」
という想いがあるものの、
お母さんは「もう海沿いはいやだ。
あんなひどい惨事に巻き込まれたくない」と言った。

志賀さん家族は地震があった途端、
すぐに高台にあるゴルフ場に逃げたので、
津波を目の当たりにはしていない。
しかし自分たちが住んでいた家が、
跡形もなく消え去っている光景は見ている。
だからもう海沿いには住みたくないと。

新しい家はやや高台にあるが、
駐車場は海沿いにある。
「なんかそれもいやなんですけど、
でもそんなこと言っててもペット可の住宅なんてないし」
と志賀さんは言う。

「そういえばペット禁止だって言ってたのに、
ペットと一緒に住んでいる家も多いって聞きましたよ。
まあうちの犬はワンワンほえるので、
さすがにバレちゃうだろうから、
禁止なのに住んでしまうという選択肢はなかったですけど(笑)」

正直者はバカを見るのか。
またしてもそんな想いがよぎった。

・・・
私はペットを飼ったことがない。
だからペットやペットのいる家族に対して、
とりたてて同情する立場にはない。

被災した状況で仮設も借上住宅も少ないんだし、
ペットなんて贅沢言うなという意見もありそうだが、
ペットに対して特に思い入れのない私でも、
ペットって家族同然の存在なのだろうから、
一緒に住めるようにどうにかできないものなのかと思う。

ただそれよりも何よりも被災地では、
正直者の被災者がバカを見るという出来事に愕然とした。
ペットなんかいないと偽って、
ペット禁止の住宅に移ってしまう人もいれば、
バカ正直にペットがいることを言ってしまったため、
ペットをあきらめざるを得なくなった人もいる。

志賀さんなんかはラッキーというべきか、
アンラッキーというべきか、
避難所が閉鎖されるまで最後まで居残る覚悟をしたおかげで、
自分で住宅を探しても家賃補助が出る、
という幸運なニュースに恵まれたものの、
逆にそのためにまた津波被害の可能性のある、
家に住まなければならないという不運な面もある。

一体、何が正解で何が失敗なのか。
一体、誰がトクをして誰がソンをしてしまったのか。
こうした非常時ではどんな選択がよかったのか、
計り知れないことがいっぱいある。

もし今、あなたがペットを飼っているのなら、
自分の家が住めなくなった時に、
ペットをどうするか考えておいた方がいい。

被災地には生き延びたとしても、
そんな「別れ」がいっぱい存在していた。

被災地レポ&写真
http://www.kasako.com/110311top.html

by kasakoblog | 2011-08-15 22:39 | 東日本大震災・原発

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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