イヤな上司のおかげで人生好転!~33歳の女性Tさん~
2011年 10月 21日
超おそろしい上司。
部下を恐怖で支配して、チームをまとめるような、
そんな上司のせいで、彼女は手まで震えるようになっていた。
常に見張られているようで、
何か失敗しようものなら、
どれだけ厳しく怒られるかもしれず、
余計に萎縮してしまい、仕事がままならない・・・。
学術的な冊子の制作をつくる会社に働いている、33歳の女性Tさん。
昨年末、上司の恐ろしさに耐えられず、ある決断をした。
「編集・ライターの専門学校に行こう」
その理由は2つ。
1つは、恐怖で支配する上司のような編集・進行のやり方以外に、
上手な編集の仕事の仕方があるのではないかを知るため。
もう1つは、会社をやめても転職できるよう、スキルを身につけるためだった。
この上司のおかげで、
編集・ライターの学校に行こうと決断した時から、
彼女の人生は好転し始めた。
イヤな上司が今年のはじめでやめた。
これで自分が会社をやめなくて済んだ。
今年の6月から週末に編集・ライターの学校に通うようになり、
自分のしたい仕事に目覚めた。
今の会社の仕事のように、えらい先生のところにいって、
その先生の話をひたすらテープ起こしして書くような仕事ではなく、
自分でテーマを見つけて取材にいくような、そんな文章を書きたいと。
そんな矢先の6月。
震災のチャリティーイベントをしている人と出会った。
アーティストたちが作品を作って販売し、
そのお金を被災地に寄付をする活動をしていた。
その時、いろいろな話をするなかで、
震災や被災地のことで、
自分も何かできることはないかと考えるようになった。
ボランティアをいろいろと調べて、
ペットの散歩などを手伝う、
動物ボランティアに参加することに決めた。
でもすぐに休みがとれず、8月のお盆休みに行くことになった。
編集・ライター学校の卒業制作提出が10月にあり、
漠然と何か被災地や震災をテーマにしたものでできないかと考えていた。
私が表現できることは文章。
でもその時、ふと思った。
「災害は必ずまたどこかで起きる。
そんな時、人は何を大切にして生きていくのだろう」
震災後、何を大切にしているのか、
インタビューしてその答えをメッセージボードに書いて、
それを写真に撮るのはどうだろう?
文章より写真の方が伝わるのではないか。
そしてその大切なものを書いた写真は記録として残るのではないかと。
8月、石巻で動物ボランティアを終えた後、
最後の1日を自分の時間にあて、
メッセージボードを書いてもらおうと、
町で街頭直撃インタビューを開始した。
でも唐突なお願いになかなか応じてくれる人はいなかった。
でも1人だけ、地元に住んでいる親子の方が、
震災のことを語ってくれ、メッセージボードに書き、
写真も撮らせてくれた。
被災地から戻ってきた後、
震災で気持ちが変わったのは被災地だけではないと思い、
日比谷公園で同じ要領で街頭直撃インタビューを試みた。
でもうまくはいかない。
そんな突然のお願いに立ち止まってくれる人などいず、
何度も断られ、挫折しそうになった。
かといってまた被災地に行って同じことをしても、
断られる確率の方が圧倒的に多いだろう。
さてこの先、どうしたらいいのか。
ネットで調べていたところ、
個人にもかかわらず、被災地取材を行っている、私のブログを発見。
8月30日に私にこのようなメールを送ってきた。
・・・・・
かさこ様
はじめまして、Tと申します。
現在、仕事をしながら編集・ライターの学校に通っています。
学校の卒業制作のため、福島へ取材に行こうと思い、
情報を収集している中でかさこ様のブログに出会いました。
現在、少しずつ取材をすすめているのですが、
プレスの腕章や会社の肩書きがなく、
個人で取材をすることの難しさを痛感しています。
そんな状況で、かさこ様の8月8日の記事を拝読いたしました。
※http://kasakoblog.exblog.jp/15243327/
「金がもらえるから取材するんじゃない。
興味があるから、社会的に意義があるから取材する」
という文章に、勇気をもらいました。
卒業制作で記事にしたいことが、街頭インタビューを必要とするもので、
何度も断られて落ち込んでいましたが、
かさこ様の文章を読んで、
自分がどうしてそのテーマを取り上げたいと思ったのか見つめ直して、
やっぱり取材を続けたいと思いました。
もし差し支えなかったらアドバイスをいただきたいのですが、
個人で街頭インタビューのような形式の、
いわゆる突撃取材に承諾をいただけるコツはあるのでしょうか?
ご教示いただけましたら幸いです。
モチベーションがあがる素敵な記事をありがとうございました。
これからもブログを楽しみにしています。
・・・・・
突撃取材を試みたり、
見ず知らずの私にメールを送ってきて、
アドバイスを求めてくるなど、
行動力のある人を応援してあげたいなと思い、
メールでアドバイスするとともに一度会って話を聞いた。
そこでもしよかったら、
私が何度も取材に行っている福島いわき市で、
9月にも取材に行く機会があり、
そこに同行したらどうかという話を持ちかけた。
そこならいくらでも被災者の話を聞ける。
喜んで話してくれるはずだ。
避難所同窓会を企画している文京区ボランティアグループ、
響きの森の加藤さんから彼女を引き合わせてOKいただき、
同行してもらうことにした。
そこには被災者の方が50人ぐらいは集った。
彼女のお願いを喜んで引き受けてくれる被災者の方が多く、
何人もの人にメッセージボードを書いてもらうことができた。
卒業制作を提出し終えたが、
「このメッセージボードを集めて展示するのは、
今後もずっと続けていきたい」と彼女は言う。
それと時期を同じくして、
ある動物病院から本を出すので執筆を手伝ってくれないか、
という話も舞い込んできた。
何人か候補のライターがいたにもかかわらず、
彼女が選ばれた。
きっかけは昨年、愛犬が死んでしまったことにあった。
かわいくて大好きな愛犬だったのに、
旅行に行っていて死に目にあうことができなかった。
病気をしていて治療を施していたが、
それは本当に犬のためだったのだろうか?
自分のために無理な治療を押し付けていたのではないか?
そのせいで死んでしまったのではないか?
犬にとって人生の最後は幸せだったのだろうか?
愛犬に何もしてやれなかったという悔いが、
ペットにとっていい医療とは何なのかを知りたい、
という思いに変わり、
動物ホスピスの話を聞きに行った。
その病院の1つが本の執筆依頼をしてくれた。
まだ今の会社はやめてはいない。
でも自分が本当に書きたいことややりたいことが、
愛犬の死やイヤな上司のおかげで、
それをいい意味でのバネにして行動したことで、
彼女の人生は好転し始めた。
「今、いろんなことがすごく運が向いている」
と彼女は言った。
犬の死もイヤな上司の存在も、
自分にとっては大きなダメージとなる出来事だった。
でもそこで彼女はただ落ち込むだけでなく、
それを乗り越えようと、行動を起こした。
突撃街頭インタビューしてうまくいかず、
挫折しそうになっても、
何か方法はないかと探して、私のブログにたどりつき、
それが縁で自分が思う活動ができるきっかけをつかんだ。
どんなつらいことも、どんなイヤなことも、
捉え方次第で自分のプラスになる。
そのお手本のような生き方だと思う。
311が起きてパラダイムは変わった。
いつまでも後向きに生きていても始まらない。
どこかでどんなつらいことも、
それをいいきっかけにして、
自分の人生を今まで以上にいいものにする。
そのために真剣に悩み、考え、そして必ず行動する。
すぐにうまくいかないかもしれない。
でも行動していればいつかは突破口が開けるはず。
うまくいかなければ軌道修正すればいい。
そんな彼女の生き方は今の日本に必要な生き方モデルだと思う。