ギャラが振り込まれるまでが仕事
2011年 10月 28日
一般サラリーマンは自分のギャラ(給料)は定期的に振り込まれ、
給料が振り込まれないリスクを考えることは、
よほどの零細企業以外はないだろう。
しかし自営は違う。
仕事を請けたはいいが、
そのギャラがちゃんと振り込まれるかどうか、
代金回収リスクまでも背負っている。
ちゃんと支払わなければ督促し、回収しなければ、
仕事はやったはいいけどお金は一銭ももらえない、
ということもあり得る。
そこがサラリーマンと自営の意識の違いとなって表れる。
サラリーマンなら基本的にどれだけ仕事をしようが、
給料は確実に振り込まれるわけで、
自分のした仕事のギャラが取引先企業から、
いくら、いつ振り込まれるかはあまり気にしないだろう。
しかし自営にとっては死活問題だ。
それでメシを食っている。
だから当然のごとく、
「いくらもらえる仕事なのか」「いつ振り込まれるのか」をはじめに気にするし、
「間違いなく振り込んでくれる取引先なのか」を非常に気にするところだ。
なぜなら仕事とは対価をもらって仕事といえるわけで、
ギャラももらわずにただ働きさせられたら、
それは仕事ではなくボランティアになってしまう。
私が一度フリーになって驚いたのは、
ギャラの振込みが2~3カ月先が当たり前ということだった。
今月した仕事の分が今月すぐにもらえるわけではない。
多くの取引先は仕事と支払いに時間差がある。
今月した仕事を末締めで請求書を発行し、
そのお金は2カ月先にやっと振り込まれる。
フリーの世界に身をおいていれば、
もしくは会社で請求まできっちり仕事をしているサラリーマンなら、
支払いサイトが2カ月先とかぜんぜん驚かないかもしれないが、
そんなことをまったく知らない人にとっては驚きだろう。
ギャラが振り込まれる前に仕事をするということは、
仕事をするにあたっての作業にかかる費用を自分で支払う、
持ち出しリスクも負うことになる。
それでもちゃんと2カ月先に振り込まれるのはまだいい。
たとえば10月で終わるといっていた仕事が、
クライアントのせいでだらだら延期され、
12月まで引っ張られたとすると、
あてにしていた収入がもらえるのが、
さらに2カ月遅れてしまう場合もあるわけだ。
自営というのはこうしたリスクを背負っているわけだが、
発注側のサラリーマンは、どんだけ仕事を延ばそうが、
自分の給料は定期的に入ってくるから気遣いがしにくい。
さらにやっかいなのはいざ請求する段になっての金額トラブルだ。
そもそも日本人は「お金は汚い」という意識があるせいか、
お金のことをはっきりいうのはいやらしいという意識があるのか、
はじめにきちんとギャラを決めずにスタートしてしまう仕事も多い。
そしていざ請求の段になって、
発注サラリーマンからは「~円」ぐらいでといわれ、
「えっ、そんだけ?!」みたいなことになる。
これはどちらが悪いというより、
きちんと仕事を受ける前に、
仕事の範囲とギャラの確定をしないから、
どちらも悪いわけだが、
日本の風習上、契約という習慣がなく、
何も言わない以心伝心みたいな感じのため、
あいまいなまま、あいまいに仕事を受け、
あいまいに金額が決まるみたいなことも少なくない。
いや、そこに信頼関係があって、
お互いに納得できる金額ならいいわけだけど、
はっきり事前に言わないとトラブルになることもある。
こうして自営は「思ったよりも少なかった」
「支払いが3カ月先なんて聞いてない」みたいなことになる。
サラリーマンにはあまりわからないかもしれないが、
取引先の自営業者なりフリーランスは、
定期的に給料がもらえるわけではないから、
ギャラをきっちり回収するまでが仕事、
という意識がより強いということだけは覚えておいた方がいい。
同じように仕事をしているようで、
その仕組みが180度異なるから、
その点の違いから思わぬ摩擦が起きる可能性もあるので、
相手の立場も考えて仕事を進めるべきだと思う。
もちろんサラリーマンだって、
取引先企業からギャラをもらえなければ、
最終的には自分たちの給料ももらえなくなる可能性もあるわけで、
だからこそ大きな取引先がこけたりすると、
連鎖倒産の危機もある。
上司や経理にギャラ回収業務を任せていると、
仕事の対価であるお金に対して鈍感になりがちだが、
仕事はギャラが振り込まれるまでが仕事という意識を、
しっかり持っておきたい。