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“観光地化”する被災地見学を復興資金と防災教育に

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津波で「全滅」と化した気仙沼市内の沿岸部に、
続々と人が集る場所がある。
津波でかなり陸地の入った所まで流された大型船のある場所だ。
車を降りて下車する見学する人も多く、
なかには記念撮影をするグループもいた。

「不謹慎でけしからん!」
「被災地を見学するとは何事だ!」
という意見があるかもしれないが、
そんなことを行っても見たい人は止められないわけで、
むしろこうした被害の傷跡を有効利用し、
県外の人を呼び寄せる材料にして、
お金を落としてもらえば、
被災地復興にもつながるんじゃないかと思う。
例えばこの船を見に来た県外の人は、
被災地復興資金として1000円以上募金するとか。

それこそ商魂たくましいアジアの新興国なら、
こうした「名所」を利用し、便乗商売に精を出すんじゃないか。
記念撮影屋さんから被災地グッズを売ったり、
飲み物、食べ物を売ったりと。

日本人のメンタリティには合わないかもしれないが、
そのぐらいの強欲さがあってもいい。
逆にそうした欲がないと復興は難しい。

「阪神大震災の時は、関西人のたくましさ、
いい意味での強欲さもあったから復興も早かったが、
東北人は我慢強いせいで復興が遅いのではないか。
もっと強欲なぐらい、あれも欲しいこれも欲しいといってほしい」
と何人ものボランティアから関西人と東北人の気質の違いが、
復興のスピードに影響しているという話を聞いた。

もちろんかなり極端に話を単純化してしまっているきらいはあるが、
打ち上げられた大型船を商売にしてしまうぐらいの貪欲さがあれば、
復興に向けての力強さは変わってくるだろう。
倫理的にいい悪いはまったく別の話として。

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ただこの大型船、津波被害を風化させない災害遺構として、
保存し、残そうという動きもある。
気仙沼に限った話ではなく、
先日、私が訪れた石巻市雄勝町にある、
3階建ての建物の上に乗ったバスなどもその1つだ。
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1071/20110721_01.htm
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しかし賛否両論わかれている。
二度とこうした津波被害を繰り返さないために、
残すべきという意見と、
震災の痛ましい記憶を町に残しておくのは、
あまりにつらすぎるので撤去すべきという意見とだ。

未来永劫、この先も保存して残しておくべきかはともかく、
私はこうした象徴的な災害遺構は、県外から人を呼び込み、
町を活性化させるためにとっておくべきだと思う。

わざわざ記念撮影をしにくる人もいる。
それを無料で見せるのはもったいない。
何らかの形で金を落とす仕組みを作ることと、
単に災害遺構の写真を撮るだけでなく、
何らかのボランティア作業をしてもらうとか、
被災者の話を聞いて防災教育に役立てるとか、
“観光客”にとっても被災者にとっても、
プラスになる“資源”として利用できると思う。

負の遺産をあえて残して歴史に語り継がせるものとしては、
アウシュビッツの強制収容所や広島原爆ドームなどがある。
こんな痛ましい施設を残しておくなど、
もっての他だという意見もあるだろうが、
二度とこうした悲劇を繰り返さないための負の遺産として、
今は世界中から多くの観光客が訪れる世界遺産となっている。

被災地が復興するには経済の活性化が必要だ。
そのためには県外から人を呼び、お金を落としてもらうことが重要だ。
しかし津波によって多くの観光資源が消失してしまった。
でも不謹慎な言い方かもしれないが、
他の地域では決して見ることができない、
あまりのも生々しい、度肝を抜かれる災害遺構が被災地にはある。
それを利用しない手はないと私は思う。

震災当初に物見遊山でというのはどうかと思うが、
震災から8ヶ月が過ぎ、復旧から復興へと、
ある意味では今まで以上に厳しい段階に被災地は入っている。
復興の手助けに、そして津波や地震の恐ろしさを知る貴重な学習機会として、
災害遺構をうまく活用してほしい。

観光客気分で訪れた人も、
テレビや新聞なんかで見るより、
現地に赴きその甚大なる被害を生で感じれば、
自身の生活の防災意識も高まり、
被災地に対する意識も変わるのではないかと思う。

・書籍「検証・新ボランティア元年~被災地のリアルとボランティアの功罪」

by kasakoblog | 2011-11-10 00:12 | 東日本大震災・原発

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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