ミシンとストーブどっちをあげる?~自立支援が問われる震災8ヵ月

ある河原にホームレスのAさんがいました。
Aさんは会社をリストラされて、
ホームレスになってしまったものの、
「絶対にまた普通の生活に戻るぞ!」
と缶拾いなどをしてコツコツお金をためていました。

ところが3月のある日のこと。
大雨で川が大氾濫。
Aさんは河原にあったダンボールハウスや、
そこに必死に働いて買い集めた家具や電化製品が、
すべて流されてしまいました。

食べ物も着る物もなく、
寒さと空腹に震えていたAさんが土手にいると、
若いフリーターXさんがやってきました。
「テレビですごい被害だと聞いてやってきました!
被災者の方ですよね?
私はボランティアのものです。
私もフリーターで収入が多いわけではないのですが、
よかったら私のお古の服を使ってください」

Aさんは泣いて喜びました。
「見も知らずの私のためにありがとう」
それを見たXさんは感動してしまいました。
毎日毎日、やりがいもなくただお金を得るために、
単純作業のアルバイトをやっていた時には得られない、
喜びがあったのです。
Xさんは「これぞ私の生きる道だ!」と目覚め、
以後、毎週のようにAさんをたずね、
食料や衣服を渡すようになりました。

Xさんの献身的なボランティアのおかげで、
3月から半年が過ぎると、
河原から少し離れた空き地に、
立派なダンボールハウスが完成しました。
流された家具もすべてそろいました。

Aさんは言いました。
「もう元の生活に戻ったから大丈夫だよ」
でもボランティアのXさんはAさんに尽くすことが、
いまや生きがいとなっていました。

「Aさん、そんなこと言わないで。
大きな被害にあったのだから、
何か欲しい物や困ったことがあったら何でも言ってください」

Aさんは半分冗談でこんなことを言いました。
「毎日暇だからDSのゲーム機があったらいいな~」
「ゲーム機ですね!わかりました!」
Xさんはなけなしのアルバイト料をはたいて、
ゲーム機を買ってきました。

そしてまたこう聞きます。
「何か困ったことないですか??」
「暇だから最新刊の漫画ワンピースが欲しいな」
「わかりました、ワンピースの最新刊ですね!」
Xさんは依頼を受けるのが楽しく、
せっせとAさんの言われるままに、
物資を送り続けました。

「お古の服じゃなく新品の服がほしい」
「新品の服でもあのブランドじゃないといやだ」
「ハロウィーンパーティーをしてほしい」
「クリスマスパーティーをしてほしい」
「正月におせち料理を食べたい」
Aさんの願いをすべてXさんはかなえました。

Aさんはすっかり缶拾いをやめてしまいました。
なぜならボランティアのXさんにいえば、
何でもくれるからです。
「まじめに働いていたのがバカらしいな。
Xさんに言えば何でも持ってきてくれる」

かつてホームレスになった時に、
「いつかこの生活から脱してやる!」
という意気込みをなくし、
このままの生活の方がラクなんじゃないかと思い始めました。

最近、寒くなったので、
新しいダンボールハウスには暖房がつくエアコンがあるものの、
例によってXさんに「ストーブがほしい」と頼みました。
Xさんはなけなしの金をはたいてストーブを購入しましたが、
支援する物資を購入するために、ここ半年、無理して働いたのと、
休日はAさんのダンボールハウスの引越し作業の手伝いなどで、
へとへとになり、とうとう病気で倒れこんでしまいました。

ボランティアのXさんはフリーターですので、
働かなければ収入は入ってきません。
病気が長引き、収入がなく、ついに死んでしまいました。

突然Xさんが来なくなったAさんも困りました。
毎週のように食事を持ってくるXさんが来ないと、
いくらストーブがあって暖かくても、
食べ物を買うお金がありません。
仕方がなく、また缶拾いをやろうと思いましたが、
ここ半年、漫画を読んだり、ゲームをやったりして、
体を動かすことをしていなかったために、
缶拾いする体力がなくなっていました。

こうしてAさんは暖かい部屋で、
食料がないため死んでしまいました。

・・・・・

一方、川の大氾濫で被災したホームレスのBさんは、
はじめはボランティアのYさんから、
食べ物や着る物を支援してもらいましたが、
半年が過ぎて「寒くなったからストーブが欲しい!」
というとYさんに怒られました。

「私だって収入はそんなにありません。
無理して今までボランティアをしてきましたが、
これ以上、あなたを支援していたら、私が倒れてしまいます。
だから最後にあなたにストーブではなくこれをあげます」

そういってYさんはBさんにミシンと生地をあげました。
ホームレスのBさんは逆切れしました。
「ミシンなんかもらっても寒い冬は越せねえんだよ!」

Yさんはこう諭しました。
「缶拾いの収入では、
あなたは一生ホームレスから抜け出すことはできません。
このミシンと生地で服を作って売ってみてください。
服が売れたら私から生地を買ってください。
そしてまた作って売る。
そうしたらあなたも私もともに寒い冬を越えることができます」

はじめは半信半疑のBさんでしたが、
Bさんがミシンで作った服はデザインがよく、
缶拾いしてもらえる10倍のお金がもらえました。

こうしてホームレスのBさんは、
ミシンで服を作って売ったお金でストーブを買い、
自分で食べ物や着る物を買うことができました。
ボランティアのYさんも、今までのように、
Bさんに物資を貢ぐために無理をして働く必要はなく、
YさんとBさんはいつまでも仲の良いお友達として暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。

・・・・・

今日は11.11。
3.11から8ヵ月。
上記のたとえ話は「何を大げさな」と思うかもしれないが、
自立支援を行っているボランティアさんから、
「自立支援ではない支援をしている人がいっぱいいて、
そのせいで被災者の意欲が萎えている」と嘆いていた話をもとに書いたものだ。
結構リアルで起きていることに近いことも含まれている。

もちろん被害が甚大だっただけに、
まだまだ物質的な支援が必要な人もいる。
しかし、そうした人ではなく、
もう物も十分、お金も十分の持っている人ばかりに物がいき、
本当に必要な人に届いていないという問題も起きつつある。

今、必要な支援とは何なのか。
復興とは何なのか。
被災地が元気になるだけでなく、
日本全体が元気になるには何をすべきなのか。

上記のたとえ話はおとぎ話として笑うことができない、
今の日本の一端を示していると思う。

自立支援なくして復興はない。
震災から8ヵ月が過ぎた今、
支援のあり方を見つめ直したい。

・被災地レポート
http://www.kasako.com/110311top.html

by kasakoblog | 2011-11-10 19:50 | 東日本大震災・原発

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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