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独裁者より怖い原発利権複合体

独裁者よりはるかに恐ろしいのは、個人が見えない組織だ。
今年は金正日、カダフィ、ビンラディンの3人が死んだ。
(ビンラディンは“独裁者”といえるかは微妙だが)
サダムフセインもアメリカに殺された。

憎い独裁者のせいで悪政が行われ、
そいつさえぶっ殺せば、
もしくはそいつさえ政権から引きずり降ろせば、
社会がよくなるというのは幸せな国家だろう。
もっとも恐ろしいのは、
特定の悪玉がいない組織による悪政だ。

東電・原発メーカー・経団連・マスコミ・官僚・政治家・学者が一体となり、
原発利権の甘い汁を吸い続け、
事故が起きてもなお、国民の安全をないがしろにして、
自らの利益保持のためにとんでもないイカサマを行っている。

しかしこの中に“金正日”なり“カダフィ”なり、
“サダムフセイン”がいるわけではない。
民主党だろうが自民党だろうが、
時の悪政を首相のせいに押しかぶせて、
首相を辞めさせたところで、
その政党を交代させたところで、
悪政はまったく治らない。

なぜなら独裁者という特定の誰かの力で、
恐ろしいことが行われているわけではないから。

東電も原発メーカーも経団連もマスコミも、
官僚も政治家も学者も、
みんながみんな一人で“善なる”行為ができないよう、
どんなに国民の安全が危険にさらされようが、
自分たちの組織の利益が最大化することだけをもとに、
組織に属する個人が単なる部品として、
それぞれの役目を果しているに過ぎない。

だからそこに所属する人に罪の意識も悪の意識もない。
自分たちは自分が所属する組織のために、
ただ忠実に言われたことをやっているに過ぎない。
しかもその命令はカリスマ社長や絶対的君主がいるわけではなく、
みんなで集まってがんじがらめに作り上げたシステムとルールに過ぎない。

だから仮にマスコミや国民が、
「東電の社長やめろ!」「野田首相やめろ!」
といってやめさせたところで、
組織はまったく痛まない。
ただ同じことをやる役回りをすげかえるだけで済むのだから。
そして今までとやることはまったく変わりはない。
ただただ組織の論理に乗っ取り、
自分たちの利益を最大化し続ける。
いわば感情のないモンスターのように、
組織の目的だけが肥大化し、
組織が儲かっても誰もトクしないみたいな、
社長や首相ですら単なるコマに過ぎない、
恐ろしいほどの原発利権複合体。

しかもやっかいなことにその構成員は一般国民から成り立っている。
彼らだって国民の健康を害するようなことをしたくて、
その組織で働いているわけではない。
しかし自分の目の前の生活費をもらうために、
産業のない過疎化した地方では原発産業は魔法の玉手箱だから、
自ら望んで手に入れたわけだし、
そこは打ち出の小槌のごとく、何十年もの間、仕事があるから、
原発メーカーや経団連はこぞって原発再稼動を標榜し、
再稼動ができなくても意味のない除染活動で、
ボロ儲けしようとしている。
しかしその決定をしているのは一人の独裁者ではなく、
大勢の組織の人間たちだ。
だから誰かが死んでも原発利権はなくならない。

個人と企業の違いは事業の永続性にある。
個人の仕事はその個人が死んだら終わってしまう。
しかし企業は組織だから、
創業者が死のうが社長が死のうが、
脈々とその事業は受け継がれていく。

そしてそこに所属する社員の幸福とか、
社会の貢献なんてまるで関係なく、
その組織がどれだけの利益を上げられるかが最優先され、
その目的を実現するために、
目の前の給料とボーナス欲しさに、
自分の役回りが果す社会的害悪に目を向けず、
組織の論理に従ってただ行動する、
匿名の大勢の人たちによって社会はねじ曲げられていく。
そして加害者は被害者となり、被害者は加害者となる。
例えば、原発のせいで住めなくなった人の中には、
数多くの東電社員や東電関連企業の社員がいるわけだから。

日本は北朝鮮とは違って、
特定の独裁者を倒せば社会がよくなる性質ではない。
システムや組織の体制そのものを変えない限り、
次から次へと替えのきく人材が補充される。

そしてその頂点となっているのが官僚組織である。
民主党がいつのまにか自民党と同じ、
消費税増税なんて言い出したのは、
結局官僚が取り仕切っているからだ。
だから国民が政治家を選んでもムダ。
官僚が気に食わない政治家は、
例えば小沢一郎氏のように検察権力を使って叩き潰され、
鳩山首相もやっかいばらいされ、
菅氏は消費税増税までは官僚の手先だったが、
浜岡原発をとめるなんてことをしたから、
マスコミを使って追い出された。

例えば官僚組織に誰か金正日のような人がいて、
そいつがすべての悪の権化だったら話は早い。
そいつさえいなくなれば社会は良くなるはずだ。

しかし日本はそうはなっていない。
だからやっかいなのだ。

独裁者の気まぐれにより、
北朝鮮からミサイルが飛んできたらどうするんだなんて恐怖より、
電力を独占し、国民への情報を捏造し、
ずさんな管理で利益だけ独占する東電をはじめとした、
原発利権複合体が起こすべくして起こした、
国民テロともいうべき原発爆発の方が、
ミサイル一発よりどれだけ恐ろしい災厄をもたらしているか。
しかもその危機は少なくても30年は続く。
それを収束したなどと無理やり首相に言わせて、
批判は全部首相に集めさせて、
組織は自分たちの利益を確保するため、
着々と基盤を固めている。

独裁者がいる国はもしかしたら“いい”のかもしれない。
なぜなら悪役がはっきりしているから。
加害者がはっきりしているから。
しかし日本もアメリカもそうだけど、
加害者がはっきりしない、特定の悪役がいない社会ほど、
根が深い恐ろしい社会はない。

だから首相を変えても社会はよくならない。
変わらなければならないのは一人一人なのだ。
震災を機にどれだけの人が変われるのか。
それが今後の日本を大きく左右する。

・みんなが被害者であり加害者の時代~悪党なき仕事の恐ろしさ「モダンタイムス」に思う
http://kasakoblog.exblog.jp/16881059/

by kasakoblog | 2011-12-20 00:26 | 政治

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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