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絆<きずな>というより歪<ひずみ>の1年

2011年も残すところあと4日。
今年の漢字は「絆」だというけど、
今年1年は絆なんかではなく、
歪の1年だったのではないか。

今年は東日本大震災一色の1年になり、
原発事故のために被災地だけでなく、
日本全国がいわば被災地であり被害者となったわけだが、
甚大な被害を及ぼしたイヤな出来事を、
「絆」という美しい言葉で締めくくって、
片づけていまいたいという心理はわかるが、
それは問題の本質に目をつぶり、
再び同じ過ちを繰り返す原因にもなりかねない。

震災が起きたことで、
これまで隠れていた社会や人間関係の歪みが、
あちこちで表出したのが、
日本社会のこの1年だったのではないか。

例えば地方の過疎化の問題。
震災が起きて復興・復興と叫ばれているけど、
被災地となった地域の多くが過疎化しており、
震災が起きなくても経済・社会の停滞は進んでいた。
それが震災でさらに悪化し、日本全国に露呈した。
それを「絆」とか「復興」とか、
聞こえのいい言葉でごまかし、
多大なコストと労力をかけたところで、
活性化は望めないという厳しい現実もある。

だからこそ原発という麻薬に頼ったわけだ。
それは福島に限った話ではない。
震災で壊滅的な被害にあった、
宮城県の女川町だってそう。
ここも原発がある。

産業がない、地域に特徴がない、観光資源がない。
でも原発を誘致すればドル箱だ。
魔法のランプのごとく、
次々と莫大なお金を生み出してくれる。
危険施設の前払い賠償金として、
莫大な交付金、補助金、寄付金付けされる。

こうして何の産業もない過疎地域が、
金でたぶらかされておかしくなってしまった。
しかし原発を建て続けないとお金が入ってこないから、
何機も福島に建てたわけだ。

この原発の仕組みの歪みが震災で出てきてしまった。
しかも原発がないと電力が不足するとか、
大嘘をぶっこいてきた。
計画停電という芝居までうった。
そういうイカサマが今回の震災で全部明らかになってしまった。

原発によって被災地の住民間でも歪みが生まれた。
戻りたい人、逃げたい人。
家族間でも歪みが生まれた。
放射能を気にする人、気にしない人。

原発だけではない。
津波や地震も人間関係の歪みを露呈した。
宮城に取材に行った時、
ある被災者はこんな話をしてくれた。

「震災があって一番怖いと思ったのは人です。
しかも身内やご近所が一番怖い。
大災害が起きて助け合わなければならないのに、
震災が起きて、本音の人間関係があらわになってしまった。
助けを求めても応じてくれない親戚。
食料不足で困っているのに、
高値で売りつけようとする近所のお店。
もちろんそんな人ばかりじゃない。
ほとんどの人は助け合いができた。
でも頼りになると思った人が頼りにならなかったり、
そんなことも結構あった。
震災でふだん見えなかった、
人間の嫌な部分の本性が出てきてしまった」

でもこんな話ってメディアでは覆い隠されてしまう。
なんでもかんでも復興美談、絆美談に仕上げてしまう。

もちろんそういういい面はたくさんあったことは事実。
でもそこにこぼれ落ちていく、
たくさんの歪んだ出来事もいっぱいあった。

でも絆というムードに支配され、
不満が言いづらくなり、
余計にストレスをためる結果となった。

福島の住むある人は、
「東北人は我慢強いわけじゃない。
声の上げ方を知らないだけだ。
陰では不満や不平はいっぱい言っている」と話してくれた。

だからこそたまたま私のような、
ボランティアでも大手メディアでもない個人記者に、
震災によって増幅された歪みを訴えたい、
という人が話をしてくれたりメールを送ってきてくれたりした。
みんな不満はあるけど、誰にも言えない。
震災で歪みがひどくなったというのに、
みんな日本人は素晴らしいとか東北人は我慢強いとか、
助け合ってえらいとかいう言葉で片づけられてしまう。
そこでちょうどいいはけ口が私のような立場だったのだ。
だから私には多くの被災地の歪みの叫びが集まった。

・ボランティアの涙と被災者の憤り
http://kasakoblog.exblog.jp/14992713/

・被災者に嫌がらせする地元住人
http://kasakoblog.exblog.jp/15071630/

・華やかな避難所祭の表と裏~原発被災地の深刻度
http://kasakoblog.exblog.jp/15196398/

・ボランティアが被災者の自立を阻害する?!~震災5ヵ月後のボランティアのあり方を問う
http://kasakoblog.exblog.jp/15291070/

・今、日本中で起きているケンカ
http://kasakoblog.exblog.jp/15406233/

・同情はいらない。かわいそうって何?~浪江町出身の叫び
http://kasakoblog.exblog.jp/16013691/

・企業の震災ボラティア競争の裏にお寒い実態
http://kasakoblog.exblog.jp/16934632/

・イベント好きボランティアにうんざり~増える自己満足ボランティア
http://kasakoblog.exblog.jp/16755518/

震災で歪みが出たのは何も被災地だけではない。
首都圏だって同じ。
本当に今の仕事をしていて社会のためになるのだろうかとか、
こんな働き方や暮らし方をしていていいんだろうかとか、
人生を見つめ直そうと考えた人が多かったのではないか。

しかしそこに今で通りのやり方で型にはめようとしたり、
もしくは震災が起きたからといって、
とんちんかんなサマータイムやら除染やら、
自粛やらおかしなことがまかり通ったりしてしまう。

もはや建前ではこの国難は乗り越えられないのに、
震災でさまざまな歪みが噴出しているのに、
建前的なやり方でやり過ごそうとする。

先日、取材したあるエコノミストがこんな話をしてくれた。
「震災が起きなくても日本社会にはいっぱい構造的な問題があった。
でも震災のようなことが起きなかったら、
劇的な改革をしなくてもどうにかなるだろうと、
みなたかをくくり、改革を先延ばしにしてきた。
でも震災という国難が起き、さすがの日本も変わると思った。
しかし日本は変われなかった。

震災が起きても社会の歪みを直さず、
それをむしろ隠そう隠そうという動きばかりが目立ち、
社会の改革から逆行している。
結果、日本のテールリスクは高まった。
金利暴騰、制御不能な円安、財政難による日本破綻。
日本がギリシャのようになるリスクを、
震災は早めてしまった」

震災が起きたのは確かに悲しい出来事だ。
でも震災は日本が変わる、
まさに千載一遇=1000年に1度の大チャンスだ。

電力の問題、原発の問題、地方の問題、
政治と官僚と大企業の問題、
ライフワークバランスの問題、
地震多発国家としての問題、
何度も大津波が来ている沿岸部の問題、
自治体の問題、道州制の検討、
企業と社員の関係、
交通機関マヒ時のあるべき対応、
クラウド的な働き方、
過剰浪費型経済社会の見直しなど、
さまざまな問題を見直し、
社会のあり方を根本的に変えるチャンスだ。

しかし日本人は忘却力の優れた民族。
未曾有の大災害も見事に忘れて、
今まで通りの道を歩もうとしている。

変わろうとした政治も、
見事に官僚や企業の力で、
鳩山首相が引きずりおろされ、
小沢氏はなんくせつけられて悪イメージを植え付け、
結果、マニュフェスト違反どころか、
マニュフェストとは正反対のことをはじめ、
ほとんどムダなバラマキ公共事業と、
そのツケを全部消費税増税で補わせるという、
自民党とまったく変わりない野田政権が誕生してしまった。

それを「絆」なんて言葉で片づけられるだろうか?
原発事故対応の調査で明らかになった、
あまりにもずさんな東電、政府、保安院の対応。
さらには120億円もかけて放射能漏れ予測をする、
SPEEDIを使わずに、多くの人を被ばくさせたという事実。
福島原発吉田所長が東電本店側の要請に反して、
海水注水を継続するために一芝居打ったとか、
そんなギリギリの状況で東日本が全滅しなくて済んだだけであって、
一歩間違えば首都圏含めて、
3000万人が避難しなければならないという、
日本壊滅的な状況がたった9ヵ月前にあったにもかかわらず、
すっかり危機的状況を忘れて、
今まで通りの社会運営が行われている不思議。

絆なんかじゃない。歪の1年だ。
でもそこから良くなるにはたった1つの方法がある。
それは絆なんて美談の言葉で片づけず、
この機会に徹底的に社会のウミを出すこと。
歪みを出すこと。
洗いざらいこの機会に全部出し、
それを1つ1つ解決していく。
そうすれば日本社会は国民が暮らしやすく、
国民の命をないがしろにするような、
政府・官僚・企業ではない、
新しい体制ができるだろう。

ネガティブなことに目をつぶって、
通り過ぎようとしてはならない。
しっかりそれを見つめ、
問題を認識し、何が悪かったのかを反省し、
今後よくなるためにどうしたらいいか考え直せば、
日本破綻というリスクから逃れれるだろう。

私は社会にこぼれ落ちる歪みをしかと見つめて記事にしつつ、
歪みを乗り越えていける生き方や参考になる事例を、
来年もまた紹介していきたいと思います。

by kasakoblog | 2011-12-27 23:23 | 政治

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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