何でもやってあげるのはだからダメ~被災地の高齢者、運動不足で歩行困難2割
2012年 01月 07日
東日本大震災で被災した宮城県南三陸町で、
長時間体を動かさないことで日常動作が困難になる
「生活不活発病」の疑いのある高齢者(65歳以上)が
調査対象の2割を超えることが、
町と国立長寿医療研究センター(愛知県)の共同調査で分かった。
仮設住宅入居者は震災後、871人中339人に歩行困難の症状が現れた。
このうち261人は回復せず、
生活不活発病とみられる高齢者の割合は30.0%に上った。
生活の不活発化の理由としては、
「することがない」「外出が少なくなった」
「疲れやすくなった」との回答が多い。
河北新報社
http://www.kahoku.co.jp/news/2012/01/20120104t11004.htm
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被災地に行ったことがない人は、
なぜ被災地でこんなことが起こるのか、
ぴんと来ないと思うのだが、
起こるべくして起こった事態といえる。
私も被災地取材をしていなかったら、
「なぜに被災者が震災後に歩行困難に?」と不思議に思ったかもしれない。
昨年9月、リハビリ職のボランティア団体「FTF」の山本さんは、
こんな話をしていた。
「不自由な避難所生活が2~3ヵ月続く頃になると、
運動不足により廃用症候群
(特定の器官を長期間、動かさないでいることによって生じる障害)
などになってしまいがちだ。
そこでリハビリの専門知識を持った私たちのような存在が、
運動指導、運動処方、リハビリを行っていく必要がある」
実際に取材同行させてリハビリの様子を見ると、
体が弱っていそうな高齢の方に結構ハードに見える、
運動をさせているのにちょっと驚いた。
運動すると被災者の方が「いたたたた」とかいっている。
一般のボランティアはこう思うわけです。
「被災された、かわいそうな高齢者に、
しかも体が弱っているような方のお手伝いをしなくてはいけない。
代わりに買い物してあげたり、食事を作ってあげたり、
代わりに物を運んであげたりするとかが支援なんだ」と。
でも過剰支援は被災者をまさに、
自らの足で立てなくさせてしまった。
もちろんボランティアの過剰接待だけが理由ではないが、
避難所や仮設住宅暮らしになると、
体を動かす機会が激減してしまう。
そこに輪をかけて「かわいそうだ」「助けてあげなきゃ」
と何でもやってあげるボランティアがくれば、
余計運動不足になる。
結果、今まで元気だったのに歩けなくなってしまう。
余計に支援や介護が必要になってしまう。
岩手の仮設住宅を訪れた時のこと。
仮設に暮す被災者からこんな話を聞いた。
「ボランティアの方がね、花壇の掃除を、
ぜ~んぶやってくれちゃったんですよ。
おかげですごい助かったんだけどね、
私、やることなくなっちゃって」
この被災者の方はボランティアの方が、
すべてやってくれたことに感謝していた。
でも感謝している半面、やることがなくなった、
とやや困惑した様子も見せていた。
少しは自分でやりたかったのだろう。
「翌日の予定がなくなっちゃって」と。
こういう積み重ねが、
「生活不活発病 震災後に歩行困難」
という事態を招いている可能性がある。
ボランティアがいらないとか支援がいらないとか、
言っているわけではない。
今はもう、災害直後じゃないんだから、
支援をするなら自立支援に重点を置くべきだという話。
ボランティアが「被災者がかわいそう」だからって、
代わりに全部やってあげるようなことは、
「いいじゃないか、被災者が喜んでいるんだから」
といっても、そのせいで被災者の方が、
生活不活発病になりかねないわけです。
短期的に見て被災者を喜ばせ、
ボランティアがそえで自己満足を得ても、
長期的に見て被災者のためにならないのみならず、
マイナスになるような“間違った支援”もあるということ。
逆に先のリハビリボランティア団体「FTF」のように、
「被災者の方、できるだけ体を動かしましょう」
という支援の仕方もある。
なんでもかんでもやってあげることは、
被災者が喜んでも長期的に見たらマイナスなこともある。
そういうことも考えた上で、
支援活動をしなければならないと思う。
・被災地レポート
http://www.kasako.com/110311top.html