経済の仕組みがよくわかる~信用がない人間(国・企業)は高金利~
2012年 01月 20日
みなさんにも大きな影響がある可能性がある、
今年最大の経済トピック、欧州債務危機を理解するには、
「信用がない人間は高い金利で借りなければならない」
というサラ金の鉄則を知る必要があります。
一体、欧州債務危機とは何なのか。
サラ金勤務経験があり、金融ライターのかさこが、
信用と金利という観点でわかりやすく解説します。
サラ金で金を借りてしまうようなろくでなしでなくても、
日本だってアメリカだってヨーロッパの国々だって、
大企業だってみんな借金している。
言ってみれば今の金融資本主義とは、
借金主義といっても過言ではない。
何か事業を行うために金を借りる。
国は税金で借金を返し、
企業は利益で借金を返す。
借金しなきゃ何もできないといっても過言ではない。
金を借りたい人(企業・国)がいっぱいいる以上、
というか金を借りないと経済が成り立たないような、
現在の経済システムである以上、
誰かが金を貸さなくてはならない。
その金の出し手の筆頭が、銀行であり、
機関投資家(生保、損保、投信会社、年金基金など)であり、
個人投資家だ。
当たり前の話だけど、誰だって大事な金を、
他人になんか貸したくない。
だって返してもらえるかわからないからだ。
そこで経済をうまく回らせるためのトリックがある。
金利だ。
100万円貸したら1年後に110万円になって返ってきます、
といわれたら、それだったら貸していいかも、
と思う人が出てくる。
これが金利のマジックだ。
こうして借金主義が経済システムの根幹をなすようになる。
ただここで問題なのは、いくらの金利=利子をつけるべきかという点だ。
100万円貸してもらって1年後に10万円の利子を払うべきか、
5万円の利子でいいのか、20万円の利子なのか。
その金額は悩ましい問題だ。
なぜなら金を借りる立場からしたら、
できるだけ利子は少なくしたい。
でも金を貸す方からしたら、
できるだけ利子が多い方がいいと思うからだ。
金を貸す方と借りる方では利害がまったく逆行する。
そこで円滑に利子を決める仕組みが、
信用力に基づいた市場原理だ。
例えばみなさんが大事な100万円を、
預金にあずけてもたいして増えないから、
誰かに貸して金を増やしたいと思った時に、
日本さんに貸すと1年後に101万円
アメリカさんに貸すと103万円
イタリアさんに貸すと105万円
ブラジルさんに貸すと107万円
ギリシャさんに貸すと200万円
みたいに、貸す相手の「信用力」によって、
利子が異なると、金を貸す相手の選択肢が広がるわけです。
信用力と利子には法則がある。
金を間違いなく返してくれそうという、
信用のある国家・企業・個人は、
誰もが貸したいと思うから利子は少なくなる。
一方ギリシャさんみたいに、借金返す見込みが薄い、
金を返してくれるのか極めてあやいう人には、
利子がいっぱいつく。
返してくれる見込みは薄いけど、
返してくれれば2倍になると思ったら、
信用力がなくても金を貸したいと思う人がいるかもしれない。
このようにして、借金させる仕組みを円滑にしているのが、
金利であり、この金利はその時々の信用力に応じて、
変わるというわけだ。
では欧州債務危機とはどんなことが起きているのか。
今までギリシャさんはそれなりに信用力のある人だと思われていた。
しかもユーロなんていう「同盟」にも加わっているから、
安心じゃないかと。
ギリシャだけだったら信用ならないけど、
ユーロの一員なら安心だろうと、
世界の投資家や金融機関や個人が、
ギリシャにお金を貸していた。
ところがギリシャがいかさま決算をしていたことがわかり、
実は財政は火の車であることが発覚してしまった。
すると「ギリシャはお金を返してくれないかもしれない」
とみんな動揺する。
こうしてギリシャの借用証書=国債価格は大きく下落してしまう。
こうなると誰もギリシャに金なんか貸したくないと思う。
でもギリシャをはじめ世界の多くの国がそうであるように、
借金しては借金を返す自転車操業をやっている。
つまり借用証書=国債を誰か買ってくれないと、
資金がつきてしまい、今、借金している金が返せなくなってしまう。
そこでギリシャさんに誰か金を貸してもいいと思えるように、
金利がどんどん上がる。
このように信用のない人間ほど金利が高いという仕組みになっている。
金利が高ければ儲かるかもしれないから、
多少危険でも貸そうかなという人も出てくる。
ただ問題は、ギリシャだけにとどまっていればいいのだが、
人の心理は「信用不安」「信用収縮」という現象が起きてしまい、
危機が連鎖してしまうことにある。
「ギリシャが借金返せなくなりそうだっていうけど、
他のヨーロッパの国は大丈夫なのか??」
「イタリアとかスペインもやばいんじゃないか?」
本当にヤバイかどうかはわからないけど、
ギリシャが返せなくなりそうになったことで、
他の国もヤバイんじゃないかと不安が広がる。
これが信用不安と呼ばれる現象だ。
「今、ヨーロッパの国に金を貸すのはやめよう」
「いや、ヨーロッパだけじゃなく、
日本やアメリカだってやばいんじゃないの?」
と連想が働くと、みんな金を貸すのはやめようと思う。
資本主義なんて所詮は貨幣の回転率にしか過ぎないわけだから、
金が回らないと景気が悪くなり、
経済が悪くなってしまう。
そう震災だから自粛だとバカなことして、
余計に被災地を苦しめたように、
お金を使わないことは資本主義では悪なんです。
こうしてギリシャ以外の国でも、
そんなに財政状態が悪いとはいえなかったとしても、
お金を貸してくれる人がいなくなってしまう。
みんな借金をして借金を返す自転車操業してるから、
借金できなくなると借金を踏み倒してしまうデフォルトの可能性が高まり、
世界は連鎖的に倒産が増えるとこういうわけだ。
さらに危機をより深刻化させる要因がある。
ヘッジファンドと格付け会社だ。
ヘッジファンドとは投資家からお金を集めて、
代わりに株式や債券などに投資して利益を上げようとする組織のこと。
ヘッジファンドがなぜ危機に拍車をかけるかというと、
危機を利用して儲けようと、
国債を売り浴びせるといった行動をとる可能性があるからだ。
投資の世界でやっかいなのは、
投資した商品が下がっても儲けられる手段があるということ。
投資に詳しくない人はわからないと思うが、
一般的には値上りしそうな株を買って、
値上がったら売って儲けるわけだけど、
それだと賭場が盛り上がらないから、
下がる方に賭けて実際に下がったら儲けられる取引もできるのだ。
だから危機に乗じて、下がると見込んだヘッジファンドなんかが、
ばんばん売り浴びせれば、どんどん国債価格は急落し、
金利は上がってしまい、危機救出が困難になってしまう可能性もある。
そしてもう1つ、危機を深刻化させるのは格付会社だ。
格付会社とは、借金たれの馬鹿者たちの信用力を、
ランキングしてくれる会社だ。
例えば日本はAだけどギリシャはCでブラジルはBとか、
トヨタはAだけど別の会社はCだとか、
そんな風にして信用力を投資家に代わってランキングしてくれる。
ところがこの格付が危機には役に立たないことが、
もうこれまで何度となくあった。
なぜかというと所詮、格付は後付けだからである。
格付のいかさまについて詳しく書かれた本、
「格付けの深層」森田隆文著には、
1997年~1998年のアジア通貨危機についてこう書かれている。
多くの市場参加者や政府当局は、この時の格付会社の対応に疑問を呈した。
最大の批判は、格付会社は危機が起きるまで事態をまったく予測できず、
起きた後は過剰反応として格付けを急激に下げすぎたというものであった。
結局、後付けなんです。
本当は財務内容が悪いのにそれに気づかず、
高い格付を格付会社がつけてしまい、
それを鵜呑みにした投資家がばんばん投資し、バブルになるが、
実は財務内容は悪かったということがバレると、
あわてて格付会社は格付を大幅に下げる。
するとそれを見た投資家が、
「こんなに低いのならヤバイ!」と思って、
誰も買わなくなり、余計に信用力が悪化してしまう。
ちなみに2008年リーマンショックの発端になった、
1年前のサブプライムローン(信用力がない人に貸し出す住宅ローン)危機も、
この格付会社が危機に拍車をかけた。
このろくでもないローン商品をまとめた投資商品を、
格付会社は高い評価をしていたために、
多くの投資家が投資した。
ところが、格付会社の読みが甘く、
住宅価格が思うように上がらなくなったり、
信用力のない人間に貸した住宅ローンだから、
当たり前の話だけど返せない人が増え、
結果、あわてて格付会社が、
サブプライム関連の投資商品を大幅に格下げし、
危機が大きくなったという混乱を招いたのだ。
こうして格付会社の後追いぶりにムカついたイタリア政府は、
昨日、格付会社「スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)」
のミラノ事務所を家宅捜索。
「格付け会社が正当でない評価をして市場を操作した疑いがある」
と捜査に踏み切ったのだ。
上記が本当かどうかはわからないが、
格付けを下げられた方にしたら、
余計に金を借りられなくなるからたまったものではない。
こうして今の経済システムは借金至上主義で成り立っている。
そしてさらにこの経済システムがミソなのは、
借金を返せなくなったら、国家だろうが企業だろうが個人だろうが、
返さず踏み倒していいことが認められていることだ。
するとどうなるか?
金を借りても返さなくていいなら、
借金しまくり、豪華庁舎をつくったり、
手当てをいっぱい作って公務員や官僚だけが儲かる仕組みを作ったり、
いりもしない原発やダムなどを、
学者やマスコミを使ってウソのデータで塗り固めて、
必要性を無理やり作り出して、
談合している企業とつるんで税金使ってボロ儲けする、
といったことが行われるようになった。
ギリシャなんかまさにこれである。
借金は踏み倒していいから、
ムダ使いに歯止めがかからない。
しかもそれでおいしい目にあえるから、
気にせず借金しまくる。
こうして借金踏み倒せることによるモラルハザードが起き、
先進国の借金は膨れ上がっているのに、
官僚や政治家や経団連のような企業団体は、
自分たちが儲けることばかり考え、
借金のツケはすべて国民の増税に負わせればいいという、
社会になっている。
これが今、世の中に起きている先進国債務危機の真実である。
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