常識と前例に縛られるから衰退する
2012年 02月 17日
感謝される仏壇営業マン。
職人芸のためバカ高い仏壇制作を、
マニュアル化して安価に――。
テレビ東京「カンブリア宮殿」をたまたま見た。
お仏壇のはせがわの話をやっていた。
そこには常識破りのエピソードがあった。
1963年に500人近い死亡者が出た三井三池炭鉱爆発事故。
その3日後に現会長の長谷川氏は炭鉱にいって、
遺族名簿をもらって仏壇の営業に行った。
「人の不幸を商売の種にする気か!」
「不謹慎にもほどがある!」
しかし遺族の支えに仏壇が必要だと訴え、
逆に遺族に感謝されたという。
常識で考えれば絶対にやらない。
しかし人のためになるという信念があって、
それで接して営業したから、
そんな「不謹慎」なことでも感謝される。
人はあまりにも常識や慣例に捉われすぎている。
だから閉塞感があって何事も変えられないまま、
衰退していっちゃうんでしょう。
今の日本のように。
アップルなんて音楽業界の破壊者なわけです。
既得権益の音楽業界からは大ブーイング。
ネットで音楽売ったらCD売れなくなるじゃないかと。
ケータイ音楽プレイヤーに電話つけちゃえって発想もすごい。
でもこうした常識や前例に捉われない発想こそが、
便利で楽しい新たな社会を作る第一歩になっているわけです。
当時、仏壇は高級車を買うぐらい高かった。
長谷川氏はあまりにも仏壇は高すぎると思った。
その理由は職人芸。
仏壇作りは設計図もなく10年以上経験を積んだ、
職人芸で作るため、
職人が少なくべらぼうに高い値段になる。
そこで長谷川氏は、仏壇を買ってきて、
徹底的に分解・分析し、
誰でも作れるような設計図を作った。
これにより職人でなくても仏壇が作れるようになり、
大量生産、安価な価格で仏壇が買えるようになった。
仏壇は高いのは当たり前。
そう思ったら何も進歩はない。
客は高い値段で仏壇買うしかない。
でもそこに工夫を凝らせば、
安く作ることは簡単にできる。
常識や前例を疑い、やり方を変える。
だから便利になる。
ところが今の日本はどうだ。
別に政治家や官僚や大企業だけでなく、
年配の老害だけでなく、若い人も含めて、
常識や前例を疑おうとしない。
それは「仏壇は高いのが当たり前」という思い込みと同じで、
そこから「安くできないだろうか」と考えない。
いや考えると価格競争になって、
自分の利益が減っちゃうと考えるから、やらない。
結果、世の中全体が閉塞感に満ち、
不満だけどその商品やサービスが当たり前だと思い込んで、
あきらめてしまっている。
だから日本は衰退している。
常識や前例なんて変わるもの。
というか変えなければならない。
いつまでも過去の常識にしがみついているから、
時代の変化に対応できず、問題が山積みになり、
にっちもさっちもいかなくなってしまう。
昨日のブログで「福島老人化計画」の話を書いたら、
mixiのコメントで、
「不謹慎」だとか「ブラックユーモアにしてもひどい」とか、
「若者がいなきゃ無理」とかいっぱい書いてあって、
思わず笑ってしまった。
一体、「福島老人化計画」のどこがひどいブラックユーモアなのか。
今、福島市や郡山市なんかあり得ない高い放射線量なのに、
避難区域に指定もせず平然と暮らすことを強いている現実の方が、
私のブログの内容よりもはるかに笑えないブラックユーモアだ。
ところがそれが「当たり前」になってしまっているため、
政府の政策に何の疑問も持たず、
今の状況が当然と思い込んでいるから、
私の話がブラックユーモアに移る。
どっちが狂っているか?
狂人とは絶対的なものではなく相対的なもので、
こんなバカ高い線量でも福島に暮らすことが当たり前、
と思っている人が世の中に多くいれば
私の話は不謹慎な狂人話になる。
ようは今の常識を信じている人数で、
狂っているか狂っていないかが決まる。
客観的に見て狂っているかはともかく。
だいたい福島直下の地震が起きる危険性が説かれていて、
昨年1年間の都道府県別地震回数でも、
ダントツにムチャクチャ多いのが福島県なんだから、
もしまた地震が起きて原発がどうにかなったら、
さらなる被曝にさらされることは明白だ。
でもやっぱり人は常識と前例にとらわれ、
「ただちに影響はない」という言葉を信じ、
目の前で行われている福島に人が住んでいるという現実を、
常識と思うから、私の話が不謹慎に思えるのだろう。
そして昨日の話のメタファー(隠喩)は将来の日本そのものの話。
若い人らは60歳になって年金もらえるとでも思っているのだろうか?
若者だけでなんてやっていけない?
今の日本はそうなろうとしている。
みんな老人ばっか。
老老介護なんてもうすでにあちこちで起きている現実の問題。
昨日のブログは単に福島の話なのではなく、
少子高齢化が進み老人だらけとなった、
まったく明るい未来のない日本において、
あれぐらいの発想の転換をして、
思い切った政策をしない限り、
誰も年金なんかもらえないし、
70歳だろうがバリバリ働かなきゃ生きていけない、
そういう時代になってしまうというお話だ。
単に福島がかわいそうなんて言っている場合じゃない。
日本全体の問題だ。
常識や前例で物を考えるから、
社会が息詰まっている。
にもかかわらず自民党も民主党も、
というか日本の官僚が、
前例の枠組みを維持しようとするから、
消費税増税による年金保障みたいな話しか出てこない。
そんなの無理でしょ。
人口ピラミッドを見れば。
そこで橋下さんみたいな人が出てきて、
年金掛け捨て制度といったような、
常識破りの政策が出てくると、
みんな常識と前例でしか物を考えられないから、
否定的な意見になるわけです。
じゃああんたそれ否定して、
今の年金制度が維持できるわけ?
消費税増税30%にしたって、
人口ピラミッドがおかしくなっているんだから、
いくら増税したって足りないでしょ、
批判するなら対案あるのって話なわけですよ。
今までのやり方を変えていかなければならない。
小手先の改革じゃなく根本的に。
時には常識を疑うような政策をしない限り、
息詰まっているわけですよ、日本は、あらゆる面で。
それを既得権益よろしく、
不謹慎だ!そんなの無理だ!そんなのはできない!
ってわめいたところでじゃあどうすんのって話でしょう。
でも思う。
多くの人は変化を恐れている。
変わるのが恐いのだ。
なぜなら自分の既得権益が失われてしまうかもしれないから。
常識と前例の延長線上でしか物を考えられず、
そこからはみ出たものは理解ができないから。
常識を盾にしていれば道から外れず、
安全だと思い込んでいるから。
でも時代は変わった。
日本は変わった。
危機感がなさ過ぎる。
感情論に支配されて客観的に福島の情勢を見れない。
閉塞感漂う日本が衰退から脱して、
再び活性化するには、
事故が起きたのに仏壇を売りに行くような営業マンが必要だし、
高いと信じ込まされていた「仏壇」が、
実は安くできる方法があることを考える必要がある。
既得権益はあなたです。
とかさこマガジン2で書いた。
常識と前例というバカの壁に捉われて、
今までどおりにやっていればきっとどうにかなるという楽観論は、
2011.3.11で捨てるべきだ。
でないと激動の時代は生きてはいけない。
常識と前例に捉われず、変化を恐れてはいけない。