客に損させ罪悪感にさいなまれる投信販売員

「お客さんに何百万円も投資してもらったのに、
半値以下にさせて大損させてしまった・・・・・・」
営業成績優秀な投資信託の販売員ほど、
「客に悪いことした」と悩んでいる現状がある。

2005年、世界全体がバブルに浮かれ、
日本もその煽りを受けてバブル真っ盛り。
株式投資をはじめ様々な投資が次から次へと登場。
「貯蓄から投資へ」という大号令、
「預貯金が超低金利だから投資をすべき」というムード、
「投資は経済の勉強になる」というでまかせ、
「将来インフレになり、投資をしないと資産が目減りする」という脅し、
さらには「年金不安の今こそ自分年金づくりを」
というキャッチフレーズのもと、
多くの人がたいした投資知識もないまま、
金融機関の手数料稼ぎのために、
言われるがままに金融商品を購入していった。

その中でも圧倒的人気を誇ったのが投資信託。
「毎月お小遣いがもらえる」感覚にしてくれる、
毎月分配型投信が「年金のたしになる」と、
年金受給者に大受けし、急速に残高を伸ばしていった。

しかしみなさんご存知の通り、
2007年のサブプライムショックや2008年のリーマンショックで、
ほとんどの資産は半値以下になってしまった。

いや今は大分戻ってきているはずだが、
日本人は不幸なことに円高でダブルパンチを浴びた。
投資している海外株式や海外債券の値が、
ショックから回復してきたとしても、
空前の円高で為替差損だけで2~3割やられてしまっている。
しかも最近では欧州債務危機が騒がれ、
依然として市場は低迷気味。
もし1000万円を様々な投信に投資していたら、
今は多分500万円か600万円ぐらいになってしまっているだろう。
超低金利の預貯金に預けておけば1000万円のままだったのに!

いやでも金融機関は客が損しようが、
手数料が入ってくるから「そんなの関係ねえ」。
投資は自己責任だから投資した人が悪い。
もちろんそうなのだが、金融機関にだって善人は多くいる。
それが直接投資家に投資信託を販売した販売員だ。

販売員は金融危機前の投資の常識を信じ、
お客さんのためを思って素晴らしい商品だと思い、
お客さんに投資信託を勧めていた。

「預貯金だけじゃ楽しい老後は過ごせない。
資産分散しなければならないが、
気軽に投資ができる投資信託はいかがでしょうか」と。
そして心からお客さんのためを思って販売した人ほど、
投信を売りまくり、優秀な成績を上げた。

ところがわずか数年で潮目は変わり、
あっという間に半額以下。
それでも投信販売員たちは信じていた。

「お客様、あわてて狼狽売りしたらダメです。
きっと値段は回復しますから。
10年、20年の長期運用していれば、
きっと必ず回復しますから」と。

しかしどうもこの「長期投資」というのが、
実はでたらめなんじゃないかと販売員も気づき始めた。
それは先進国の債務危機問題で、
この先、先進国が大きな成長は期待できないこと。
また今後の成長が期待できる新興国は、
すでに株価がバブルだったため、
成長はしても株価が上昇するかはわからないこと。
投資の金科玉条だった「長期投資」が、
実はもはや通用しない世の中になってしまったのではないかと、
気づいてしまったのだ。

さらにもう1つ。
いろんな投資信託を組み合わせて買えば、
ショックに強く、急激には下がらない、
というセールストークを駆使し、
それを本当に信じていた。
ところが実はその「分散投資」という常識も崩れてしまった。
すべての資産が連動し、
下がる時はみんな下がってしまい、
分散効果が発揮できなくなったことを、
優秀な販売員たちは気づいてしまった。

そして今、客に大損させてしまった、
優秀な販売員の一部の人が罪悪感にさいなまれている。
「いい商品だと思って販売したのに、
お客さまのためになると本気で思ったのに、
私はなんてことをしてしまったのだ・・・」

まじめで優秀な販売員ほど、
自分たちがやってきた仕事に疑問を持ち、
客に損をさせてしまったことを、
自分のせいだと責めて、
今、お客さんにどう接したらいいのか、
何を勧めたらいいのかわからず、苦悩をしている。

投資の常識はあっという間に180度、変わってしまった。
誰のせいというわけではない。
でも売った販売員はお客さんに販売時に、
「ありがとうね」といわれながら、
結果、感謝の気持ちを裏切ってしまった。
「客の自己責任だ!」と言い放てる薄情な輩はいいが、
優秀な販売員ほどそんなことは思わない。
だから自分を責め、仕事の意義が見い出せず、
うつな状態に陥ってしまっているのだ。

商売って基本的に相手を喜ばせて対価を得るもの。
だから本来なら売った側も買った側も幸せになるはずだ。
しかし客が損をしても売った方だけ儲かる仕組みでは、
ハッピー・ハッピーな関係になれない場合もある。

でもそういう商売はもう続かないと思う。
投信バブルは崩壊し規制が強化され、
というかはるかに手数料が安く、
流動性もあるETF(上場投資信託)買えばいいんじゃん!
みたいな話になって、投資信託はぐんと減る可能性大。

でもETFは日本では流行らない。
なぜなら金融機関に販売手数料が入らないし、
運用会社の存在意義もなくなってしまい、
これまた仕事が減ってしまうから。
つまり金融機関の食い扶持を確保するために、
大損させた商品をバカ高い手数料で売って、
それに代わる安い商品を勧めようとしないのだ。

このようにして既得権益ができると、
消費者のためにならないことが平然と行われるようになる。
でも直接顧客と接している販売員は、
良心の呵責にさいなまれ、
商品そのものに疑問を持ち始めた。

しかし客のためにならない商品は、
一時のバブルで儲かったとしても長くは続かず、
必ず市場原理で淘汰されるだろう。
今、日本で淘汰されないのは、
はっきりいうと販売員も投資家もバカだから。
でもそれに気づき始めている人も増えている。

投信バブルはもうまもなく終わるかもしれない。
いや、もう終わっているかもしれないが、
既得権益を持つ金融機関は、
自分たちの食い扶持確保のために、
手を変え品を変え、客を「騙そう」としている。

・分配金に目がくらんで大損する投資信託
http://kasakoblog.exblog.jp/17367789/

by kasakoblog | 2012-02-19 00:43 | 金融・経済・投資

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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