グローバル化を阻む国家主義~失業対策と就労ビザ~
2012年 02月 27日
もはやビジネスもボータレスになり、
「いずれ国家はなくなるかも」という話を以前に書いた。
しかし未だに人々のアイデンティティは、
国家がベースとなっており、
無意味とも思える規制がはびこっている。
「地元の人が就職できなくなるから、
外国人には就労ビザをあげない」
昨日、パリでたこ焼き店を開店した、
日本人の話をテレビで放送していた。
開店したオーナーは日本人女性だけど、
旦那さんがフランス人だから問題はないのだが、
店の日本人スタッフはみなワーキングホリデーのため、
その期間が過ぎると日本に帰らなくてはならない。
店の中核となっている日本人スタッフ1人を、
就労ビザに切り替えようとするのだが、
失業率が高く、外国人にはなかなかビザが降りないらしく、
100万円あまりお金を注ぎ込み、
なんとか就労ビザをとったといった話をしていた。
先日、元Jリーガー林一章さんが、
小学校で講演をするのでその取材に行った。
その際、林さんが言っていたのもビザの問題。
ブラジルにサッカー留学し、その実力を認められ、
ブラジルのプロチームからスカウトされたのだが、
やはり失業率が高い国で外国人を雇うとは何事だみたいな、
そんな風潮があるため、結局ビザは難しく、
ブラジルを去らざるを得ないという話をしていた。
日本でも外国人労働者に対する風当たりは強い。
中国人、韓国人ほか、アジア人が、
日本に来て安い賃金でしかも、
ガッツあふれる働きぶりをされてしまうと、
日本人の就職口が減ってしまう。
「治安が悪くなる」といったもっともらしい理由をつけて、
外国人の就労ビザというのは日本も厳しいのだと思う。
そんなの当たり前でしょ、と思うかもしれない。
でもどうだろう?
これを県に置き換えたらとっても変な話になる。
例えば東京国があったとして、
東京では景気がよくなく、失業率が高いので、
地元の人を最優先して雇いたいので、
地方から働きに来る県外の人には厳しい審査を課し、
県外の人が東京で働くのは困難だという話を聞いたらどうだろう?
あまりにも滑稽ではないか。
でもおかしいなと思うのは、
県だと滑稽な話になるのに、
国だとみな急に閉鎖的になること。
なんだかんだいって、どんな国でも、
きれい事をぬかしたところで、
れっきとした人種差別があり、
違う人種は受け入れがたいというのが、
意識の根底にあるのだろう。
同じ人間なのに。
でもどうだろう?
失業対策で外国人を追い出して、
その国の景気が回復するのか。
まあしないだろう。
それは先進国を見れば明らかだ。
そうやって労働市場の競争原理が抑えられることで、
自国の小さなパイを同じ国同士で奪い合っている、
いわば縮小均衡、低レベルの争い、
そして外国人労働者と競争せずに済む、
安穏とした気持ちでいるから、
大企業志向の寄らば大樹の若者ばかり、
一度就職してしまえばその席を頑として譲らない老害ばかりで、
結果、国は衰退し、余計に失業率が悪化するという悪循環になっている。
あらゆる意味でグローバル化が進行している今、
外国人に対して就労ビザを厳しくすることが失業対策なんて、
後向きな政策はどの国でもやめたらいいのにと思う。
フランスで働きたい日本人がいるなら、
フランスで働かせればいいじゃないか。
ブラジルで働きたい日本人がいるなら、
ブラジルで働かせればいいじゃないか。
日本で働きたい中国人がいれば、
日本で働かせればいいじゃないか。
労働市場の競争化によって、
人々が切磋琢磨しあえば、
経済は活性化するんじゃないか。
そもそも外国人がその国に住んでもらえれば、
その人はそこでお金を使うわけだから、
単純に経済規模の拡大にもなる。
優秀な外国人が商売に成功してビジネスを拡大すれば、
現地の人の雇用だって生まれるかもしれない。
そうやって人は目先の既得権益に縛られ、
自分を守るための規制にがんじがらめになることで、
実は経済も社会も閉塞させ、
結果、長期的には衰退の道を選んでいるという、
最悪の選択肢を選んでいる。
でも最近は日本でも外国人開放の動きもあるようだ。
何年間も使えない英語を教えて、
ろくに英語が話せない日本人なんかより、
英語も話せて母国語も話せて、
日本語も話せて、頭脳も優秀で、
日本人なんかよりはるかにアグレッシブな、
外国人を積極的に採用しようとする企業も増えている。
企業からすればダメな地元の人をとっていたのでは、
いずれその企業は衰退してしまうという危機感があるからこそ、
日本人だろうが外国人だろうが関係なく、
企業の成長にとって必要な人材をとろうという動きは、
今後ますます加速するだろう。
こうして次第に労働市場もボータレスになっていく可能性がある。
逆に日本人だってチャンス。
閉塞感あふれる日本に固執する必要はなく、
いろんな国で働けるチャンスが増えていけば、
この先、もう一度起こるであろう東北大地震によって、
仮に福島原発がまた大変なことになり、
東京圏が立入禁止の区域に指定されるような事態になったとしても、
選択肢が海外まで広げられれば、
財政破綻必至、年金払い損の日本にいる必要はない。
でもそのためには真の実力をつけなくてはいけない。
海外で働くというのは単に言語面だけでなく、
文化面などで多大な苦労がある。
ただ国民の選択肢が日本以外にも増えれば、
万が一、日本がおかしくなった時に、
自分の身を守ることができる。
ここ数十年で真のグローバル時代がやってくると思う。
そんな私もそうした時代に備えて、
昨年、英語ブログをはじめて、
海外で写真を売る布石を作ろうと思っていたのだが、
震災が起きて英語ブログなんてやっているより、
まず何より被災地取材だと思って、
英語ブログはまったく放置されたままだけど、
ちょっと復活させないといけないなと思っている。
今はすぐビジネスにつながらなくても、
10年先、20年先を見据えた種まきもしておかなくてはならない。