被災地取材本「検証・新ボランティア元年」発売!
2012年 03月 09日
2011年に何度となく被災地に赴き取材した内容をまとめた書籍、
「検証・新ボランティア元年~被災地のリアルとボランティアの功罪」
(共栄書房、笠虎崇著、1500円+税、四六判、234ページ)が、
2012年3月11日についに発売となりました!
アマゾンでは予約開始スタート、書店では3月15日前後、
最も早く手に入れたい方は3/11の鎌倉プリンスホテルの写真展にて、
50冊限定ですが、書籍の販売を行います。
本を出すのはもう17冊目、
写真集をのぞいて文章の本では6冊目になりますが、
この本は私にとって大変意義深い本です。
一言でいうなら「ジャーナリストかさこの1冊目」という位置づけ。
これまで文章の本のほとんどがサラ金本。
サラ金本はそれはそれでおもしろいのですが、
それ以外の本も出したいなと思っていた。
私を古くから知り、著作やブログをチェックしてくれている、
出版アドバイザーの臼井正己さんが、
水曜日のニコニコ生放送の際、
今回の私の本を見て、こんな風に評してくれた。
「これぞ、かさこさんらしい本!
ブログのトーンそのままで、賛否両論あり、毒ありの本。
かさこさんにはこういう本をどんどん出してほしい。
やっとかさこさんも自分らしい本を出せるステージにたどり着いた」
まさにその通りだなと思う。
今回、本を出すきっかけになったのも実はサラ金本の話から。
2010年に出版した「サラ金全滅~過払い金バブル狂乱」の出版社である、
共栄書房の社長から、最近のサラ金業界について、
またいろいろと調べてほしいという相談を年末に受けた。
その際「かさこさん、最近はどんな活動してるんですか?」と雑談になり、
被災地に度々取材に行っていましたという話から、
「被災地の本はどうですか?」という話になり、
年末に被災地取材関連のブログ記事をプリントアウトし、
出版社に見てもらったところ、
「これはすごい!かさこさん、随分と腕をあげましたね。
しかもこのような視点で被災地の話を書いたものは珍しい。
きっとネットにアップした時には反発もあったでしょうが、
議論が沸き起こるような本こそいい本だと思います。
ぜひ出版しましょう」という話になり、
どうせなら311に間に合わせたいという話になり、
急きょ、今年に入って再編集作業にとりかかることになった。
本の内容はブログに載っているものをベースにしている。
ブログをそのまま書籍化するのは簡単ではないかと思っていたが、
1冊の書籍として再構築するにはかなりの労力を費やした。
ブログはリアルタイム性があり、すぐに記事がアップされていった。
それはそれで大変な意義があったと思うが、
書籍化するにあたり、それを単に時系列にそのまま並べたところで、
なんともしっくりこない。
記事が書かれた時の世の中の震災への捉え方や雰囲気は変わっている。
震災から1年たった今、読んでもおもしろいもの、
今の世の中の雰囲気を反映したもの、
そうしたことを考えた上で、どの記事を書籍に載せるかの取捨選択と、
それをどのような章立てにして本を構成していくかが、
ものすごく難題だった。
そのため私は取材してはブログに記事を上げる、
ということを繰り返していたので、
全体像なく客観的に記事を見ることができない。
そこで出版社の編集者が10万字以上に及ぶブログ記事を読み、
必要なもの、不要なものを選別し、
章立てにわけて構成を考えていただいた。
それでやっと本としてのアウトラインが見えてきた。
編集者の提案通りの章立てにすれば私の負担はなく、
すぐに本を出せたが、今、読者が読んで、
この章立てでいいのだろうか、
今の被災地の現状を考えた上で、
もう一度、再構成し直した方がいいのではないかと考え、
編集者から提案していただいた章立てをベースにしながらも、
さらに順番を入れ替えたり、章の区分けを考えたりして、
そこからやっぱりいらない記事と、
やっぱりここに必要な記事を復活させたりして、
ブログ記事のばらばらな感じとは違い、
1冊の書籍として、1冊のストーリーとして読めるようにした。
そしてできあがったこの本。
私にとってこの本が画期的なのは、
もともと書籍にするつもりで、
取材をしていたものではなかったこと。
3・11というとんでもない国難が訪れた中で、
私はいくばくかの義援金だけでいいのだろうか、
何かすべきではないのかという思いを、
3月からずっとくすぶり続けていた。
一度は4月に泥かきのボランティアに行こうと思ったが、
急な腹痛になって取りやめ。
でもきっとそれは今にして思えば、
「あなたにしかできないことをしなさい」という、
メッセージだったように思う。
こうして私は被災地に個人取材という形で、
4月から度々訪れるようになった。
でも私には疑問があった。
カメラマンが被災地の役に立つのだろうか?
がれきの写真を撮って何になろうか?
現に私が被災地で写真を撮っていることに、
批判的な意見も聞いた。
しかしそれは被災地に行っていない人の、
机上の空論であることがわかった。
あまりにも甚大な被害だったために、
マスコミで取り上げられない地域とそうでない地域があり、
取り上げられない地域はむしろ、
自分たちも悲惨な状況にあっていることを、
多くの人に知ってほしいと考えていた。
3月に千葉の液状化写真を撮ってアップしたら、
千葉の人から感謝のメールがきた。
「被害を受けているのは東北だけじゃない。
千葉にも目を向けてほしい。
写真で取り上げてくれるのはありがたい」と。
福島でも被災者からこんな風に勇気づけられた。
「福島=原発ばかりで、おらたちみたいに、
津波被害にあって大変な人もいることを、
もっともっとアピールしてほしい。
どんどん写真を撮って、宮城や岩手だけじゃなく、
福島も津波被害にあって大変だということを知ってほしい」
と言われた。
また私としてはもう1つ、ライターとして、
何か被災地に役に立つことができるのだろうかという疑念もあった。
被災にあっている人に県外の大手メディアでもない個人ライターに、
話なんかしたくないのではないか。
いやがられるのではないかと。
しかしそれも被災地には行ったことがない机上の空論だった。
被災者の人は誰かに話を聞いてほしい、
という思いを持った人が多かった。
話すことでそれはストレス発散にもなり、
またもっとこんな支援があったらいいというはけ口になった。
しかも私はボランティアでもなく大手メディアでもない、
話をするには都合のいい存在。
“我慢強い”東北人が普段あまり文句を言えない本音を、
私のような存在に多くの人が話してくれた。
美談ではない被災地の現状をブログで書いていると、
「この人なら被災者の本音の気持ちをわかってくれるかも」と、
何人もの被災者の方から共感します、もっと発信してください、
というメールをいただいた。
ライターとして、ブログで記事を発信することが、
誰かの役に立っていることを次第に実感することができた。
そんな形で2011年は普段は会社の仕事をしながら、
被災地取材に駆け回った。
福島いわき市の避難所支援をしていた、
東京ボランティアグループから、
いわき市の避難所に絞った本を、
夏ぐらいに出したいという話もあったが、
めまぐるしく変わる被災地の情勢に、
本をまとめているより、
ブログ記事でリアルタイムに発信することや、
いわき市だけでなく他の被災地も取材をした方がいいと判断し、
本にするという話はなくなった。
そのため私も被災地取材を本にするという頭はなかったのだが、
1年がたち、状況が変わってくる中で、
この記録をきちんと書籍として、
まとめることに意義があるのではないかと考え、
311という区切りに合わせて本を完成させた。
311が起きて今、自分が何をなすべきか、
会社の仕事なんかしていていいのだろうかと思い悩みながらも、
会社と並行して被災地取材を自腹で勝手に行っていた。
でもそうした個人ジャーナリズムが何らかの社会の役に立ち、
そして後から“仕事”という形で、
取材経費のいくばくかが戻ってこれるのなら、
私にとっては持続的にこうした取材をすることができるようになる。
仕事って与えられてするものではない。
仕事だから仕事をするものではない。
今の社会の中で何が必要とされているのかを考え、
自分のスキルが役立つもの、自分の興味があるものに、
力を注いでいく。
それが本来の「仕事」なのではないかと。
そのような意味で「ジャーナリストかさこ」の、
記念すべき第一作目といってもいいのがこの本です。
私にとっては非常に感慨深い作品であり、
今まで以上に力作となっていると思います。
本の内容はブログ記事がベースなので、
「もうブログで読んだからいい」
「ブログで無料で読めるなら買う必要はない」
と思う方がわざわざ買っていただかなくて大丈夫ですし、
本の発売を機にアップしているブログ記事を、
閲覧できないようにするつもりはまったく考えていません。
ただブログ記事を1冊の書籍にまとめて通しで読んでみると、
それはそれでまた違った発見や気づきがあった。
書籍化にあたり、2月にもう一度、
震災関連のブログ記事を自分で読み直し、
構成を入れ替えて2月下旬にほぼ完成した原稿を通しで読んでみると、
自分が取材し、自分で書いたにもかかわらず、
「こんなことがあったんだ」
「この時はこんな状況だったのに今は随分変わったな」
といった発見があった。
書籍の場合は、ブログ記事のばらばらな感じとは違い、
1つのストーリーに沿った展開で読める一貫性、
10万字以上に及ぶ文章でもそんなに疲れず読める視認性、
記録や資料として保管しやすい保存性、
書店という違った流通経路で私のブログを知らない人が、
私の記事を読んでもらえる可能性、
そして何より手に触れて、
物体として存在感があります。
私にとっては非常に意義深い作品。
もしよかったらアマゾンなどでご購入いただければうれしいです。
またボランティア関連の方々で、
私のブログをあまり知らない方などに、
勧めていただければうれしく思います。
<本書の内容>
はじめに~絆(きずな)ではなく歪(ひずみ)が見えた大震災
第1章 被災者のリアル
第2章 見えない恐怖に翻弄される被災者
第3章ボランティア迷惑論のウソ
第4章 自己満足ボランティア
第5章 まとまらない被災地、復旧にこだわる被災者
第6章 始まった自立支援のかたち
あとがき 3・11を教訓にし、日本が変わる契機に
・アマゾン
・bk1
・3/11:被災地フォトエッセイ写真展の概要
http://kasakoblog.exblog.jp/17451939/
・3/20:出版記念パーティー&講演会&オフ会の概要
http://kasakoblog.exblog.jp/17471046/