ゴールがないからがんばれない~311から1年
2012年 03月 10日
震災によって日本は変わると思ったが、
1年たって失望の方が勝っている。
まだこんなことやっているのかと。
変わる機運はどこへ行ってしまったのだろう?
絆美談や復興美談にうんざりしている被災者。
「がんばろうって何をがんばればいいの?」
絶望的な状況の中で、被災もしていない人に、
上から目線で同情されて支援を振りかざされても、
ただ虚しくなるだけだ。
また被災地に同情することが、
人気とりになると思っているのか、
政治も行政も長期的ビジョンなきまま、
単なる復旧、単なるバラマキだけを繰り返している。
困難な環境下で人ががんばれるのには、
明確なゴールが必要だ。
どんなに険しい山だとしても、
山の頂上に登りつめれば、
素晴らしい景色が広がっていると思うからこそ、
人はどんなに苦しいことにも耐え抜き、
歯を食いしばって山を登っていくことができる。
しかし今の被災地や今の日本にはゴールがない。
今は苦しくてもがんばったら、
将来、こんなに明るい未来があると思えば、
みんながんばれるけど、
被災地にも日本にもゴールがない。
というよりどの山を登るのかも決まっていない。
そんな状況で、がんばれだの増税だの働けだの、
何だのって言われてもがんばりようがない。
がんばっても山に登れないのだから。
美しい景色が待っているわけではないのだから。
被災地の復興、日本の活性化には、
長期的ビジョンに基づくゴールが必要だ。
そのゴールさえしっかり設定すれば、
日本人はどんなに苦しくてもがんばるだろう。
ただ短期的な視野でしか物を見れず、
感情論でしか動けないのは、
政治や官僚や企業が悪いという以前に、
一人一人が悪いんだと思う。
とりあえず今が良ければそれでいい。
どこかでどうにかなるやと楽観的に構えている。
変化を恐れて変革者に対しては抵抗勢力になり、
批判ばかりして出る杭はうつわりに、まったく対案なく、
ただ一時の感情論に突き動かされて「正論」を振りかざす。
でも、日本は変わった。
そして、世界も変わる。
変わらないのは自分だけ。
それでは今はよくても希望はない。
だってどこの山に登るかも決めておらず、
それどころか苦しいことはしたくないから、
今までの山の周辺をぐるぐるぐるぐる回っているだけ。
それで前に進んでいるような気になっているけど、
結局はなだらかな下り坂をおりているに過ぎない。
やがては谷底へ落ちていく。
そんな状態ではないか。
100年に3度も大津波が来ており、
その度に多数の死者が出て、
多数の家屋が倒壊しているにもかかわらず、
また元の町を復旧してしまうことが復興なのか。
もともと過疎化していて、少子高齢化も進み、
跡継ぎもいない一次産業を、
莫大な金を注ぎ込み、今まで通り復旧することが復興なのか。
原発危機はまだ何も終わってはいないのに、
除染と称して元の町に住むことが復興なのか。
潰れそうな中小企業にただ金を融通すれば、
その企業は潰れないのか?
失業者に金だけバラまいて失業者の生活再建ができるのか?
円高だから為替介入すれば問題は解決するのか?
自動車業界を救うためにエコカー補助金を延長すれば、
国内で自動車が売れるようになれるのか?
10年先、20年先、30年先の町や社会をイメージして、
そのために今、何をすべきかという視点がなく、
ただ元の町に住みたいという感情論だけで、
「復興」を進めれば、また地震・津波・原発事故で、
同じ過ちの繰り返しをするだけだろう。
同じ過ちを繰り返すのは人災だ。
天災のせいなんかじゃない。
だって被害があることが十分想定内なのだから。
今がかわいそうだからとか、
今はこうしたいからとかではなく、
10年、20年先の理想の自分の姿や町の姿をイメージして、
そのために、今、何をすべきで、
今、何をすべきでないのか考えて行動しなければならない。
それが311の教訓のはず。
311以前のようにただ漠然として過ごしていれば、
なんとなく今をやりすごせる時代ではなくなった。
一人一人が自分の登るべき山を決め、
その山に登ったらこんないい景色が広がっていると、
イメージしてから行動しないと、
311の教訓を生かせない日本は、
また自然災害をきっかけとした人災の拡大により、
ますます疲弊・衰退していくだろう。
日本は変わった。
あなたは変わった?
既得権益はあなたです。
過去の常識を見つめなおし、
長期的ビジョンを持って、今を生きよう。
さすればどんなに厳しい状況でも、
10年後、20年後にきっと笑って暮らしているはず。
311の教訓を忘れてはならない。
それが生き残ったものの使命であり、
来たるべき災害が起きても、
被害を最小限にする知恵だと思う。
経験を知恵に変えない限り、
日本は再び人災を繰り返す。
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