社員に対する上司の評価だろう。
「俺はこんなに仕事をしているのに評価が低い」とか、
「なぜあいつばかり評価するのか」といったことはどこの職場でも起こる。
ダメな上司の典型は上っ面でしか仕事を評価できないことだ。
いかにも目立った派手な活躍をした人だけを評価し、
その陰に隠れて下支えしている人とか、
何気なく普通になんでも仕事をこなしている人を評価できない。
スポーツでたとえるとよくわかる。
たとえばサッカー。
敵が攻め込んできてあわやシュートを打たれそう!
という時に派手にスライディングして、
ボールとったりなんかするディフェンダーがいると、
「おお!よくやった!」となるわけです。
でも本当はそれはダメなんです。
そこまで攻め込まれてしまったことが、
守りのとしての役目を果たしていない。
本来ならそんなあぶなっかしい、
決定的場面を作られる前に、
危険の芽をつぶしておかないといけない。
でもそういう仕事をしているとどうなるか。
見た目に派手にあわやという場面で、
ボールをとったりするわけでもなく、
相手のスペースを事前につぶして、
攻めのチャンスを摘み取っているだけだから、
選手の働きを見る目がない、
バカな監督には何もしていないように見える。
でも本当はそういう仕事ぶりこそ評価されるべきなんです。
大騒ぎするようなことも起きず、
淡々と試合が流れていって、
危険な場面もなくスムーズに試合が終わること。
それがいかにすごいことかを、
見る目のある監督なら、
見た目に派手な活躍などなくても、
そういう選手をほめられるわけです。
これはスポーツでなくても、
組織で働いている会社でも同じ。
派手にゴールを決めた人だけがすごいわけじゃない。
そのお膳立てをしている人もいれば、
しっかり守っている人もいるおかげで、
そういうゴールが生まれているだけで、
それをゴールを決めた人だけ評価し、
「ほかのやつらは仕事あんまりしていない」
というのは無能な監督=上司としかいいようがない。
ただ現実には選手=社員を見る目がない上司が多いわけで、
そのためにいかに自分がいかに仕事をやったか、
アピールすることがうまい、
パフォーマンス力のある人の方が評価されたりするわけだ。
だから意味なく大騒ぎして仕事している方が、
淡々と着々と涼しげに仕事をしている人より、
仕事をしているように見えるという錯覚が生まれる。
ふとそんなことを思ったのは、
先日、前の職場の人と話をする機会があった時のこと。
私がしていた仕事について、
こんな場合に「1」にすべきか「2」にすべきか、
どっちがいいかという質問を受けた時に気づいた。
それはその時の状況判断で、
「1」の方がいい場合もあるし「2」の方がいい場合もある。
だからどっちにすべきか現場を見ないとアドバイスができない。
その時、気づいた。
私は今までそういう困った局面の中で、
何気なく仕事をしているようにみせて、
相手の機嫌や状況や最近の流れを総合的に判断し、
このタイミングでこう切り出して、
こっちの方に持っていけばいいかも、
ということをかなり配慮してやっていたんだなと。
そこは私の頭の中の判断だから、
周囲からは見えないわけです。
でもその判断のおかげで、
さっきのサッカーでたとえるなら、
相手にゴール前に持ってこられる前に、
危険の芽をつぶしていた。
自分がボールを持っているわけではないので、
派手に活躍しているように見えないし、
自分は何もしていないように見えるけど、
サッカーの中盤で絶妙なスペースに入ることで、
試合を自分のチームの有利に、
スムーズに運べる仕事をしていたのかなと。
私はこれまでもそうなんだけど、
全体の状況を見た上で、
空いているスペースをうめるということを、
わりと得意な方なのかもしれない。
その空いているスペースを誰かうめないと、
全部がガタガタになっちゃうけど、
そこをうめさえすればすべてはうまくいくみたいな。
でもそのスペースをうめたことを評価できる人が、
あんまりいなかったりすると、
派手な仕事じゃないから「もっと働け」みたいにいう。
いやいや、私、ボール持ってないところで、
中盤で動き回ってスペースつぶしてるんですけど。
その動きをちゃんと見てないんですか。
その私に点をとることもしろといわれても、
そしたら今度は中盤に穴があいちゃうでしょう、
それを誰がうめるんですかって話しでしょうと。
私がどうだったかはさておき、
ようは組織の中で目立たないけど、
実は組織全体において重要な役割をしている人がいるわけです。
ところがバカな上司はとった点数でしか、
仕事の評価をできないとか、
危険な場面を防いだみたいな、
あってはならないことを目立っているから、
高評価しちゃうとかそういうおかしなことをしてしまう。
人の上に立つ人間は、組織の上に立つ人間は、
数値化しにくい働きをする人の役割の重要性にも気づき、
そういう人をきちんと評価すべきだと思う。
するとその組織はすっとうまくいく。
派手なパフォーマンスや、
一発打ち上げ花火的な大々的なことやらなくても、
終わってみればあっさり勝ってたみたいな。
組織ではいろんな役割がある。
点取り屋だけがえらいわけではない。
その重要性に監督=上司が気づけるかによって、
長期的な組織の成績の明暗というのは、
わかれていくんだと思う。