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子供と別れて15年。仕事が欲しい。自立したい~統合失調症との戦い

「子供を2人産み、8歳と6歳になるまで育てましたが、
それ以降、もう15年間は会えていません。
離婚した夫に親権とられて、
私が自立しない限り会わせてもらえないのです」

48歳、女性、Aさん。
統合失調症でパニック障害。
そんな方から私にメールが来た。
「今まであまり他人に話してはいないこれまでの人生を、
かさこさんに話すことで、自立するきっかけにしたい」
そこでAさんにお会いし、話を聞かせていただいた。

※統合失調症とは、100人に1人ぐらいの確率で発症する比較的多い疾患。
「誰かが自分を監視している」「誰かに操られている」などの妄想、
「聞こえないはずの声が聴こえる」「誰かが命令する」などの幻聴症状がある。
そのため思考が混乱し、「意味不明な会話をする」
「落ち着きのない行動をとる」「感情が不安定になる」といった症状も現われる。
また、何をするにも意欲がわかず、家に閉じこもったり、
人とのコミュニケーションが取れなくなるなどの障害がみられることもある。

※パニック障害とは、極度の不安から、
心臓がどきどきし心拍数が増加、発汗、身震い、手足の震え、
息苦しさ、吐き気、めまいなどの症状が出る病気。

1:いじめられ続けた学校生活
Aさんは子供の頃も社会人になっても、
とにかくいじめられてばかりいるという。
その原因と考えられるのは自閉症。
先天性の脳の機能障害で、
他人とのコミュニケーション能力に困難が生じる。

そのためどこにいってもうまくコミュニケーションがとれない。
幼稚園でも小学校でも中学校でも高校でも、
真っ先にいじめのターゲットとなった。

しかしAさんは自分が自閉症であることは知らなかった。
なぜ自分がいじめられるかわからないが、
親が厳しいのでいじめられていることも言えず、
我慢強い性格からなのか負けず嫌いからなのか、
登校拒否などは一切しなかったという。
希望もなく自殺もしようと思ったがすることはなかった。
学校が憎くて火をつけて燃やしたい、
とも思ったが、燃やすこともなかった。
ただただいじめに耐え抜いた学校生活だった。

2:結婚生活からの暗転
大学に行ってもまたいじめられるのではないかと思い、
親のコネで一般企業に就職し、
総務部で事務をしていた。
ここでも先輩からいじめられたものの、
9歳年上の男性と就職後、付き合うことになり、
23歳で結婚することになった。
できちゃった婚だった。

「そんなに旦那のことは好きではなかった。
しかしいじめられ続けてきた私の人生の中で、
私を好きになってくれた初めての人。
恋人がいないという寂しさがいやだし、
私を好きになってくれた人を手放してしまったら、
この先いつつきあえるかも不安で、
ずるずるつきあってしまった。

若い過ちで避妊に失敗し子供ができた。
私は旦那が好きではないので下ろそうかとも思ったが、
親に反対され、結婚、退職することになった」

いじめからの生活から抜け出し、
結婚と子育てではじめはそこそこ幸せだったという。
しかしそんなに好きになれなかった旦那がひどかった。
言葉の暴力と、趣味にお金を使いこむ浪費癖がエスカレートしていった。
しかしお財布は旦那に握られ、
Aさんは1日3000円だけ渡され、
それで生活をやりくりするよう迫られていた。
結果、旦那の借金は600万円に膨れ上がり、
その返済のために2人の子供がいるのに、
Aさんも3つの仕事をかけもちすることになった。

3:精神病発症
浪費癖のある旦那と離婚したいと思ったが、
幼い子供が成人するまでは思いとどまろうと考えていた。

しかし日々のストレスは相当なものだった。
そのストレスから逃れるために、
有名人の追っかけをするようになる。
「夫よりも好きです。愛しています」という手紙を送るなど、
尋常ならざる入れ込みだった。

現実逃避から有名人への恋にすがった結果、
幻聴が現れるようになる。
有名人から「Aさん、好きだよ。愛しているよ」
という声が聴こえるようになった。
幻聴や妄想から奇異な行動にも出るようになった。
我にかえると自分がおかしなことをしていることに気づく。
病院にいったら精神分裂病(統合失調症)と診断された。

そんなある日のこと。
旦那の借金返済のため、
3つの仕事をかけもちしていた時に、
布団を取り込むのを忘れると、
旦那がAさんの勤務先に怒りの電話をかけてきた。

それが大きなきっかけとなった。
Aさんの今まで積もりに積もったストレスや不安が耐えられなくなった。
過換気症候群で倒れた。

もう限界だった。
子供が成人するまで離婚しないなんて言っていられない。
心の悲鳴が体の症状にまで現れるようになってしまったから。
子供2人を連れて実家に帰った。

31歳。別居から半年後に離婚が成立。
ただ旦那に子供の親権をとられてしまった。
「お前のところにいたら子供は大学に行かせられない。
俺の方が稼げる」といって子供を勝手に連れ去っていった。
その時もショックのあまり過呼吸で倒れた。
しかし精神分裂病にまでなった自分が、
確かに金銭面で子供を幸せにできるかどうかは自信がなかった。

工場で働いていたがこの給料では自活はできない。
旦那からは「実家を出て一人暮らしできるぐらい、
自立できるまでは絶対に子供とは会わせない」と突きつけられた。

4:再発する病気で仕事ができず
子供に会いたい一心で転職を繰り返した。
しかしどこへ行ってもいじめられる。
いじめで発作寸前の状態になってしまう。
発作が起きてしまったら働くどころではなくなってしまう。
なんとか自立して子供に会いたいと思ったが、
自分ではどうにもならない病の深刻さに打ちのめされ、
仕事を辞めて1年間引きこもっていたこともあった。

「職場でいじめられると、
私は社会に必要ないと言われているみたいで苦しかった」

自信喪失の1年を過ごした後、
アルバイト仕事から社会復帰をめざした。
ファミレスのキッチン仕事をしたが、
やはりここでも目を付けられていじめられる。
スーパーのレジに転職するも、
統合失調症が何度も再発し、1カ月で解雇される。
統合失調症だけでなパニック障害であることもわかった。

5:自立を目指して
職探し、職につくもいじめや病気の発作で退職。
また職探しの繰り返し。
母親と同居しており障害年金ももらっているので、
今、お金に困って暮らせないことはないが、
もし母親が死んでしまったら、
自分は生きていけなくなってしまう。
なんとか自立しなければと、日々仕事を探しつつ、
しかし病気の再発によりダウンし、
心のアップダウンの激しい生活を続けている。

精神科にも通っているが、
ちゃんと話を聞いてくれるわけでもなく、
ただ薬を調合するための診察となっている。
薬は副作用が強いのであまり飲みたくないが、
それでも症状がひどい時には飲まざるを得ない。
そんな毎日を繰り返している。

ただネットには救われたという。
「ブログやフェイスブックやツイッターなどを通して、
いろんな人と交流できることが、
心の支えとなっている部分も大きい。
ネットの交流で孤独から救われました」とAさんはいう。

外出ができないわけでもないし、
実際に人と会うこともできる。
ただ仕事が続かない。
でも仕事をしないと自立できないし、
何よりも自分が社会に役立たない、
みじめな存在になってしまう。

「精神疾患病のため、普通のことが普通にできなかったりもする。
でも病気だってできることがある。
私も誰かの役に立ちたいし、
社会で必要とされる存在になりたい。
統合失調症でもパニック障害でも、
ちゃんと幸せな人生が送ることができるという、
他の人にも希望が与えられる人間になりたい」

かわいそうだと同情してほしいのではなく、
お金を援助してほしいのではなく、
自分もしっかり働いて、
少しでも自分ができることを増やしたい。
そしていつかまた子供に会いたい。
そんな風に思いながら日々を過ごしている。

・・・・・・・・・・・・・・

話を聞かなければAさんが病気だとはわからない。
そんな過去があったなんてまったく想像できない。
でも毎日懸命に生きている。

私はつい先日も壮絶な人生を歩んできた人の話を聞いた。
その人もまったく見た目にはわからない。

「自分の方がもっと壮絶な過去がある」とか、
そんな不幸自慢をしても仕方がない。
人それぞれ、他人からは想像を超えた、
さまざまな苦しみや悩みを背負って生きている。
だから自分の苦しみの方がすごいとか、
他人と比べてたいしたことがないとか、
そんな風に思ったりするのではなく、
「自分だけが不幸でみんなは順風満帆だ」
なんて思わないことだ。

ついつい自分だけが不幸・不運で、
他人は恵まれた環境にあるから幸せなんだと、
嫉妬したり、それを言い訳にしたりしてしまいがち。
でもあなたから見れば、
「すごい幸せそうで育ちがいい人」と思っていた人が、
実はとんでもない過去やすさまじい苦しみを持っていたりもする。

そんな中でなんとか一歩でも二歩でもよりいい方向にと、
努力している人もいる。
努力したからといって必ずそれが報われるとは限らない。

でも自分があきらめたらそれで終わりだ。
自分が自分を見捨てたら絶対に良くならない。
自分に言い訳をしている限り、人生は悪くなる一方だ。

ならば少しでもいい方向になるかもしれない方に、
エネルギーを注いだ方が建設的ではないか。
たった1度の人生なのだから。

Aさんはいう。
「結局、病気を治すのは自分自身。
自分が強くなって克服するしかない」

誰かのせいにしたって人生開けない。
どんなハンデを背負った人生だとしても、
自分が幸せに楽しく暮らせるかどうかは、
自分自身にかかっている。

最終的には個人の欲望の強さが、
幸運を舞い込む力になるのだと思う。

「死ぬまでになんとしてでもこれだけはしたい」

そんな思いがあれば、その夢を実現するために、
死に物狂いでがんばるのではないか。
中途半端に満たされているがゆえに、
自分に言い訳しているのではないか。

きっと何としてでも実現したいという欲望があれば、
人は変われるのだと思う。

そのためには自分に素直になり、
自分の正直な欲望に従い、
その欲望を実現するため、
どこでどう社会と折り合いをつけていくかを、
死に物狂いで模索することだ。
そうすればきっと自分と社会のいい按配、
接点が見つかるのではないか。

そんな風にAさんの話を聞いて思った。


※「私の話を聞いてほしい」という方がいれば、
メールいただければと思います。
時間の都合があえばお会いして、
話をお聞かせてください。
ただ私は話を聞くだけで同情はしないと思います。

また個人が特定されないような形ではありますが、
ブログや雑誌や書籍などで、記事にさせていただく場合もあります。
私は聖人君主でもボランティアでもなく、
一個人のジャーナリストとして、
自分の興味から「こんな人がいるのだ」ということを知りたくて、
かつそれを多くの人に知ってほしいという動機に基づいています。

そんな自分の“欲望”が、
話を聞くことと記事にすることで、
誰かの役に立つこともあると思っているので、
そんな動機でよければメールいただければと思います。

kasakotaka@hotmail.com

by kasakoblog | 2012-04-11 22:25 | 生き方

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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