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ワーホリ・留学・語学幻想~ワーホリー卒業sHueさんインタビュー

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「ワーキングホリデーは企業から見れば、
1年間、キャリアに穴を開けたとしか見られない。
それで日常会話程度の英語しか話せないのではお話にならない。
滞在してもお金がないので日本食レストランで働き、
日本人たちとばかり交流していては語学は身につくはずがない」

そう語るのは、2011年6月から2012年5月まで、
オーストラリアにワーホリで留学していたsHueさん(23歳)。
せっかくお金と時間をかけて留学するなら、
海外でしかできないことをした方がいいのではないか――。
自身の経験をもとに、ワーホリの問題点と意義を話してくれた。
(取材日:2012年5月16日)

・なんかすごいの幻想
「ワーホリってどんなイメージがありますか?」
sHueさんは私にまずこう聞いた。
「若いのに海外滞在経験できるなんて貴重だし、
なんかすごいんじゃないですかね?!」と答えると、
「そうなんですよ、みんななんかすごい!って言うんですけど、
でもそうでもないんです」とsHueさんは言う。

「帰ってきたらそのギャップにとまどうんです。
日本に帰国したら、親も友達もみんな、
海外で1年暮らしてきたなんてすごいっていう。
でもその経験をもとに就職できるかといったら厳しい。
企業はその辺、冷静に見ています。
1年もキャリアに穴を開けてまで行くワーホリ生に、
企業はたいして期待はしていない。
というかむしろ低評価の場合も。
ビジネス英会話がペラペラ話せるわけでもないですし」

確かに言われてみればそうだ。
ワーホリはキャリアというよりは、
モラトリアムないしはドロップアウト的要素が強い。
語学を学んで就職が有利になるというのは幻想かもしれない。

sHueさんもはじめオーストラリアに着いた当初は、
海外にいる自分に酔っていたという。
短大を卒業後、勤めた工場はブラック企業で過酷な労働。
1年間勤めた後、退職し、
前々から好きだった服関連をと思い、服屋さんに転職。
大型ショッピングモールオープン時に、
その店に入ったこともあり、楽しく働け、
すぐに副店長にも抜擢された。

そのかたわら、写真も撮っていた。
短大在学時にカメラマンを目指している友人がいて、
その影響で撮り始めた。
お金をためて写真展をしたりして、
カメラマンになる意欲がどんどん高まっていった。

以前から親しいカフェオーナーが、
オーストラリアに行っていたという話を聞き、
行ってみたくなった。
でも英語はあまり話せない。

ならばオーストラリアにワーホリで行けば、
海外にも行けるし、英語も勉強できるし、
海外で写真を撮ることもできる。
カメラマンへの道を歩む前に、
海外に行っておこう。
それがいつかカメラマンになる際の、
貴重な経験になるかもしれないと考え、
服屋を辞めてオーストラリアに行くことに決めた。

・単に海外でフリーターしてるだけ・・・
最初の3カ月間、アデレードで語学学校に通った。
はじめての海外。
海外で生活しているというだけで自分に酔っていたという。
オーストラリアで写真を撮りたいということと、
写真展をしてみたいという目標があった。
ところがとんとん拍子で話が進んでしまい、
留学2カ月目にしてカフェで写真展ができることになり、
目標を実現してしまった。

語学学校が終わると、多くのワーホリ生は、
1年間のワーホリビザをさらに1年延長できる、
セカンドビザを取得するため、3カ月間の季節労働をする。
sHueさんもとりあえずセカンドビザ取得のため、
ファームで労働することにした。

ところがそこがひどいファームだった。
オーナーが日本人嫌いなのか、
週払いのはずの賃金を支払ってくれない。
その話をしても「おまえの英語はよくわからない」
と突っぱねられてしまう。
悩んだ挙句、2週目を終えると、
このファームから夜逃げするように脱走することにした。
そしてアデレードからメルボルンへと移った。

でもこのイヤなファームのおかげで、
sHueさんの留学経験は大きく変わることになった。
「もしいいファームだったら3カ月間働き、
セカンドビザをもらい、2年間、
ただ漫然とオーストラリアにいたかもしれない」

ひとまず日本人のシェアハウスに寝泊りし、
お金がないのでアルバイト先を探す。
手っ取り早く働けるといえば日本食レストランだ。
面接を受けるが「これでいいのだろうか?」
「何かが違うのではないか?」と思い始めた。

「わざわざ海外に来ているのに、
日本語使うレストランでバイトするなら日本でもできる。
これでは単にフリーターで勤務先が海外というだけ。
しかもキャリアのこと考えたら、
海外でバイトするより日本でバイトする方がうんといい。
なぜなら海外のレストランは、
ろくに礼儀作法もサービスも徹底しておらず、
バイトしてもだらだらおしゃべりしていたりとか。
日本のバイトの方がその点は厳しいから、
社会経験なら日本のバイトの方がはるかにマシ」

ただ運がいいことに、
滞在していた日本人シェアハウスの手伝いをすることで、
家賃は無料になり、バイトはしなくてもよくなった。

日本人ばかりのシェアハウスはすぐに出ようと、
はじめは思っていたが、
家賃無料は魅力だし、何より個性的な人がいっぱいいる。
日本食レストランで無理に働かなくてもいい。
それよりもオーストラリアでしかできないことをしたい。

「英語は捨てよう。そう思った。
1年間いたぐらいでは英語なんてそううまくはならない。
それよりもここにいる意識の高い日本人と絡むこと。
そして帰国後、カメラマンという夢に近づけるようなことを、
オーストラリアでしたい」

そう考えたsHueさんは、
メルボルンの生活情報などを日本語で掲載している、
「Go豪メルボルン」内にある、
在住日本人女子のファッションチェックコーナー、
「大和撫子」を見て「これだ!」と思い、
サイト運営会社にすぐさまメールした。
「大和撫子の撮影や荷物持ちなど何でもやらせてください」と。

ちょうど人手が足りず、すぐさま採用が決まり、
撮影も任せてもらえることに。
はじめは手伝いということで無報酬だったが、
今年に入ってから「ギャラがほしい」と伝えるとOKに。

「ギャラをもらうようになってから、
大和撫子コーナーだけでなく、
他のコーナーの仕事もふってもらえるようになり、
出張でシドニーに行けたことも。
ギャラをもらうようになってから、
逆にお互いの信頼関係が向上した」という。

ワーホリで英語はたいして学べなかったかもしれない。
でも実績がないかけだしカメラマンにもかかわらず、
お金をもらって撮影をする経験を、
このオーストラリアですることができた。

「自分から動けば夢がかなう」

sHueさんにとってワーホリで得た大きな収穫は、
日本での受身の姿勢から、
海外で自らを積極的にPRする姿勢に、
大きく変わったことかもしれない。

「ワーホリしている日本人の中には、
日本食レストランで働き、
日本人のシェアハウスの人たちと毎日楽しく遊び、
それで終わってしまう人もいる。
でも一度、社会人経験をした人が、
会社を辞めてまでワーホリして、
このぬるま湯環境に浸かっていたら、
帰国してからのキャリアにプラスにならない。

ワーホリはとってもいいこともある。
同世代の日本人と夢を語り合ったり、
海外でしかできない経験ができたり、
日本とは違う価値観にふれたりすることもできる。
せっかくワーホリにきたのであれば、
単なる日本からの現実逃避ではなく、
帰国後にプラスになるようなきっかけをつかむような、
ことをした方がいいのではないか」

でもsHueさんはこんな風に語る。
「僕だってそうなる危険性があった。
でもあの日本人嫌いのファームのオーナーのおかげで、
セカンドビザを取ることもなく、
残りの滞在期間を何をしようか真剣に考えることができた」

5月に日本に帰ってきた。
25歳か26歳でプロカメラマンになり、
30歳までには別のスキルも1つか2つ学んで、
カメラマン+スキル1+スキル2を加えた、
マルチな働き方ができるようになりたいという。

まだ23歳。
昨年オーストラリア滞在中ネットでたまたま発見して、
以来、毎日読んでくれている「つぶやきかさこ」を書いている私に、
日本帰国してすぐアポをとって会う行動力をみるに、
きっと彼は数年後には、
いいカメラマンになっているんじゃないかなと思う。

ワーホリや留学や語学に「逃げる」人は多い。
現地で日本人とばかりつるんで、
だらだら遊ぶだけのワーホリ生も多いだろう。
でも私は思う。
それでもいい。
今の日本社会に、今の自分の人生に疑問を感じたら、
一度ドロップアウトでもいいから、
現実逃避でもいいからワーホリでも、
海外旅行にでも出てみればいい。
まずはその行動ができるかどうか。

たとえ海外滞在時にだらだらして、
帰国後にキャリアで苦しんだとしても、
今の日本の生活に疑問を感じながらも、
何の決断もできず、何の行動もしないまま、
企業に飼い殺されている人よりは、
はるかにマシだと私は思う。

もちろん、どうせ行くなら、sHueさんのように、
今後のキャリアの足がかりをつかむような、
経験をしてほしいと願っているけど。


<関連リンク>
・sHueさんホームページ
http://solitary-toys.jugem.jp/

・Go豪メルボルン・大和撫子コーナー
http://www.gogomelbourne.com.au/beauty/yamatonadeshiko/

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by kasakoblog | 2012-05-21 22:33 | 生き方

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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