被災地支援?県外観光客に金をバラまく被災地応援ツアーの謎
2012年 05月 31日
いわき市は1万円助成金出すっていうんです。
私も含め被災者はまだ先も見えない状況なのに・・・。
そんなお金あったら被災者支援をしてほしい」
(いわき市の津波被災者)
被災地に観光すると、
県外観光客の旅行費用の一部が、税金でまかなわれる。
こんな政策が一部自治体で行われている。
福島県いわき市は、県外観光客で、
20人以上のツアー旅行で宿泊客には上限1万円を、
同じ条件で日帰り観光客には上限5000円を支援することを始めた。
被災者を支援するには様々な方法がある。
直接、金をばらまく方法もあるが、
支援づけになり依存してしまい、自立ができなくなってしまう。
生活保護の問題と同じだ。
そのために県外から観光客を呼び、
観光を活性化させて雇用を増やし、
被災者に働く機会を与えようというのは、
悪いことではないと思う。
ただ、まだ震災から1年しか過ぎておらず、
被災者の多くがプレハブ仮設で暮らしている最中、
また高台移転の莫大な費用ねん出などの問題もある中、
限りある予算を県外観光客に税金を助成する、
というのは正直「?」と思う。
私は昨年から被災地観光をどんどん進めるべきだ、
と主張している。
でもその方法として被災者も払っている税金から、
県外観光客に現金を助成するというのはおかしいのではないか。
東京都も同じような税金ばらまきを始めている。
『被災地応援ツアー』と題し、
東北に旅行すると1人1泊3000円の助成、
日帰り客には1人1500円の助成がされる。
それでも被災者雇用につながったり、地域活性化につながればいい。
でも「被災地」をだしに、
「東北を応援しよう」などと企画しているツアーの多くが、
甚大な被害のあった被災地から遠く離れた、
被災者にもお金が落ちるのかと疑問に思うようなものが多い。
例えば、3000円助成の対象になっている、
東京都被災地応援ツアーを企画している旅行会社は、
おすすめ観光スポットの第一に岩手県の平泉を紹介している。
平泉が「被災地」応援なのか???
今回、震災被害がひどかったのは、東北でも沿岸部。
沿岸部の人たちが職をなくして困っている。
でもほとんど大きな被害がなかった、
沿岸部から遠い内陸の平泉。
そこに税金で助成してまで観光客を呼び込むと、
「被災地支援」になるのだろうか?
あるバス会社は被災地応援ツアーと題して、
会津若松日帰りツアーを企画している。
会津若松が被災地?
会津若松には原発被災者が多く避難しているとはいえ、
震災の直接的被害は沿岸部の比ではない。
そこに「被災地応援」と題して金を落として、
はたして被災者が潤うのだろうか?
もちろん東北=被災地とされたせいで、
震災被害や放射能汚染がひどくなかった地域でも、
それこそ東京都のトップの発言に見られる自粛ムードや、
東北=被災地とひとくくりにされた「風評被害」のせいで、
観光客が激減し、困っているのは確かだろう。
でも一番被害のひどかった東北沿岸部の被災地、
そこで職を失った被災者を応援するツアーという意味では微妙に違う。
観光が重要な産業の1つである会津若松とかが、
会津若松の税金を使って、
「被災地応援ツアー」ではなく「風評被害応援ツアー」と題して、
県外観光客を助成するなら、
それはそれで市の政策として意味のあることだと思う。
でもなぜ東京都が?
しかも甚大な被害のあった被災地ではないのに、
とか思うと、なんともおかしな税金の使い方ではないか。
それだったら昨年の震災直後、
一番人手がいる重要な時期に、
危険をかえりみず、甚大な被害のあった被災地に行った人に、
ボランティア保険代を助成するとか、
まだそういう方が被災地の役にも立つし、
東京都が東京都民の税金を使って、
税金をばらまく意味があるのではないか。
甚大な被害のあった被災地でもないのに、
岩手県、宮城県、福島県なら、
すべて「被災地応援ツアー」になり、
観光客が税金助成を受けられる対象ツアーになるような、
「まがいもの」ツアーだけでなく、
旅行会社によってはこうした助成の対象にはならないが、
津波被災地に行き、ボランティアをしつつ、
被災者の方と交流するようなツアーを企画している旅行会社もある。
http://www.his-j.com/kokunai/kanto/volunteer/#aboutTour
これなら「被災地応援ツアー」というのはわかるし、
私が昨年から被災地観光すべきといって、
イメージしているのはこういうツアーの方が近い。
そもそも被災地を岩手、宮城、福島に限定しているのがおかしい。
震災被害を考えた被災地応援ツアーというなら、
平泉や会津若松より東京ディズニーランドの方が、
はるかに震災被害は大きかっただろう。
周辺住民の液状化被害もひどかった。
震災被害の少ない平泉が「被災地応援」となり、
金がもらえるのに、
震災被害の大きかった東京ディズニーランドに行っても、
被災地と見なされずに助成がされないというのは解せない。
別にディズニーランドだけの話ではなく、
東北でなくても千葉や茨城でも、
被害のひどかった地域がある。
でもそっちは被災地応援にならず、
被害が少なくても東北ならすべて被災地応援になるとすれば、
それは被災地をだしにした便乗商売、
便乗税金バラマキに過ぎない。
「被災地応援ツアー」と題して、
税金をばらまくのなら、
甚大な被災地や被災者に金が落ちるようなツアーに、
限定すべきだと思うし、
甚大な被災地に金を落とせる場所がないなら、
被災地のボランティアツアーや、
(まあ今やもう一般ボランティアができることは少ないが)
被災者の方にお金を払って被災地を案内してもらい、
震災時の体験や今後の防災に役立つ教訓を話してもらう、
そういうツアーを企画して助成すればいい。
もしくは被災者の人にお金を払って、
県外に来てもらって震災体験を話してもらい、
今後の防災の役に立てるとか。
そういうことなら被災者支援にもなるし、
県外の人の税金を使って県外の人のためにもなる。
またはツアーへの現金支給ではなく、
風評被害を軽減するために、
放射能測定機を税金で購入して、
主要観光スポットの放射能測定値を公表するとか、
そういうことに税金を使って、
支援するならまだわかる。
お金が無尽蔵にあればいい。
しかし消費税増税しないと財政不足で大変で、
金が足りないといっているわりに、
支援になるのかもよくわからない、
被災地でなく単に都内の旅行会社が儲けるだけ?
県外の観光客に金ばらまいてどうする?
みたいな税金の使い方を平然としているのは、
なんとも解せない。
また今、被災地に行っても、
震災被害のひどさは見た目にはわからない地域がほとんど。
がれきは片付き、以前、その町に来たことがない人なら、
「単なる更地」にしか見えない被災地が多くなった。
私は被災地にお金を落とさせ、
しかも被災地以外の人に防災教訓を知らしめる上でも、
震災被害のすさまじさを象徴する建物などは、
残しておいた方がいいという考えだが、
その多くはもうすでに撤去されてしまっている。
だからこそ「被災地」でもない、
遠く離れた内陸部に「被災地応援ツアー」と称した、
被災地・被災者支援なのかよくわからないものに、
税金助成して便乗商売し、
被災地支援に取り組んでいるように見せているところが、
多いのかもしれないが。
限られた税金の使い道を、
もうちょっとまともに考えてほしいと思う。
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