
毎週金曜日に総理官邸前で、
原発再稼動反対デモが行われているのは、
多くの方がご存知かと思う。
3月から行われているが、先週あたりから参加者が増え、
マスコミがあまり報道しないのにもかかわらず、
ツイッターなどではしょっちゅう情報を見るようになった。
ただ正直、6月29日のデモに行ってみる前まで、
私個人はデモに懐疑的だった。
というかデモってうさんくさいものだと思っていた。
デモって無意味だと思っていた。
デモってなんか一部のヒステリックな人だけが、
自己満足でやっているだけかと思っていた。
そう思っている人も多いだろう。
だが今回、デモの取材をして認識を改めた。
このデモはいわゆる従来のデモとは違う。
確かにデモをしたところで、
原発を止めることはできないかもしれないが、
このデモは、日本が変わる、国民が変わる、
大きな転機になるかもしれない。
今まで国民はテレビに向かって、
政治家に文句を言っていただけだった。
選挙の時だけとりあえずマシな党に、
投票するぐらいがせいぜいだった。
というか多くの人は、
政治の話題を避けるようにして生き、
仲間内で政治の話題をすることすらなく、
自分の仕事や家庭やプライベートに手一杯だった。
汚職があったり増税されたりする場面で、
テレビに向かって憤り、
たまにネットでその怒りを吐き出したところで、
ただそれだけだった。
しかし福島原発事故による放射能汚染という、
あり得ない自体が起き、
しかも今もなお全国で地震が頻発している中、
一部の国民は目覚めてしまった。
「いい加減、国民をバカにすんなよ」と。
しかしそれを表明できる場がない。
選挙ぐらいしかない。
選挙でしか国民が政治家に意見表明できないなんておかしい。
そう思った人がこの総理官邸デモに集まっていた。

3人のお子さんを連れて参加していた40歳代の夫婦がいた。
ツイッターで知り、はじめてこのデモに参加したという。
「何もしないではいられない。
とにかく自分で動くことから始めないとどうにもならない」
と参加した経緯を話してくれた。
「福島原発がまったく収束もしていないうちに、
他の原発を動かすなんてどう考えてもあり得ない」
「野田政権、民主党が悪いといったところで、他の政党も頼りない。
どうしようもない状況だ」と話した。
30歳代の男性はデモに参加したのはもう4~5回目だという。
その理由は「これまで原発の見識が甘かった大人としての責任」と語った。
「福島原発の事故が起きてしまった。
起きてしまったことはもうどうしようもない。
それに原発事故を招いたのは、自分たち、大人たちの責任でもある。
原発への見識が甘かったからだ。
でも今、私たちは311で原発の恐ろしさを知った。
ならばその責任は果たさなければならない。
数日前も福島原発1号機で、
1万ミリシーベルトというとんでもない放射線量が計測されている。
そんな状態で他の原発を動かすなんて狂気の沙汰だ」
一緒に来ていた30歳代の中国人女性は、
「日本にずっと住んでいたい外国人はいっぱいいる。
住みやすい国にするために、
原発をやめたいという思いは同じ。
あとこうしたデモが行われていることを、
中国にも伝えたい。
中国ではデモのことはあまり報道されていない」と話す。
60歳代の女性2人組は「福島の悲劇をまた繰り返させてはならない」
と強く憤っていた。
また3党合意による消費税増税法案可決についても、
このデモに参加した大きな理由の1つだという。
「民主党は選挙の時に、税金の無駄遣いをやめるといったのに、
それをやらずに消費税増税した。
1000兆円の借金なんて消費税増税だけじゃ返せるわけないのに、
一体、この先、何%上げる気なのか。
上がり続けたら、生活ができなくなってしまう。
民主党は自民党よりもひどい自民党みたいになってしまった。
政治家は選挙の時だけ、
国民にいいこと言えばいいと思っているのかもしれないが、
そんなことは許せない。
原発再稼動にしろ、消費税増税にしろ、
とにかくやり方が許せないんだよ。
国民は選挙の時だけでなく、しっかり政治家に意思表明すべき。
だから今日、ここに来た」
70歳代の男性は今回のデモが今までのデモとは、
まったく違うということを話してくれた。
「このデモに来るのは3回目だけど、
他のデモとは違い、仕事帰りの人や、
子連れの人や、普通の人がいっぱい来ていて、
何かの組織や団体が動員するようなデモの雰囲気とは、
まったく異なっている。
自然発生的にどんどん人が集まっている感じ。
国民の声を伝えたいという思いが充満している」
そして偶然、30歳代の女性の知り合いに出会った。
今回、人生初のデモだという。
「今までまったくデモに関心がない、
私のような人間が来るぐらい、
みんな怒っていると思う。
大飯原発そばに活断層があるというのに、
それでも動かすなんてどう考えてもやめてほしい。
消費税も上げないといっていたのに約束を破った。
私一人がデモに参加したところで、
何が変わるわけではないかもしれない。
でも私は変わった。
このまま何もしないではいられず、
見たいライブをやめてデモに来た。
もし一人でも多くの人が変われたら、
きっと世界は変えられるのではないか」
彼女の言葉を聞いた時、
ふと昨年末に作成した「かさこマガジン2」の言葉を思い出した。
「日本は変わった。世界は変わった。あなたは変わった?」
私がこのデモに来て思ったこと。
それは今まで政治に対する怒りを、
表明しなかった人たちが、
大勢参加しているということだ。
仕事帰りにデモに参加した、
20歳代の女性と30歳代の女性に、
「なぜデモに来たのですか?」と聞いたら、
「原発再稼動の見切り発車はまずい」
「意思の表明」と返ってきた。
実にシンプルな答えだったが、
国民として当たり前の感情ではないか。
でもそれを今までのように、
黙っていたのでは政治家のやりたい放題になる。
国民なめられたら困るという、
静かな怒りがたちこめていた。
震災で日本は決定的に変わった。
そしてその震災を気に、
国民の一部は変わり始めている。
今までのように、時々テレビに向かって政治に文句いって、
選挙で“清き一票”入れるだけじゃダメなんだと。
政治に対する怒りを表明しないことは、
将来、自分たちの生命や安全をも、
脅かされることになりかねないと。
日本は変わったのに変われない人たちがいる。
それは危機意識の問題だと思う。
地震は局地的だが原発は広範囲に被害が及ぶ。
地震は被災しても復興はできるが、
原発事故は被災したら復興は不能。
私が話を聞いた限りにおいて、
原発そのものの存在自体が許せないというよりは、
安全もろくに確保せず、
とりあえず動かしちゃえというその性急さに、
怒りを覚えている人たちが多かったと感じた。
このデモは反原発だとか脱原発だとか、そんなことの前に、
政治家が国民の安全を守るために、
当たり前にやるべき手順で進めてくれと、
お願いしているようにも感じられた。
当たり前のことを当たり前にしない政治家、官僚、電力会社、経団連。
国民の安全をないがしろにして、
国民の声も聞かずに強引に押し切ろうとする、
政治家、官僚、電力会社、経団連。
デモは参加者が増えれば増えるほど、
さすがに彼らも無視はできなくなるのではないか。
いや、無視する公算は高いと思うが、
もしこの静かな怒りに満ちた、
実に礼儀正しいデモ集団の声を聞かなかったとしたら、
多分、その次に待っているのは、
政治家、官僚、電力会社、経団連への「実力行使」だと思う。
そのぐらい国民の怒りは満ち溢れている。
デモだけでは何も変えられないかもしれないが、
デモすらしないよりはマシ。
とにかくまだこのデモを見たことない人は、
もしまた官邸デモが行われるようなら、
「デモなんて意味ねえ」と斜に構える前に、
野次馬でもいいから行ってみたらいい。
デモで何かを変えることはできなくても、
何かが変わる予兆を感じ取ることができるのではないか。
しかしデモを見て思ったのは、
日本の政治はこんなにまでおかしくなってしまったのか、
ということだ。
こんなデモが行われること自体、
日本の政治・官僚・財界トライアングルは、
完全に国民そっぽを向いた、
機能不全を起こしているとしかいいようがない。
あれだけの震災があったら、
さすがに変われると思ったが、
彼らはまったく変わることを知らない。
もう一度、どこかで大地震がきて、
とりかえしのつかない原発事故が起きないと、
彼らは気づかないのだろうか・・・。
でも嘆いていても始まらない。
日本を変えるなら、まず自分が変わるのが第一歩。
そのきっかけがこの官邸デモなんだと思う。
・官邸デモ動画
http://www.youtube.com/watch?v=XPpdKgOFkLE
・原発20キロ圏内レポート~あなたの家や町が立入禁止になる恐怖
http://kasakoblog.exblog.jp/17660549/
・一生、家に帰れない帰宅難民インタビュー~原発の恐ろしさ~
http://kasakoblog.exblog.jp/17677403/
もし何かAmazonで買い物する方いらっしゃれば、
下記よりお願いできれば助かります。
・Amazon