デモは意味ないのか?~官邸デモレポート
2012年 06月 30日

毎週金曜日に総理官邸前で、
原発再稼動反対デモが行われているのは、
多くの方がご存知かと思う。
3月から行われているが、先週あたりから参加者が増え、
マスコミがあまり報道しないのにもかかわらず、
ツイッターなどではしょっちゅう情報を見るようになった。
ただ正直、6月29日のデモに行ってみる前まで、
私個人はデモに懐疑的だった。
というかデモってうさんくさいものだと思っていた。
デモって無意味だと思っていた。
デモってなんか一部のヒステリックな人だけが、
自己満足でやっているだけかと思っていた。
そう思っている人も多いだろう。
だが今回、デモの取材をして認識を改めた。
このデモはいわゆる従来のデモとは違う。
確かにデモをしたところで、
原発を止めることはできないかもしれないが、
このデモは、日本が変わる、国民が変わる、
大きな転機になるかもしれない。
今まで国民はテレビに向かって、
政治家に文句を言っていただけだった。
選挙の時だけとりあえずマシな党に、
投票するぐらいがせいぜいだった。
というか多くの人は、
政治の話題を避けるようにして生き、
仲間内で政治の話題をすることすらなく、
自分の仕事や家庭やプライベートに手一杯だった。
汚職があったり増税されたりする場面で、
テレビに向かって憤り、
たまにネットでその怒りを吐き出したところで、
ただそれだけだった。
しかし福島原発事故による放射能汚染という、
あり得ない自体が起き、
しかも今もなお全国で地震が頻発している中、
一部の国民は目覚めてしまった。
「いい加減、国民をバカにすんなよ」と。
しかしそれを表明できる場がない。
選挙ぐらいしかない。
選挙でしか国民が政治家に意見表明できないなんておかしい。
そう思った人がこの総理官邸デモに集まっていた。

3人のお子さんを連れて参加していた40歳代の夫婦がいた。
ツイッターで知り、はじめてこのデモに参加したという。
「何もしないではいられない。
とにかく自分で動くことから始めないとどうにもならない」
と参加した経緯を話してくれた。
「福島原発がまったく収束もしていないうちに、
他の原発を動かすなんてどう考えてもあり得ない」
「野田政権、民主党が悪いといったところで、他の政党も頼りない。
どうしようもない状況だ」と話した。
30歳代の男性はデモに参加したのはもう4~5回目だという。
その理由は「これまで原発の見識が甘かった大人としての責任」と語った。
「福島原発の事故が起きてしまった。
起きてしまったことはもうどうしようもない。
それに原発事故を招いたのは、自分たち、大人たちの責任でもある。
原発への見識が甘かったからだ。
でも今、私たちは311で原発の恐ろしさを知った。
ならばその責任は果たさなければならない。
数日前も福島原発1号機で、
1万ミリシーベルトというとんでもない放射線量が計測されている。
そんな状態で他の原発を動かすなんて狂気の沙汰だ」
一緒に来ていた30歳代の中国人女性は、
「日本にずっと住んでいたい外国人はいっぱいいる。
住みやすい国にするために、
原発をやめたいという思いは同じ。
あとこうしたデモが行われていることを、
中国にも伝えたい。
中国ではデモのことはあまり報道されていない」と話す。
60歳代の女性2人組は「福島の悲劇をまた繰り返させてはならない」
と強く憤っていた。
また3党合意による消費税増税法案可決についても、
このデモに参加した大きな理由の1つだという。
「民主党は選挙の時に、税金の無駄遣いをやめるといったのに、
それをやらずに消費税増税した。
1000兆円の借金なんて消費税増税だけじゃ返せるわけないのに、
一体、この先、何%上げる気なのか。
上がり続けたら、生活ができなくなってしまう。
民主党は自民党よりもひどい自民党みたいになってしまった。
政治家は選挙の時だけ、
国民にいいこと言えばいいと思っているのかもしれないが、
そんなことは許せない。
原発再稼動にしろ、消費税増税にしろ、
とにかくやり方が許せないんだよ。
国民は選挙の時だけでなく、しっかり政治家に意思表明すべき。
だから今日、ここに来た」
70歳代の男性は今回のデモが今までのデモとは、
まったく違うということを話してくれた。
「このデモに来るのは3回目だけど、
他のデモとは違い、仕事帰りの人や、
子連れの人や、普通の人がいっぱい来ていて、
何かの組織や団体が動員するようなデモの雰囲気とは、
まったく異なっている。
自然発生的にどんどん人が集まっている感じ。
国民の声を伝えたいという思いが充満している」
そして偶然、30歳代の女性の知り合いに出会った。
今回、人生初のデモだという。
「今までまったくデモに関心がない、
私のような人間が来るぐらい、
みんな怒っていると思う。
大飯原発そばに活断層があるというのに、
それでも動かすなんてどう考えてもやめてほしい。
消費税も上げないといっていたのに約束を破った。
私一人がデモに参加したところで、
何が変わるわけではないかもしれない。
でも私は変わった。
このまま何もしないではいられず、
見たいライブをやめてデモに来た。
もし一人でも多くの人が変われたら、
きっと世界は変えられるのではないか」
彼女の言葉を聞いた時、
ふと昨年末に作成した「かさこマガジン2」の言葉を思い出した。
「日本は変わった。世界は変わった。あなたは変わった?」
私がこのデモに来て思ったこと。
それは今まで政治に対する怒りを、
表明しなかった人たちが、
大勢参加しているということだ。
仕事帰りにデモに参加した、
20歳代の女性と30歳代の女性に、
「なぜデモに来たのですか?」と聞いたら、
「原発再稼動の見切り発車はまずい」
「意思の表明」と返ってきた。
実にシンプルな答えだったが、
国民として当たり前の感情ではないか。
でもそれを今までのように、
黙っていたのでは政治家のやりたい放題になる。
国民なめられたら困るという、
静かな怒りがたちこめていた。
震災で日本は決定的に変わった。
そしてその震災を気に、
国民の一部は変わり始めている。
今までのように、時々テレビに向かって政治に文句いって、
選挙で“清き一票”入れるだけじゃダメなんだと。
政治に対する怒りを表明しないことは、
将来、自分たちの生命や安全をも、
脅かされることになりかねないと。
日本は変わったのに変われない人たちがいる。
それは危機意識の問題だと思う。
地震は局地的だが原発は広範囲に被害が及ぶ。
地震は被災しても復興はできるが、
原発事故は被災したら復興は不能。
私が話を聞いた限りにおいて、
原発そのものの存在自体が許せないというよりは、
安全もろくに確保せず、
とりあえず動かしちゃえというその性急さに、
怒りを覚えている人たちが多かったと感じた。
このデモは反原発だとか脱原発だとか、そんなことの前に、
政治家が国民の安全を守るために、
当たり前にやるべき手順で進めてくれと、
お願いしているようにも感じられた。
当たり前のことを当たり前にしない政治家、官僚、電力会社、経団連。
国民の安全をないがしろにして、
国民の声も聞かずに強引に押し切ろうとする、
政治家、官僚、電力会社、経団連。
デモは参加者が増えれば増えるほど、
さすがに彼らも無視はできなくなるのではないか。
いや、無視する公算は高いと思うが、
もしこの静かな怒りに満ちた、
実に礼儀正しいデモ集団の声を聞かなかったとしたら、
多分、その次に待っているのは、
政治家、官僚、電力会社、経団連への「実力行使」だと思う。
そのぐらい国民の怒りは満ち溢れている。
デモだけでは何も変えられないかもしれないが、
デモすらしないよりはマシ。
とにかくまだこのデモを見たことない人は、
もしまた官邸デモが行われるようなら、
「デモなんて意味ねえ」と斜に構える前に、
野次馬でもいいから行ってみたらいい。
デモで何かを変えることはできなくても、
何かが変わる予兆を感じ取ることができるのではないか。
しかしデモを見て思ったのは、
日本の政治はこんなにまでおかしくなってしまったのか、
ということだ。
こんなデモが行われること自体、
日本の政治・官僚・財界トライアングルは、
完全に国民そっぽを向いた、
機能不全を起こしているとしかいいようがない。
あれだけの震災があったら、
さすがに変われると思ったが、
彼らはまったく変わることを知らない。
もう一度、どこかで大地震がきて、
とりかえしのつかない原発事故が起きないと、
彼らは気づかないのだろうか・・・。
でも嘆いていても始まらない。
日本を変えるなら、まず自分が変わるのが第一歩。
そのきっかけがこの官邸デモなんだと思う。
・官邸デモ動画
http://www.youtube.com/watch?v=XPpdKgOFkLE
・原発20キロ圏内レポート~あなたの家や町が立入禁止になる恐怖
http://kasakoblog.exblog.jp/17660549/
・一生、家に帰れない帰宅難民インタビュー~原発の恐ろしさ~
http://kasakoblog.exblog.jp/17677403/
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