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支援のため被災地で事業を始めた埼玉の理学療法士

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被災地報道は激減し、世間の関心も薄らいでいるが、
まだ被災地は復興には程遠く、
先が見えない状況で、仮設住宅暮らしを続けている人もいる。
孤独死や自殺の問題はこれから増える可能性が高い。

こうした被災地の状況を、
見捨てるわけにはいかないと考えている人も少なくないが、
昨年のように無償ボランティアで、
遠方から何度も訪れるには限界がある。
継続的に被災地の自立支援をするため、
会社を辞めて被災地で事業を始めたのが、
埼玉県在住の理学療法士、木村佳晶さん(36歳)だ。
現地で彼に話を聞いた。
(取材日:2012年7月5日)

木村佳晶さんは2011年12月末に埼玉の介護老人保健施設を辞め、
被災地での介護保険事業の準備を行い、
2012年6月12日に岩手県陸前高田市の竹駒町で、
訪問リハビリステーションを始めた。
復興特区法による「保健・医療・福祉特区」の事業施設として認定されている。

木村さんは月曜~金曜までの5日間、
陸前高田の旅館に泊まりこみ、被災地で訪問リハビリを行い、
土日は埼玉の家族のもとに帰る生活を続けている。
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陸前高田の中心部はほとんど全滅にちかい震災被害で、
町の機能は失われてしまった。
現地の病院は手一杯で訪問リハビリする余裕はない。
一方、被災者の方は山奥の高台の仮設住宅に住んでいる人が多く、
なかなか運動する機会がない。
引きこもりがちになり運動機能が低下し、
日常生活がままならなくなる危険もある。
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そこで仮設住宅に住む被災者の方を中心に、
訪問リハビリをスタートさせた。
ボランティアではなく介護保険事業としてお金をもらう。
(患者さん負担は1単位20分=305円)

木村さんは事業を始めた意図についてこう話す。
「昨年は埼で働きながら、
休日を使って被災地にボランティアできていた。
しかしそれでは時間的にも制約があり、
またボランティアで続けるには、経済的負担が多く、
今後長く続けていくのは難しい。
そこでボランティアではなく事業化することにした。
事業化すれば自分の経済的な負担が少なり、
かつ継続的に被災地支援ができるようになる」

被災地の復興需要を見込んだ便乗商売とは違う。
陸前高田では理学療法士が不足しており、
現地の人の商売を邪魔するわけではない。
あくまで被災地で不足している機能を補うという、
支援の基本原則は崩していない。

またこの事業には津波被害にあった地元の方が協力しており、
外の人間だけでやっているわけではない。
木村さん以外に働いている理学療法士は、
実家が気仙沼や大槌町にある被災者家族の方もいる。
「2~3年過ぎ、事業が軌道に乗れば、
地元の理学療法士に任せたい」と木村さんは話す。

ただ木村さんの想いはリハビリ支援にとどまらない。
「もともと被災者を支援したいと思って始めたこと。
リハビリという観点で仮設住宅の被災者の方にお声掛けし、
それをきっかけに生活の悩みを聞いたりして、
孤独死などを防ぎたいというのが一番の狙い」

やみくもに何か与えるだけの支援ではなく、
ただ話を聞きに来ましたという素人支援ではなく、
理学療法士という専門的観点から、
体の調子が悪くないか、運動不足になっていないか、
家で動きづらくなっていないかという切り口で、
被災者とコミュニケーションをとり、
体調面の支援だけでなく、
心のケアもしていくというものだ。

物資が不足しているという感じは今はもうほとんどない。
でも仮設住宅暮らしは変わらず、
より孤独感やさみしさを募らせている人も多い。
そのケアをするのに自然な形で入っていける。

今は1日2~3人の理学療法士で、
1日10数件程度、お客さんのところに行き、
訪問リハビリを行っている。

無償ではボランティアの方がつぶれてしまう。
でも被災地で不足している機能がある。
そこを補うために事業化し、
支援する側にも負担少なく、支援が継続できるようになり、
被災地にとっても自分たちで不足している部分を、
補ってもらえることになる。

復興は1年、2年でできる話ではない。
この先も長く支援が必要になる。
現地の事業化による支援というモデルが、
他の地域でも広がっていけば、
共倒れしてしまう依存支援ではなく、
ともに自立ができる支援になるのではないかと思う。

・木村さんがはじめた事業
「あらや訪問リハビリステーション」
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0192-53-1122

※6日に陸前高田取材、7~9日は石巻取材の予定。
引き続き被災地取材を続けます。

・木村さんは昨年11月にも取材しています。
会社を辞めて被災地で事業を始める理学療法士
http://kasakoblog.exblog.jp/16701019/

・被災地本「検証・新ボランティア元年

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by kasakoblog | 2012-07-06 21:49 | 東日本大震災・原発

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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