復興の兆し?1:被災地に観光バス続々。テントで営業する津波被災者
2012年 07月 10日

団体観光客を乗せた観光バスがいっぱい来ていることですかね」
あるボランティアがそう言っていた光景を、
私も目の当たりにした。
津波被災地に続々と大型観光バスが来るのだ。

津波で町がほぼすべて壊滅し、
廃墟と化した宮城県石巻市門脇町・南浜町一帯に、
私がいた1時間で約10台は観光バスが来ただろうか。
この一帯はガレキもほぼ片付けられ、
壊れた建物もほとんど解体され、
何もない更地のようになっているのだが、
骨組みだけ残されたコンビニの横に、
駐車場が整備されていて、
そこに続々と観光バスが駐車する。
バスからぞろぞろ20~30人の観光客が降りてきて、
地震、津波、火災被害で今もなお震災の傷跡が残る、
門脇小学校などにカメラを向けて立ち去っていく。
なんとも異様な光景だった。

小学生が野球の練習をしているのもなんとも異様な光景だったが、
やる場所がほとんどないのだから仕方がないとは思うが、
子供たちの心境ってどうなんだろうとか考えると、
なんとも複雑な心境だった。
※下記は2011年4月20日撮影

私は震災後、この場所に2011年4月20日に来た。
まだガレキだらけで足の踏み場もない大変な状況だった。
車も建物もひっくり返ったままだった。
ところが2011年10月11日に来た時には、
きれいに片付けられて、ほとんどが更地になっていた。
ただその時にはまだ観光バスはいなかった。
3連休だったにもかかわらず。
私は被災地観光は基本的にした方がいいと思っている。
1つは、テレビや新聞じゃなく、自分の目で現場を見ると、
リアリティも違うし、何か強く感じるものがあるはずだということ。
もう1つは、現地にお金を少しでも落とすきっかけになるからということ。
そうは思っていたが、個人で来る分にはそんなに目立たないのだろうが、
大型バスで何十人も降りてくると、ものすごく目立ち、
被災地の写真を撮影している私が言うのもなんだけど、
なんだか被災地が見世物のような気もして、ちょっと複雑な思いもした。
そこから数十メートル先にも、
観光バスが止まっているスポットができていた。
2011年4月20日に訪れた時にはすでにあった、
廃墟と化した町に「がんばろう!石巻」と書かれた、
たて看板の周りがこれまた整備されていて、
観光客がそこも訪れていたのだ。



その前に仮設テントができていて、物を売っている店があった。
なんとそこで店を開いている1人は、
まさにこの津波で流されてしまったこの場所で、
洋品店を経営していた人だった。

「津波で店、流されて、今、借上住宅に住んでるけど、
何かしなくちゃはじまらないし、
お金も稼がなきゃやってけないから、
それで今年3月頃から店を始めたのよ」
と、ここで洋品店を経営していた遠山弘毅さんは語る。

観光バスが多い土日限定で店を開いている。
「ただ、ここで洋服売っても売れるわけないから、
名産品仕入れてきて売っているのよ」と説明してくれた。
「とにかくよ、ここに県外の人が、
来てくれること、そして見てくれることが一番ありがたい」
そう話してくれたのがとても印象的だった。
できるだけ現地の状況を知ってもらおうと、
テントには311直後の写真を新聞社などから借りて展示している。
もちろん現地の人には観光バスが来ることを、
心情的によく思わない人もいるだろう。
同じくここで家を流された人に聞くと、
「まあなんか感じてくれればいいんだけどね」
とちょっと複雑な表情を見せていた。
でもそうでない人もいて、
遠山さんのように、バスが来ることをきっかけに、
一歩歩みだそうとしている人もいる。
観光客もただ更地となった津波被災地の写真を撮るだけでなく、
ここで遠山さんと話で被災状況を聞いたり、
物を買って支援ができれば、
それはいい経験になるに違いない。
※写真比較:上は2012年7月撮影、下は2011年4月撮影


そんな風に被災地は少しずつ変わりつつある。
もちろん阪神大震災なんかの状況と比べたら、
カメのような復興の遅さなのかもしれないが、
かすかではあるが復興の兆しが、
少しずつかいまみえてきた。
ぜひまだ被災地に行ったことがない人は、
自分のこの目で被災地を見て、
できればどこかで被災者の話を聞き、
そしてお金を落としていくといいのではないかと思う。
でもできれば今度、どこかで災害があった時は、
もっと早くきて、ボランティアをする方がいいと思うが。
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