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被災地観光でもボランティアでもなく~震災の縁を通じた友達として

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「先生はね、去年、とっても素敵な新しいお友達ができたんですよ。
今日はそのお友達が保育所に遊びに来てくれて、お歌を披露してくれます!」
子供たちに向かってそう話すのは、
宮城県石巻市の石巻保育所の所長、若生眞理子先生。
若生先生がお友達として紹介したのは、
東京でバンド活動をしている金子友也さん。
金子さん率いるバンド「Wing Swings」が子供たちの前で、
映画「となりのトトロ」の主題歌「さんぽ」を演奏し始めると、
金子さんの歌声がまったくいらないぐらい、
子供たちのうれしそうな大合唱が始まった。
※写真左:金子友也さんと一緒に昨年震災ボランティアで訪れたカメラマンの高橋昌也さん
※写真中:金子友也さん 写真右:若生先生

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さらに「ドラえもんのうた」「アンパンマンのマーチ」、
テレビ番組「ひらけ! ポンキッキ」の「ぼくらはみらいのたんけんたい」と、
立て続けに子供たちの大人気曲が披露されると、
保育所中が子供の大合唱の声で響き渡っていた。

若生先生と金子さんが出会ったのは2011年4月のこと。
石巻市内で津波被害により、
再開ができない保育所の代替施設として、
石巻市中央児童館が選ばれた。
児童館で働く若生先生のもと、
震災ボランティアで石巻市を訪れた金子さんが、
たまたま児童館を訪れ、子供たちと遊んだことを、
若生先生が記憶していた。

「ほんとにあの時は助かったんですよ!子供たちと遊んでくれて」
と若生先生はその時のことを、つい数日前のことのように話す。

金子さんは2011年6月にもボランティアで石巻市を訪れ、
児童館を訪れ、若生先生と出会っていた。
その後も石巻へ行きたいと思いつつ、
なかなかタイミングをつかめず、2012年になった。
これまでビジュアル系バンドとして活動していたが、
メンバーもファンも楽しめる音楽をしたいと、
ビジュアル系バンドは解散し、2012年に新たなバンドを結成していた。

新バンドのコンセプトは「翼」。
昨年の被災地で経験した助け合いの心を目の当たりにし、
お互いがお互いを支えあう翼になることこそ、
音楽活動の原点ではないかと思った。
アーティストもファンも業界の金儲けのために、
金をむしりとられ、疲弊することを目の当たりにしていた金子さんは、
アーティストもファンも互いが助け合い、楽しみ、
前を向いて歩けるような音楽活動にしていきたいと考え、
新バンドを結成した。

ただ新たに組んだバンドのメンバーは被災地に行ったことがない。
バンドのコンセプトを理解してもらうためにも、
自分が昨年被災地で感じた想いを経験してほしいと考えた。

若生先生に電話し、何か僕たちにできることはないかとたずねた。
いろいろ話をしている中で、
音楽をしているなら子供たちの前で演奏してほしい。
曲は何でもいいが、今年、保育所がテーマにしている、
「ぼくらはみらいのたんけんたい」だけは、
必ず歌ってほしいということになった

「子供たちの中には家を津波で流されて、
仮設住宅などから通っている子供たちもいます。
ご両親が前向きになれず、不安を抱え、
それを子供たちにあたってしまう家庭もあります。
でも子供たちは保育所にくれば、
そうしたことも忘れて、元気に遊んでいたりもします。

そこで今年のテーマは、“自分で勇気を出して戦うこと”にしました。
“戦う”というのは相手に暴力をふるうということでなく、
何かを勝ち取るために、仲間たちと協力し、
自分自身が率先して動くことです。
そんな夏祭りイベントを3日間やる前の日に、
金子さんに子供たちが元気になるような、
曲をやってくれたらなと思いました」(若生先生)

また保育所は年度予算が決められているため、
足りないものがあっても年度中に新たに買うことが容易ではない。
石巻保育所は震災後、新たに0歳児を受け入れるようになったが、
0歳児の体重を量るヘルスメーターがない。
それと、高すぎず、低すぎないテーブルがないのに困っていたので、
できればそれがあると助かると若生先生は金子さんに伝えた。
金子さんは募金を集め、
若生先生から要望があった品を持ち、
2012年7月9日に保育所を訪れ、音楽を披露した。

子供たちが音楽演奏に大喜びしたのは、
人気のアニメソングを中心にしたからだ。
でも実は当初、金子さんは童謡中心で曲目を考えていたという。

「うちの母親が栃木で保育士をしているので、
石巻で披露する前に場慣れするため、
母親にお願いして、栃木の保育所3ヵ所で歌を披露することにしたんです。
でも1ヵ所目、童謡中心に歌を歌っても、子供の反応はイマイチ。
そこで2ヵ所目の保育所で、子供たちに直接、
何を歌ってほしい?と聞いたら、アニメソングのリクエストが。
その場でアニメソングをやったら大うけしたんです。
その経験があったので、石巻保育所でもアニメソング中心にしました」(金子さん)

私は昨年来、疑問に思っていたことがある。
被災地支援、被災地ボランティアと称して、
有名でもないアーティストがきて、
自分たちのオリジナル曲を披露する。
でもそれって被災者の人は喜ぶのだろうかと。

例えば超有名なアーティストがきたら、
それは被災者を勇気づけるだろう。
でも見たこともアーティストがきて、
聞いたこともない歌を歌われても、
正直、私が被災者だったらイヤだなと思う。
福島のイベントで自分たちが作った、
反原発ソングを歌っていたアーティストがいたが、
この場でこの時期にやる曲か?といった思いをしたこともある。

でもこんな風に、子供たちが聞きたい、
歌いたい曲を演奏すればこんなにウケる。
当たり前の話だ。
支援は自分たちの音楽活動の宣伝の場ではない。
支援される側が望むことをやれば、
喜んでもらえるに決まっているが、
実際、新ボランティア元年ともいうべき2011年は、
自己満足ボランティアが自分のしたいことを、
被災地で押し付けるともとられかねないことも少なくなかった。
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子供たちは大喜びだった。
来てもらった先生たちも大喜びだった。
そして今まで被災地に来たことがないバンドのメンバーや、
同じく被災地に来たことがない金子さんのお母さん、
その友達で保育士で紙芝居を披露した田部井さんも、
またとない経験をしてうれしそうだった。

今はよほどの専門的な支援でない限り、
被災地に一般のボランティアはもういらないかなと私は感じている。
先日、知り合った東京のボランティアさんの話によると、
ある被災地の自治会長さんはボランティア受け入れ疲れで、
疲労困憊、もううんざりという様子だったという。

でもだからといってただ大型観光バスに乗り、
被災地の写真だけ撮って帰るのでは、
被災地に来ても感じ取れるものが少なくなってしまう。

ならば今回、金子さんが企画したような、
単なる観光でもなく、単なるボランティアでもない、
震災がきっかけで知り合った縁を通じた、
友達としてのつながりからの活動ぐらいの感覚が、
双方にとってちょうどいいのではないだろうか。

何度か被災地に行ったことがある人が、
震災で知り合った縁を通じ、
今まで被災地に行ったことのない人を連れて行き、
被災者ともふれあうような行程を組めば、
より多くの人が被災地のことを知り、
被災地に今まで以上に関心を持つようになる。

受け入れる被災地側としても、
善意の押し付けと思いかねない、
自己満足無償ボランティアにはうんざりしているだろうが、
昨年、震災をきっかけに知り合ったボランティアの方が、
友人として遊びにきたぐらいの感覚がちょうどよいのではないか。
その時、何かピンポイントでどうしても困ったことがあれば、
相談すればいいわけだし。

被災地にとって一番恐れているのは、忘れられること。
でもだからといって善意の押し付けボランティアはもういらない。
たまに来てくれて話をするぐらいが、
ちょうどいいのではないかと思う。

単なる被災地観光でもなく、
でもいるかいらないかわからないボランティア活動でもない。
震災がきっかけで知り合った縁を、また新たな人を連れてきて、
お互いに縁を深め、人的ネットワークを広げていけるような、
そんな関係性が築ける活動をしていけば、
また何か災害があった時に、
お互いがお互いを助け合う「翼」になれるのではないか。

今回の震災での大きな教訓の1つは、
同時被災しない遠隔地の知人を持つことの重要性。
せっかく震災がきっかけで知り合ったのだから、
友人・知人としてたまに被災地に行くことで、
本当の「絆」がこれからできていくのではないか。

まだ絆なんてどこにもできていない。
昨年あったのは縁だけだ。
その縁を絆にしていけるかどうかは、
これから5年、10年と、
お互いが負担にならない程度に、
関係を続けていくことではないかと思う。

・復興の兆し?1:被災地に観光バス続々。テントで営業する津波被災者
http://kasakoblog.exblog.jp/18349955/

Wing Swingsホームページ
http://wingswings.web.fc2.com/

・バンドと客を食い物にする音楽業界からの脱却~元ビジュアル系バンドマンインタビュー
http://kasakoblog.exblog.jp/18141274/

・被災地取材本「検証・新ボランティア元年

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by kasakoblog | 2012-07-13 19:55 | 東日本大震災・原発

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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