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石巻市に移住した理学療法士。自立支援のための予防事業を視野に

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被災地でのボランティア事情は、大きく様変わりしている。
被災地に長期的に自立支援をしようという個人や団体ほど、
無償支援のあり方には疑問を持ち始め、
ややもすると自立支援を妨げかねない無料ボランティアから、
有償ボランティア、もしくは事業化を通じた、
被災地支援に移り変わってきている。

7月上旬に被災地で取材した際、
こうした動きを始めている人に何人か取材したが、
今日はその一人、理学療法士の橋本大吾さん(31歳)を紹介したい。
(取材日:2012年7月8日)

橋本さんは2011年12月末に石巻市に移住した。
所属しているリハビリ職の個人ネットワーク集団「face to face(FTF)」が、
他のボランティアとはまったく違い、
専門職を活かしたピンポイントの支援活動が行政にも認められ、
石巻市から委託事業を請け負うことになったからだ。

FTFは東京や大阪をはじめ全国各地から、
リハビリ職の個人が被災地に集まり、
支援をするスタイルを続けていたが、
委託事業の請負が決まったため、FTF石巻事務所を開設。
橋本さんが石巻駐在を希望し、移住することになった。

委託事業の内容は、病院機能が失われた、
石巻の雄勝地区および河北地区の仮設住宅を回り、
仮設に移ったため、外に出る機会が減り、
運動機能が低下してしまっている方へのリハビリや、
仮設住宅のトイレやお風呂に手すりをつけるといった、
バリアフリー化事業の手伝いなどだ。

それにしても31歳にして被災地に移住とは思いきった決断。
被災地にはヒッピーまがいというか、
ドロップアウトしたバックパッカー的な人が、
被災地にただなんとなく長期でボランティアで、
ずっと滞在しているといった感じの人をよく見かけるが、
事業請負による事務所開設に伴い、
住民票も移して移住というのは相当な決断だろう。

「ボランティアというか僕は石巻市民でもありますからね」
という言葉を聞いた時、
腰掛けのボランティアとは違う立場に、
身を置いていることを改めて認識した。
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なぜ石巻に移住したのだろうか。
委託事業がずっと続くとも限らない。
橋本さんもそう見ているようだ。
「あくまで僕らは現地の病院機能が回復するまでのつなぎ役。
石巻市内でも徐々に回復しているので、
いずれ委託事業は必要なくなるかもしれない」

「この震災を通じて感じたのは、もっとその方やご家族に
知識があれば!という事でした。
体の機能や役割、病気や怪我に対する正しい知識があれば、
病気や怪我をする前に未然に防ぐ予防ができるはず。
でもそういうことをきちんと学校で教えないから、
医療費がどんどん右肩上がりに膨らんでいく。
高齢化社会の社会保障費問題を解決するには、
国民が自分の体や病気、障がいのことを知り、
できる限り予防し、自己管理できる人を増やすことが、
増税で補うだけでなく大事な対策ではないでしょうか」

そこでFTFとしての委託事業とは別に自ら起業し、
「体のまなびや」という、
体についてまなぶ教室を石巻で始めたいと考えているというのだ。

「国や行政は重度の病人は相手にしても、
健康な人に対する啓蒙活動は不十分。
そこを補うのは民間事業だと思います。
被災地の人が自分の体のことを知り、
病気にならないような予防知識を学べば、
被災地の自立支援にもなる。

僕自身もボランティアや委託事業ではなく、
継続的な事業として活動を続けていける。
ゆくゆくは『体のまなびや』教室を、
石巻だけでなく他の被災地や過疎化している地域、
さらには都市部にも展開していきたい」
と壮大な夢があることを語ってくれた。
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東日本大震災とは単に被災地だけの問題にとどまらず、
これまでごまかしてきた日本社会全体のさまざまな問題が、
一挙に表出した出来事だったと思っている。
特に被災地で支援活動に携わった人は、
被災地での美談なんかではなく、深刻な地方の問題を目の当たりにし、
それが他の地域でも当てはまる問題であることに気づき、
この震災をきっかけに、
これまでのやり方を改めなければならないと行動を始めている。

特にFTFの人たちは理学療法士や作業療法士という職業柄、
そもそも仕事自体が自立を支援する内容であることだからなのか、
他のボランティアとはまったく違うレベルの意識で、
被災地支援の活動を通じて社会と向き合い、
行動していることに度々驚かされてきた。
でもこういう人たちが震災をきっかけに目覚め、
今までのやり方を変え、社会問題に真っ向から向き合っているのは頼もしい。

「少子高齢化が進む日本で、高齢者が高齢者を介護する、
老老介護が大きな問題となっている。
老老介護に限らず、自分の家族である日突然、
介護が必要な人が出てしまうと、
介護は一生死ぬまで続くことになる。
金銭的にも肉体的にも精神的にも大変な負担になります。
だから介護やリハビリが必要にならないよう、
その前段階で健康を維持できるような、
予防事業を立ち上げたいと思っているんです」

「しかし、病気や怪我はすべて予防できるわけではありません。
もし、病気や怪をしてしまい、障がいを持ってしまっても、
周りに理解のある人が多ければその地域が
より暮らしやすくなると思います。
病気や怪我の知識を知ることは、
その人自身の予防につながることはもちろん、
その人の家族、周りの人、
その方が生活する地域そのものが、
暮らしやすくなることにもなるのです」


社会保障費が増えるから増税とか、
電気が足りないから原発を動かすとか、
未だに日本は今までの水準を維持することばかりに夢中で、
根本的にその前段階の取り組みの工夫によって、
社会保障費を減らすとか使用電力を減らすとか、
そういう工夫を行う政策が実に少ない。
だからどれだけ増税しても足りず、
原発を動かさないと電気が足りないという、
何の問題の解決の見込みもない負の連鎖を繰り返している。

国民に体や健康についての正しい知識を教え、
普段から病気にならないような体作りをしてもらうとか、
予防に対する知識を習得させるとか、
そうした対策は絶対に必要だと思う。

そういうことを31歳の若者が被災地支援を通じて気づき、
移住を決断して予防事業に乗り出そうとしている。

まだまだ日本は捨てたもんじゃない。
それと同時に震災をきっかけに、
国民一人一人が変わらなければいけないんだと思う。
まだ既得権益にすりよる国民が多いから、
この国は変われず、問題は先送りでどんどん膨れ上がっている。

日本は変わった。世界は変わる。
あなたは変わった?
既得権益はあなたです。
(かさこマガジン2)より

変わって行動している人が増えている。
そういう人が成功すれば、
社会問題の解決の一歩となるのではないか。
継続的に取材をしていきたいと思います。

・FTFホームページ
(トップページの写真はFTFと同行取材した際に、
私が撮影したものが使われています)
http://ftfreha.net/

・被災地取材本「検証・新ボランティア元年

もし何かAmazonで買い物する方いらっしゃれば、
下記よりお願いできれば助かります。
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※8/5にサンクチュアリ出版にて旅写真講座開催!参加者募集中
http://www.sanctuarybooks.jp/eventblog/index.php?e=431

by kasakoblog | 2012-07-29 22:47 | 東日本大震災・原発

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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