時代分析には優れている「自分探しが止まらない」
2012年 09月 01日
「自分探し」という言葉をキーワードに、
今までの時代を体系的に整理しているので、
「ああ、そういえばこんなのあったな!」と、
かつてのムーブメントや騒動を振り返るのには参考になる。
ここに挙げられている例でいえば、
中田英寿、須藤元気、イラク人質事件、イラク香田さん殺害事件、
XJAPANのToshi、猿岩石、あいのり、「流学日記」「絶対内定」、高橋歩、
藤原新也、沢木幸太郎、軌保博光、ホワイトバンド、
自己啓発系居酒屋「てっぺん」、映画「ザ・ビーチ」など。
メディアを賑わせたり、多くの人に影響を与えた作品などを、
「自分探し」というキーワードでよくまとめてある。
時代分析としてはとってもおもしろい。
また「自分探し」をするのは若者が悪いわけではなく、
労働環境の変化によって、そうせざるを得なくなったことや、
逆にこうした自分探しニーズをビジネスにして、
儲けようとしている人を批判している点は特筆に価する。
高橋歩批判なんかは痛快。
ただ難点は、
・自分探し=自己啓発=ポジティブ・シンキング=すべては、
アメリカのニューエイジに原点があるという論調で、
ポジティブ・シンキングまでも批判しているように書かれていること。
(著者はまとめでポジティブ・シンキングは否定しないといっているが、
本書を読む限り、ポジティブ・シンキング=あやしげなニューエイジだから、
すべてダメといっている風に読み取れかねない)
・時代分析には優れているが、
とにかくすべてに否定的な論調なので、
最後まで読み終えても、明るい未来や希望、
解決の糸口がまったく見出せない。
もちろん本書が、解を提示するものではなく、
単にこれまでの時代分析した本だから仕方ないのかもしれないが、
とはいえ最後にとってつけたような、
著者による統括によると、
この世界に立ち向かうことができるような社会を作るためには、
それに見合うだけの努力や研鑽を各人がすべきだろう。
こういう世の中を生きるために欠かせない武器こそ、
「自分探し」に振り回されず、
前向きに生きる姿勢であると信じている。
と書かれており、
なんだ、さんざん本書で否定的に書いてきた、
自分探し=自己啓発のメッセージと同じじゃないか、
と最後にうんざりさせられる。
自分探しをめぐる時系列的事実だけに絞った分析の書にするか、
自分探しを食い物にする悪徳ビジネスだけにフォーカスし、
そうしたビジネスにひっかからないようにしようという書にするか、
著者自身の今後の生き方のヒントとなる提案をあつくするか、
そのどれかにしないと、
素晴らしい時代分析がなされていても、
結局すべてはニューエイジ系でポジティブシンキングを唱える、
怪しいビジネスだけど、
今後を生きるには各人の努力や研鑽、前向きな姿勢って、
なんやねん!という読後感の悪さにつながってしまう。
時代分析が秀逸で、
具体的な事象も整理して網羅的に取り上げられており、
その点は素晴らしく参考になるだけに、
最後がとっても残念だなと思った。
・「自分探しが止まらない」
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