「V字回復の経営―2年で会社を変えられますか」三枝匡著。
不振にあえぐ潰れそうな事業をどう立て直すか、
著者がその会社に乗り込んで、どう改革し、
不振事業をV字回復させたのか、
リアルな体験をベースに描かれている。
企業小説的なおもしろさもあるが、
とにかくこの本を読むと、
きっと「自分の会社にもこんな雰囲気ある!」
と他人事ではなく読めること。
いかに企業がダメになっていくか。
どうやって組織が腐敗していくかがよくわかる。
そしてここで特徴的なのは、
社員が自分は被害者であると思っていること。
開発部門は営業が悪いといい、
営業部門は開発部門が悪いという。
部下は上司が悪いといい、
上司は経営陣が悪いといい、
経営陣は社員が悪いという。
そう、みんな自分は悪くない。
誰かのせいだと批判ばかりしていて、
自分は何もしないというのが、
全体に蔓延してしまう。
こうなると組織はどんどん衰退し、
右肩下がりになっていく。
まるで今の日本のように。
また恐るべきどんぶり勘定も行われている。
1部上場企業にもかかわらず、
事業ごとの損益がきちんと計算されていない。
現状認識が正しくできておらず、
適当な数字でごまかされているから、
危機感がなく、どんどん知らない間に悪化していく。
そういえば信じられない話だが、
JALは便ごとの収支をきちんと計算していなかったという。
再建で便ごとに収支を出し、
客数に応じて機種を変えるようになったところ、
大幅なコスト削減ができたそうだ。
そんなこともしていなかったのか。
中小企業じゃあるまいし、信じられない、
と思うのだが、この本を読んでも、
大企業って結構ザルのようだ。
企業が大きくなり、部署がいっぱいできると、
仕事のための仕事をするようになり、
客のために仕事をするとか、
全体利益のために仕事をするとか、
そういう発想がなくなっていく。
部分最適ばかり考えて全体最適を考えない。
つまり自分さえよければいい。
自分の部署さえよければいい。
だから自分はがんばっているから悪くない、
とこういう話になる。
今、日本が衰退しているのは官僚のせいだが、
その官僚がまさにこれ。
国のためではなく、自分たちの省益のためしか考えていない。
だから官僚はまじめに仕事をしていても、
国のためにならないことをしているのだ。
こうして無駄な部署が乱立し、
それぞれの部署の利害のために、
社内政治、社内の権力闘争を始める。
もうこうなってくると完全に組織はどうしようもない状況だ。
こうした腐った組織をいかに改革していくか、
ものの見事に描かれていて痛快に読める。
抵抗勢力がいっぱい出てくるが、
それもどんどんと封じていく。
この本を読むと、他人事とは思えなくなってくる。
今、自分の会社がそんな状況じゃないかとか、
日本全体がまさにこんな状況じゃないかとか、
組織の衰退、腐敗を考える良書。
ぜひ読んでほしい1冊。
「V字回復の経営」三枝匡著
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