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金には代えられない。海を子供に引き継ぐ~原発を止めた漁師たち2

関西の北側は「原発銀座」になっているにもかかわらず、
関西の南側、三重~和歌山に原発は一切ない。
しかし三重にも和歌山にも原発計画はあり、
原発推進派、原発反対派に分かれて壮絶な闘争が繰り広げられた。
電力会社の工作員が反対派を寝返らせるため、
「若い漁師なんて酒を飲ませて女を抱かせりゃそれでOK」
といったような露骨な接待攻勢はもちろん、
原発視察洗脳旅行、親族の就職の世話、
反対派切り崩しのためのデマの流布や分断工作など、
推進に寝返らせるために、ありとあらゆる活動を行なっていた。

和歌山の対岸、徳島にも原発計画があり、
その当時、反対に回った徳島の漁村・伊座利の漁業協同組合の組合長、
吉野清さん(63歳)こと、清のおっちゃんは、
こんな風に語ってくれた。

「今、この歳になれば、電力会社から何億円積まれようが、
豊かな自然を守ることの方が、はるかに大事だってことはわかるけん、
反対していた20~30歳代の頃に、1億円積まれたら、
賛成に寝返ったかもしれん(笑)」
と話してくれた。

和歌山の日高原発計画が持ち上がった際、
漁師の一人、濱清一さんは賛成反対を決めかねていた。
しかし断固として原発反対に決めたのは、
電力会社主催の接待・洗脳原発視察旅行の時だったという。

電力会社は原発立地計画がある付近の住民に、
いかに原発が素晴らしいものであるかを知らしめるため、
みなさんの電気料金を使って、
すでに原発ができている自治体に接待旅行を開催する。

原発ができたおかげで道路が整備され、
豪華な施設が建てられ、
いかに日本の原発が安全かを、
原発そばにあるPR館で洗脳させる。
夜は乱痴気騒ぎ。
接待漬けで「原発推進に回るといいことあるかも」と思わせるのだ。
人間の心を動かすなんて簡単なものだ。
金と酒と女を積めば、コロっと寝返る。
そういうことがあったからこそ、
日本各地に原発ができたともいえなくもない。
まるで北朝鮮の洗脳旅行みたいなものだ。

いいところばかりを見せる原発洗脳旅行に、
濱清一さんは何ともいえない違和感を覚えていた。
電力会社が組んだプログラムだけでは、
現地の真の姿が見えてこないと感じたのだろう。
ツアーの合間を見て、原発近くにいた漁師に声をかけた。
しかしろくに話してはくれない。

濱清一さんは、新聞の切り抜きをその漁師に見せた。
新聞には、原発ができたことで、その温排水により、
アワビやサザエが取れなくなったという記事だった。

それを見た漁師は一言こう言ったという。
「お前に息子がいるのか?(跡継ぎの)息子がいるのなら、
原発だけは絶対にやめておけ!」

この時、濱清一さんは原発反対を決めたという。
漁師をやっている息子=濱一己さんのために、
原発を作らせるわけにはいかないと。
その後、息子とともに、14年にも及ぶ反対運動を続けた。
この濱親子の活躍により、日高原発計画は白紙となった。

札束に目がくらんで寝返る漁師も多い中、
なぜ息子の濱一己さんもまた反対を続けられたのか。
「原発作られたら、漁ができなくなる。
いやできたとしても原発近海でとれた魚を、
大阪など都会の人に食べてほしくない。
つまり原発ができたら仕事も失うし、家も失う。
だから原発に反対してきた」
と濱一己さんはいう。
濱家から日高原発予定地はわずか800m。
ここに原発ができたら間違いなく終わりだろう。

濱一己さんは今年で63歳になる。
時々、漁にも出るが、
今は長男に民宿経営を任せ、
次男が漁師を引き継いでいる。

「跡継ぎがいるなら原発なんかやめておけ!」
父・清一さんの意志を引き継いだ一己さんが、
今度は自分の息子に海を引き継いだ。

ただ一己さんの息子さんたちは、
父親がなぜこうまでして原発反対運動をしていたのか、
福島原発以前に話をしても、あまり関心はなかったようだったという。
「『ふう~ん』とかぐらいしか反応がなかった」(一己さん)
でも福島原発事故が起きて、息子たちの態度が変わった。
「お父さんはえらいことしてたんだな」と。

濱家は自然の恵みで生きている。
福島原発事故が起きて、一己さんは他人事とは思えず、
「ほんとに日高原発を止めてよかった」としみじみと語る。
原発の危険性を訴えても、
チェルノブイリ原発事故が起きても、
日本の原発安全神話はまったく揺るがず、
「事故が起きるかもしれない」という反対派は、
ややもするとおかしな人間と見られかねなかった。
しかし3・11でその見方は大きく変わった。
「反対派が言っていたことの意味が今になってよくわかった」と。

伊座利の清のおっちゃんは、
徳島での原発計画が持ち上がった際、
推進派の勉強会にも、反対派の勉強会にも行ったという。
でもそこで一番印象に残っていたのは、このことだった。
「推進派の学者さんはこういうんじゃ。
『原発事故が起きるのは天文学的確率。
つまり日常生活では絶対に起こり得ない数字』だと。
それを聞いておかしいと思った。
所詮、原発だって人間が作り、人間が動かしているもの。
完璧な人間がいない以上、
事故が起きる確率が天文学的なんてあり得ないはずやと」
まさにその言葉通り、日本でも事故が現実のものとなった。

和歌山の原発を止め、徳島の原発を止めたからこそ、
和歌山でも徳島でも漁師が生活できている。

でも自然の恵みで生かされているのは、
田舎に住む漁師だけでははない。
それを食べて生活している都会の人も同じだ。

伊座利の清のおっちゃんは、
「今、この歳になればわかる。
どれだけお金が積まれても自然は絶対に売り渡さない」と言った。
伊座利では原発に限った話ではなく、
自然の恵みを守るため、アワビ漁は夏場に限定し、
かつ小さなアワビはとらない、1日とる量の限度を守るなど、
乱獲防止の取り組みにも力を入れている。

乱獲すれば今はボロ儲けできるかもしれない。
しかし自分たちはよくても、子供や孫が困ってしまう。
子供や孫がこの土地で暮らせなくなってしまえば、
大事なふるさとが失われてしまう。
だからこそ彼らは目先の金に目を奪われず、
長期的な視野にたって、自然の豊かさを選んだのだ。

当たり前の話だが、
人間は食べ物がなかったら絶対に生きていけない。
都会暮らしが長いと、食べ物は何の苦労もなく、
金を払えばその辺で簡単に手に入るものだと思いがちだ。
しかしごはんにしても野菜にしても肉にしても魚にしても、
汚染されていない海、大地、空気があるからこそ、
安全な食べ物が手に入る。
豊かな自然があるからこそ生かされている。

でもすっかり今の人たちは忘れてしまった。
命よりも金が大事。
子供や孫より自分が大事。
遠い未来より今が大事。

私たちは過去より今、今より未来の方が、
科学技術の発展などにより、豊かな社会になると思い込んでいた。
右肩上がりで成長・繁栄し続けるものだと思っていた。
しかしそれは間違いだった。
それどころか若い人ほど損をする、
とんでもない社会ができ上がってしまっている。

目先の金にたぶらかされず、
原発に断固として反対した人たちは、
子供や孫のために生命の源である、
豊かな自然を引き継ごうと必死に戦い、自然の恵みを守った。
そういう人たちのおかげで、
都会に住む人たちも生かされている。

当たり前といえば当たり前の話なのだが、
そんな当たり前のことが、今、すっかり忘れ去られようとしている。
人は忘れやすい生き物。
何度となく同じ過ちを繰り返す。
だからこそ「天文学的確率」なんて、
あり得ないのかもしれないが・・・。

・映画「シロウオ~原発立地を断念させた町」
http://www.kasako.com/eiga1.html

・海はつながっている~原発を止めた漁師たち
http://kasakoblog.exblog.jp/19585208/

・参考文献「原発を拒み続けた和歌山の記録

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by kasakoblog | 2013-01-21 23:16 | 東日本大震災・原発

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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