儲からないのを不景気のせいにしない~原発を止めた漁師の漁の工夫
2013年 02月 03日
国に騙されないためには自分で稼げる力をつけることが大事」
先月取材した和歌山の日高原発計画を止めた漁師で、
民宿を経営する濱一己さんの言葉だが、
さすがはそういうだけはあって、
単に原発に反対しただけでなく、
ビジネス面での工夫もすごいと感心した。
漁は春から秋が中心なのだが、
冬は海が荒れていることが多く、
ほとんど漁にならなかったという。
冬の不漁をなんとかならないか。
お互いに海を守るため、
原発を止めた縁で知り合った、
対岸の徳島の漁師と情報交換をしていた際、
「濱さんのところは冬に太刀魚がいるのではないか?」
という話になった。
調べてみたところどうも冬場にもかかわらず、
太刀魚がかなりいるらしいことがわかった。
徳島の漁師から釣り方などを詳しく教えてもらった結果、
少し前までの数年間、冬場にもかかわらず、
太刀魚が豊富にとれて、大きな売上につながったという。
「このおかげで民宿も新築リニューアルすることができたんです」
太刀魚漁での思わぬ収入を使い、
今まで古かった民宿を建て替えし、
鉄筋4階建てのきれいで設備の整った民宿にしたおかげで、
民宿の方も好調のようだ。
儲からないのを「不景気だから仕方がない」
「地方だから仕方がない」とか、
時代や社会のせいにしたり、不満や愚痴ばかりで、
何の努力も工夫もしない人が多い。
そういう人が自分の仕事がうまくいかないのを、
政治家のせいにして、政治家に票をちらつかせ、
陳情という名の脅しを使い、
意味もない無駄な公共事業バラマキを引き出させようとする。
その無駄な公共事業の筆頭が原発なわけだが、
何の努力も工夫もしない地域や人間にとって、
原発は金が湧き出る魔法の箱だ。
だからこそ人の命や自然の豊かさなどクソ食らえとばかりに、
原発に飛びつき、かけがえのない恵みを売り渡し、
魂を金で売ってしまった結果、
後戻しできない破滅の道を歩んでしまう。
原発が来れば、漁も農業も観光も衰退する。
はじめは原発でボロ儲けできるが、
次々と新設しないと金が入ってこなくなるので、
電気の需給など関係なく、
原発という麻薬に犯された地域の人たちが生きるために、
原発が次々と増設されていくのだ。
しかしまがいものに依存した地域はもろい。
原発や公共事業などの麻薬を打てば、
はじめの数年間は元気になるかもしれないが、
しばらくすると麻薬の効力が切れてしまう。
でもこの時は自分の頭で考え、自分で行動し、
自分でビジネスを生み出す能力も気力もなくなっているから、
また政治家にお願いし、公共事業という名の麻薬を欲しがる。
その結果、日本はどうなったか?
無駄な公共事業で借金は膨れ上がり、
政権が変わる度に経済対策と称して、
無駄な公共事業をバラマキ続けなければならない体制になってしまった。
でもそれでこの20年間、景気はよくなったのか。
よくはならなかった。
なぜなら一時的な麻薬にしか過ぎないからだ。
死ぬまで麻薬を打ち続けるしかない。
自分の体が麻薬に耐え続けられるまで、
すなわち借金ができ続けるまでの話だ。
「自立できない人間が原発に頼る」という漁師の言葉は、
原発依存している地域に限った話だけでなく、
日本全体に突きつけられたメッセージだと思う。
「政治に期待することは景気対策」と多くの人が答え、
仕事がうまくいかないのを「不景気だから仕方がない」とあきらめる。
だからまがいものの原発や公共事業に依存するのだ。
自分で考え、自分で行動し、
工夫してビジネスを生み出す努力をしない。
そういう人が多いから日本はずっと「不景気」なんだと思う。
この漁師さんに学ぶところは多い。
冬は荒れているからダメだとあきらめず、
何かないかといろいろと情報を探って、
新たな「金脈」を見つける。
それで儲かったからといって、
一時のバブルのように遊んで使ってしまうのではなく、
それを民宿という、漁師とは違う分野に投資をする。
そうすることでまた新たにビジネスが広がっていく。
原発を止めた時のことについて取材をする前、
夕食時にこんな会話があった。
私と同行していた編集者が、
「ここは魚ももちろんうまいけど、ごはんもうまいですね!」
と言った。
すると濱さんはこんな話をした。
「実は随分前に常連のお客さんにこんなことを言われたんです。
『魚はうまいのにごはんがおいしくない。ごはんを変えた方がいい』
そのアドバイスに従って、ごはんをおいしいものに変えたんです」
原発反対闘争の最前線にいた人とは思えない、
この謙虚さというか、他人の声に耳を傾ける素直さ。
こういう柔軟な発想と人に聞く耳持つ度量があるからこそ、
少ないチャンスを物にして、
仕事をうまく進めているのだなと。
こういう姿勢でいれば、
いろんな人がアドバイスしてくれて、
それで悪いところが改善され、
またどんどん良くなっていく。
そういう好循環を自然と生み出している人なんだなと。
これを実践している漁師さんが、
「自立できない人間が原発に頼る」という言葉は非常に説得力がある。
不景気を誰かのせいにするのではなく、
お上に依存して選挙の度にねだるのではなく、
どんな逆境でも自分で物を生み出せるような人間になることが、
日本社会の真の活性化に必要なことなんじゃないかと思った。
・映画「シロウオ~原発立地を断念させた町」
http://www.kasako.com/eiga1.html
・海はつながっている~原発を止めた漁師たち
http://kasakoblog.exblog.jp/19585208/
・金には代えられない。海を子供に引き継ぐ~原発を止めた漁師たち2
http://kasakoblog.exblog.jp/19652366
・民宿「波満の家」
http://www3.ocn.ne.jp/~hamanoya/
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