復興はしてるけど風化も激しい~被災地・石巻レポート
2013年 07月 28日

まあ、今、津波被災地に来ても、
雑草が生えているだけで、言い方悪いけど、
見るものがないから仕方ないのかもしれないけど。
確かに復興はしているけど風化も激しい」
そんな風に語ってくれたのは、
津波で町がほぼ壊滅した宮城県石巻市門脇町・南浜町の道端で、
テントを張って被災地観光客に、
地元の名産品を販売している遠山弘毅さんだ。
遠山さんがテントを張っているのは、
かつて自身が経営していた洋品店があった場所。
津波で家は流され、今はもう跡形もない。
遠山さんと出会ったのは1年前の2012年7月のこと。
津波被災地一帯を歩いていると、
テントを張っている方がいたので話しかけてみた。
それが遠山さんだった。
その時、遠山さんは、
「津波で店、流されて、今、借上住宅に住んでるけど、
何かしなくちゃはじまらないし、
お金も稼がなきゃやってけないから、
それで2012年3月頃から店を始めた。
ここに県外の人が、来てくれること、
そして見てくれることが一番ありがたい」と語っていた。

するとまだテントを張ってがんばっているではないか。
でも昨年、話を聞いた時のうれしそうな表情はあまりなかった。
被災地観光客が明らかに減っているからだ。
ちょうど1年前に私がここに来て驚いたのは、
津波被災で廃墟と化した町に、
観光バスが何台も来ていたこと。
ひっきりなしに大型バスがやってきた。
それで遠山さんは名産品販売を始めたわけだ。
しかし今日訪れた時には、観光バスは1台のみ。
もう夏休みには入っている7月の土曜日にしては確かに少ない。
「まあ僕らだって時々、あの津波が夢だったんじゃないかと思うぐらい、
何事もなかったかのように錯覚することもあるので、
被災地以外の人が忘れてしまうのは仕方がない」
とも話してくれた。
「見るものがない」とは震災遺構のことだ。
例えば巨大な船が乗り上げているのがまだ見れるとか、
津波によってボロボロになった建物が残っているなら、
それを見ようと思う「観光客」はいるだろうし、
震災の生々しさを伝えることができる。
でももうすっかり片づいた感じがある。

私はこの場所に震災1カ月後に来ているので、
昨年夏に訪れた時は「すごい片づいたな」と思ったんだけど、
でもさらに1年たって、もっと片づいた。

ほとんど建物跡も残っていない。
もはやただの野原のように見える。
かつての状況を知らない人が来ても、
ここが被災地だといわれても、「観光の目玉」には残念ながらならないだろう。


ただ唯一ここには津波と火災で被災した、
生々しい傷跡が残る門脇小学校がある。
ところが先月から校舎が灰色のシートで覆われてしまった。
校庭を使う生徒の心情に配慮したためだという。
遠山さんは「地元民の心情からすると、
目隠しなんて中途半端な一時的な措置なんかしないで解体してほしい」
といっていたが、むしろシートで覆ったりなどせず、
震災遺構として残すべきだとの意見もあるという。
不謹慎な言い方をすれば、痛ましい校舎があれば、
「被災地観光客」が来てくれるかもしれない。
でも震災遺構を残したいという意見は、
単なる“客寄せパンダ”だけの意味ではない。
あの悲劇を二度と繰り返さないためにも、
痛ましい傷跡をしっかり残しておくべきだという意図もある。

実際、個人が建てたと思しき「津波襲来の地」といったような碑を2か所で見た。
わざわざ碑を建てるのは、忘れてしまいかねないからだ。
人は忘れやすい生き物。
2年が過ぎたあの大災害も次第に忘れ去られようとしている。
それは被災地以外の人だけに限らない。
だからこそ数年過ぎると、災害があった場所に家や町を作ってしまい、
また新たな悲劇を繰り返すことになるのだ。
忘れるにはまだ早いのではないか。
いや忘れているからこそ、
復興予算のでたらめな使い方が平然とできたり、
原発再稼働ごり押しする政党に投票したりしてしまう。
そういえば、今年、訪れた徳島県阿南市には、
かつて何度となく来ている大津波を忘れないために、
「災害は忘れた頃にやってくる」と題した碑が残されていた。

一昔前に原発計画があったにもかかわらず、
住民運動によって原発計画を阻止できたのかもしれない。
日本にいる限り、活断層の有無になんか関係なく、
地震被害にあう可能性がある。
津波、台風、大雨、火山噴火なども十分起こり得る災害だ。
国を守ること、国民の命を守ることとは、
災害を想定した町づくりをすることだと思うのだが、
311以降、5000回以上も地震が起きている、
圧倒的に地震が多い福島で、
未だ原因不明の湯気が福島原発から出て、
毎時2170ミリシーベルトものとんでもない高放射線量を記録したり、
放射能汚染水を海に流しちゃいましたとかいっているにもかかわらず、
原発再稼働の政党が圧勝してしまうのは、
政治家も国民もあまりにも忘れやすい性格だということだ。
忘れた頃に災害がやってくるのではなく、
人間が忘れてしまうからこそ、
災害がまたやってくるだけのことなのかもしれない。
・1年前の被災地・石巻レポート
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