エピソードなき正論に説得力なし~書評「テトラポッドに札束を」VS「クビでも年収1億円」「ゼロ」
2013年 11月 27日
しかし人生に絶望せず、移動ができなくても、ネットビジネスに力を入れ、
17歳でなんと月収1000万円になった――。
「テトラポッドに札束を」和佐大輔著。
こんな内容の本だったので大いに期待した。
自分には才能がないとか、不幸だとか、
本当は恵まれた環境があるにもかかわらず、
負け犬根性がしみつき、何の努力も工夫もしないで、
人生や社会を嘆いているような人をプラスに変えられるような、
そんな本ではないかと期待したからだ。
だって13歳まで元気だったのに、一瞬にして体の70%が麻痺しちゃうなんて、
こんな不幸なないはずなのに、
ネガティブになることなく、これだけ稼ぐなんてすごいじゃないか。
きっと素晴らしい本だと思ったのだが、
期待していた中身とは違って、読む気が失せた。
非常に残念な本。
もったいない。
ネットビジネスがうさんくさいとか、書いてある内容が共感できないとか、
そんなんじゃない。
エピソードが少なくて、ほとんどがうんちく話なので、
読んでいて説得力もなければ、新鮮味もない。
なんでこんな構成にしてしまったんだろう?
著者の問題というより編集者の問題が大きい。
せっかくの素晴らしい素材を駄作にしてしまった。
私が期待していたのは、なぜ絶望的な事故にあったにもかかわらず、
そこで腐らず、這い上がり、そしてどうやって具体的にビジネスを成功させたのか。
その詳細が知りたかった。
時には死にたいと思ったことはないのかとか、
こんな不幸な目に合っても自分を支えていたものは何なのか。
少しは書いてある。
でも1章と2章目のはじめ部分ぐらい。
ほんとあっさりとしか書いていない。
ここの部分を当時の心情描写など詳細に描いて、
1冊分ぐらいの分量で書いてほしかった。
そこは意図的にカットしてしまったようで、
その後の本の大半は、ひたすらうんちく。
トヨタとグーグルがどうだとか福沢諭吉の引用だとか、
下流思考だのコモディティ化だのドラッカーがどうだとか・・・。
もうほとほとうんざり。
書いてあることは間違っているとは思わないし、
その通りだと思うことも多いけど、
著者に期待しているのはありきたりの社会分析本ではない。
13歳で体の70%が麻痺したのに稼げている人間の、
生々しい実体験や感情の揺れ動きや、
そこから這い上がって成功したコツはなんだのかを知りたい。
別に著者にドラッガーがどうだとかグーグルがどうだとか求めてないから。
そんなことは誰でも書ける。
でもこの著者にしか書けないことがある。
そこを書かずに、上っ面の社会分析だけ書かれても興ざめしてしまう。
せめて著者の体験が本の8割ぐらいをしめ、
その後の2割で、体験に基づき、それを客観的に分析すると、
こういうことですよという記述があれば「なるほど」と納得できるんだけど、
そうではないから、ほんとつまらない。
頭のいい学生がネットからいろんな情報を集めて、
コピペでうまくレポート作っちゃいましたみたいなそんな感じだ。
でももしかしたら、不幸な経験に対してあんまり葛藤がなかったのかもしれない。
なんかこうゲームの点数競うだけ、ゲームのうまさを競うだけで、
なぜこのゲームに取り組んでいるのかとか、
それにどんな満足があり、どう社会に役立っているとか、
そういう視点が欠けていて、
「体が動けなくなったからネットで稼ごうと思い、
いろいろやったら稼げちゃいました。すごいでしょ」
という底の浅い内容にしか見えないようになっている。
ちなみにうさんくさいネットビジネスだからってケチつけているわけじゃない。
例えばこの著者なんかよりはるかにうさんくさい、
小玉歩氏の「クビでも年収1億円」は、著者がうさんくさいせいで、
アマゾンレビューにはレビューではなく情報商材に対する批判ばかりが書かれて、
極めて低評価なのだが、私はこの本を高評価し、ブログでも紹介した。
なぜか。
和佐氏の本のようにエピソードが少なくて、
ありきたりの分析ばかりの記述ではなく、
彼が直接体験したエピソードが詳細に書かれており、
そこから導き出した結論はまさに時代と合っているからだ。
1部上場企業で正社員としてがんばって働き、
75億円もの売上をたたき出し、社長賞をもらったにもかかわらず、
昇給はほんのわずか。
ところが自分で始めたネットショップは月収500万円。
この先、がんばっても未来のないサラリーマンをするより、
自分のビジネスを真剣に取り組んだ方がはるかにいいと思い、
思いきって会社を辞めるところまでの過程を、
実体験に基づき詳しく書いてあるから、おもしろく読める。
私がつい最近読んで絶賛したホリエモンの著書、
「ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく」もしかり。
小学校、中学校、高校の時のエピソードがかなり詳細に書かれているのが半分。
その実体験をもとに、働き方とはこうあるべきだというのが半分。
前半のエピソードがあるから、後半のうんちく話が説得力を持つのだ。
その意味で「テトラポッドに札束を」は駄作。
私にとって読む価値ゼロ。
素材がいいのに活かしきれていない非常にもったいない本だと思う。
エピソード(実体験)なき正論は説得力がない。
働き方を考えるなら、エピソードがしっかり語られている、
「ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく」堀江貴文著
もしくは
「クビでも年収1億円~人生を好転させる非常識な11のリスト」小玉歩著
をおすすめしたい。
ただ「テトラポッドに札束を」で唯一、共感したのは、
道徳的な観点はさておきと断った上で、
身体障害者や病人や老人は社会に「負担」になっており、
社会に必要とされない人間は存在すると明言していること。
でも彼は障害者になって、「負担」側になりたくなかったからこそ、
ネットビジネスをゲームのようにただ稼げばそれでいいということで、
熱中していったのかもしれないが、その点は弱者だからといって卑屈にならず、
それをプラスのエネルギーに変えてがんばっているのは素晴らしいことだと思う。
だからこそエピソードをしっかり語って欲しかったのに。
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