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福島から避難した原発被災者の苦悩~住民分断政策

子供のために放射能から身を守るために福島県外に避難したが、
福島に残っている人、避難先での住民、ボランティア団体、
反原発団体、メディアなど、ありとあらゆる人との人間関係が歪み、
思ったことも言えず、苦悩し続けている――。

映画「シロウオ~原発立地を断念させた町」を見た方からメールがきた。
福島原発20キロ圏内の町から、県外に避難してきた方だった。
会っていろいろ話を聞いてきたが、福島県外への避難者の苦悩は実に深刻だった。

取材したのは40代の男性Aさん。
東日本大震災直後、国や自治体の避難命令が出る前に、
「原発は危険」と感じ、家族ですぐに避難した。
同居していた両親は「大丈夫だ」といって残ったが、
3人の子供たちの健康被害が心配で、妻と子供を連れて、親戚のいる県外に避難した。

しかし福島県外に自主的に避難した人への目は、
四方八方から色眼鏡で見られ、原発事故による被害者にもかかわらず、
様々な人間関係に苦慮しているという。

<福島に残っている人たちとのいさかい>
県外に逃げた人は、県内にとどまっている人からみると、
「放射脳」に犯された変人、福島の「風評被害」をまき散らす困った人、
といった見られ方をすることもあるという。

「福島には多くの友人や知人が残っています。
このため県外避難した私の意見を言うことは、
福島の人と敵対する覚悟がないと言えません」

なぜ彼らはまだ政府や東電の言うことを信じているのか。
彼らのためを思って、放射線量が高い場所に住んでいる人は、
危険だから避難した方がよいと、できれば言いたい。
でもそんなこと言おうものなら袋叩きだ。

「様々な理由から福島から逃げたくても逃げれない人もいます。
そういう人たちは『ここは危険じゃない』と、自分に信じ込ませるしかありません。
生活の根底を覆すような情報は自然とシャットアウトしたいのでしょう」

Aさんが県外脱出を決められたのは、
若い時に県外に出て働いた経験があるからだろう。
ずっと地元にいて、一度も県外に出たことのない人にとって、
移住の決断をすることは難しい。

Aさんの場合は20キロ圏内で完全に「アウト」な場所だからともかく、
20キロ圏外で自主避難した人への視線はさらに冷たいという。
「なぜ安全な場所からわざわざ逃げるのか」と。

しかし原発事故が起きる前に比べて、
放射線量が10倍以上にもなっている地域が安全なのか?

「私のように子供がいる世帯が考える危険と、
そうではない世代の考える危険とは大きな隔たりがあります。
でも子供たちのことを考えたら、県外避難しかなかった」とAさんは語る。

福島県同士で県内にとどまる人と県外に避難した人との間で溝が広がる。
でもなぜ福島県人同士がケンカをしなければならないのか。
「国や電力会社にとっては好都合でしょう。
被災者を分断させて、被災者同士でいがみあわせていれば、
自分たちに批判の矛先が向けられない。
本当なら県内にいる人も県外にいる人も、みんな力を合わせて、
原発事故を起こした国や電力会社に声をあげていかなければならないのに」

しかも県内にとどまっている人の中には、東電絡みの仕事をしてきた人もいる。
そうした人たちにとっては危険などとは言えない。
自分の職を失ってしまう可能性があるからだ。

到底効果があるとは思えない除染や帰還幻想政策を進める国によって、
その幻想にしがみつかざるを得ない人たちと、
そんなことは無理だと避難した人を見事に分断されていく。

<福島県人を神輿に担ぎたい支援ボランティア・反原発団体>
福島県から県外に避難してきたAさんのところには、
様々な支援ボランティアや反原発団体などからアプローチがある。
こうした方の支援や協力によって助かっている団体もある反面、
正直、迷惑な団体もあるという。

「彼らにしてみたら自分たちの活動の正当性を証明するために、
福島から逃げてきた原発被災者を取り込みたいとの思惑があるのでしょう。
そのため私がこうして欲しいとの想いとは関係なく、
原発被災者を神輿にかついで、自分たちの思う活動を推し進めようとする団体もありました」

例えば、福島を食べて応援するという支援団体。
Aさんは食べて応援なんてもっての他だと思っている。
しかしこうした支援をする人がアプローチしてきて、
Aさんの意志を確認せず、それを応援している「広告塔」として使おうとする。
福島県の被災者もこの活動を応援しています、みたいな。

またイベント大好きボランティアのアプローチも多い。
「被災者支援と称して単に自分たちが楽しんでいるだけでは?」
と思うようなボランティア団体もAさんに接近し、
「福島から避難してきた被災者も楽しんでいます」といった仕立てをしようとする。

「すべてのイベントを否定するわけではありません。
中には被災者同士が交流でき、情報交換ができるなど、
有意義なイベントももちろんあります。
ただ支援団体が楽しむためだけ、被災者にとっても、
それは単なる一過性のガス抜きにしかならないイベントも多いのも事実。
もう原発事故から3年が過ぎようとしている今、
ボランティアが楽しむために被災者が引っ張りだされて、
その時だけ楽しかったというイベントをしてもあまり意味はないのではないか」
とAさんは話す。

反原発団体にとっても福島県外から避難してきた被災者は、
喉から手が出るほどほしい「広告塔」だ。
確かに原発反対では一致している。
でもこうした団体の活動には微妙な違和感を覚えるという。

「移住してきて生活のこともあるのに、
顔出し、実名で被災者を名乗って大勢の前でスピーチしろと言われても、
簡単にできるものではありません。
生活再建に支障をきたす場合もあります。
でもそこで断ると、福島の人なのに協力的でないと非難されてしまいます。
声を上げることは重要ですし、原発反対には賛同しますが、
今、県外避難者にとって重要なのは生活再建なので、
そこを無視して反原発のためなら、
原発被災者をとにかく利用してやろうというのは困ります」

利用したいなら利用したいと正直に言えばいい。
ところがボランティアにしても反原発団体にしても、
「福島のためを思ってやっているのに!被災者のためを思ってやっているのに!」
と言われるのが何より困る。
本当にそうなら、なぜ被災者に自分たちのしたいことを押し付けるのだろうかと。

ただ反原発団体が福島県の原発被災者を取り込みたいという焦りは、
わからなくもないとAさんはいう。
安倍自民党政権が誕生し、原発再稼働を推進しようとしているからだ。

反原発団体が悪いわけではない。
福島で原発事故が起きたにもかかわらず、
原発を平然と推進しようとしている国が悪い。

ただ原発被災者が生活再建に支障をきたすリスクを負ってまで、
原発反対運動をしなければならないのか。
国に対する憤りは高まるばかりだった。

<悲惨な映像だけを撮りたいマスコミ>
仕事も失い、生活基盤も失い、県外での避難先での生活再建を進めているAさんだが、
県外避難者の追いつめられた状況を訴えようと、政治家や行政に話をしたことも何度もある。

しかしある国会議員はこんなことを言ったという。
「陳情や請願なんて1日に見きれないぐらいあるから、
1つ1つを精査している暇なんかない。
何か訴えたいことがあるなら、スポンサー見つけて、マスコミに訴えた方がいい」
これが政治家の言うことか、と怒りがわいたが、
政治家に訴えてもどうにもならないのなら、マスコミを使うしかないと思った。

原発避難者の苦境とその支援のあり方について、マスコミに何度もアプローチした。
中には親身になってこうした問題を取り上げてくれる記者もいた。
しかしセンセーショナルな映像や情に訴えるものがないと、
テレビではなかなか取り上げてくれなかった。

福島から県外に避難してきたAさんを取り上げようと、テレビが動いてくれたこともあった。
Aさん自身は顔出し、実名でも構わないと了承した。
しかしテレビ制作側からは、Aさんだけのコメントでは番組にならないという。

県外避難によって体調を崩して顔色が優れない妻を出し、
かつ県外避難によってストレスを抱えているAさんの子供を映し、子供にもコメントをもらうこと。
それが条件だった。

Aさん自身はいい。
でも妻や子供が出れば、やっと馴染んできた県外での生活に、支障をきたす可能性がある。
特に子供は微妙だ。
学校でいじめられる材料にされたりしかねない。

もちろんテレビの言うこともわかる。
40代の男性が出て窮状を訴えるより、
女、子供の絵があった方が多くの人に訴えられる。
でも家族をリスクにさらしていいのか。
その時は「かわいそうだな」と同情してくれる人は多くいるかもしれないが、
単なるその場限りの同情番組で終わってしまうのではないか。
そのために家族をメディアにさらすことはできないと判断した。

<被災者をつなぎ、行政を動かす活動を>
どうにもならない状況に追い込まれた福島からの県外避難者。
Aさんはなんとかこの事態を打開しようと、今は、
国や電力会社のいいように分断されてしまっている、
原発被災者のネットワークづくりに励み、
原発被災者の声を集めて、今、行政や政治を動かそうと、様々な活動をしている。

「誰かがやってくれるのではと思っていたけど、ただ待っているだけでは誰もやらない。
自分が状況を打開するために活動しなければと考え直しました」とAさん。

また「自分の意見を言えば、あちこちから非難されることを恐れて、
今では意見をはっきり言わないようにしていたが、
それではどうにもこの状況をよくすることはできないと思い、
今では自分の意見をはっきり言うようにしています。
そのおかげで非難する人がいても、私の真意をわかってくれて、
支援や協力をしてくれる人も現れました」とAさんは語る。

原発事故はこうした「目に見えない」様々な被害を及ぼしている。
中でも避難者の心理的なストレスは大変なものだ。
それによって体調を崩した人も多くいる。

しかし本来であれば、みんなで団結して事故の責任や賠償を、
国や電力会社に求めていくべき住民同士が、
国や電力の巧みな政策によって分断され、いがみあっている状況がある。

真の敵は誰なのか。
被災者同士でいがみあっている場合なのか。

映画「シロウオ」に登場する、原発賛成から反対に転じた和歌山の元町長さんは、
原発計画の話がきたことで住民の仲が悪くなってしまう状況を見て、
「これはいかん、貧しくとも住民同士が仲のいい暮らしが一番」と考え、原発反対に転じた。
徳島の畜産農家の方も原発話によって住民同士が分断されていく様子を見て、
「こんな状況で原発がきたら大変なことになる!」と考え、原発反対を貫いた。

原発がもたらす最大の被害とは、
住民同士が分断されることなんだとつくづく思う。
それは福島県に限った話ではなく、今の日本全体がそうだ。
推進派と反対派にわかれて今もいがみあいが続いている。

こうした「被害」は数字には算定できないが、
社会に様々な悪影響を与えているのではないかと思う。
でも原発をまた動かそうとしている。
原発事故も収束せず、原発被災者の賠償なども解決しておらず、
原発のゴミ問題すら何ら解決していないにもかかわらず。
問われているのは国民一人ひとりの原発に対する意識。
推進だろうが反対だろうが、考えた末の結論ならそれはいい。
問題なのは原発なんて他人事だと考え、無関心でいる人ではないか。

だからこそ福島で原発事故が起きた。
原発事故が起きた今、原発について真剣に考えなくてはならないと思う。

別に私は福島の人に同情しているからこうした記事を書いているわけではない。
福島の人が置かれた苦境を、関東の人だろうと、大阪の人だろうと、
原発を動かし続ける限り、同じような苦境に陥る可能性があるからだ。
福島は他人事ではない。

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by kasakoblog | 2014-02-01 20:53 | 東日本大震災・原発

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