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映画タイトルは「シロウオ」でなく「ウミガメ」だった?!~映画制作秘話

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原発計画がありながら、原発マネーにたぶらかされず、
住民の反対運動によって、原発を阻止した徳島と和歌山を舞台にした、
ドキュメンタリー映画「シロウオ~原発立地を断念させた町」ですが、
時々、聞かれるのが「なぜタイトルが『シロウオ』なんですか?」という質問。

タイトルの意味については、映画を見た人それぞれの解釈があっていいと、
監督の私としては思っているものの、監督の意図を聞きたいという質問も結構あり、
また映画公式パンフレットでプロデューサーが、
タイトルの意味を若干解説している部分もあるものの、
私がつけた意味合いはまったく違っているので、
なぜ私が「シロウオ」とつけたのか、興味のある方は読んでいただければ。
ただ私とプロデューサーの解釈が違うように、いろんな見方があっていいとも思っています。
(ネタバレ注意)

■食は命の根源
プロデューサー説は、シロウオ漁の際に投げ込む小石が原発マネーに見えたから、
とのことなのですが、
私は徳島の蒲生田岬の民宿「あたらしや」の若女将が、
「食は命の根源である」という言葉がすごく印象に残っており、
川でとれたシロウオを「かわいそう」と近所のおばさんたちが言いながらも、
生きたまま踊り食いをする様子を見て、シロウオを食の命の根源の象徴と考え、
このタイトルにしました。

原発計画を阻止したからこそ、原発のせいで食べ物が汚染されることなく、
生きたまま魚を食べることができる。
人間は食べ物でできている。食べ物が汚染されたら終わり。
空気、土、海が汚されたら人間は終わり。
原発とは人間の命の根幹を奪う危険性のあるものである、
との思いから、食は命の根源の象徴としてシロウオというタイトルにしました。

■タイトル「シロウオ」を却下しようとした時期もあった
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タイトルの「シロウオ」はプロデューサーの矢間氏がつけたもの。
矢間氏は映画製作の前段階で、原発を阻止した徳島県阿南市椿町を訪れた際、
椿川で四つ手網で行われるシロウオ漁を見て、思いついた。

椿町のシロウオ漁では川に向かって小石を投げる。
その姿を見た矢間氏は「小石を餌と間違ってシロウオが網に寄ってきて、
一網打尽にされる姿は、まさに原発マネーという小石に群がって、
一網打尽にされる原発立地自治他の住民そのものではないか」との思いから、
「シロウオ」という仮タイトルをつけた。

2013年3月にシロウオ漁の撮影のため、私、矢間氏、カメラマン、録音マン、
水中カメラマンの5人で訪れたのだが、
シロウオ漁をしている方に「なぜ小石を投げるのか」という質問をすると、
よくわからないけど、石を投げると驚いて網の方に寄ってくるからではないのか、
といった答えもあり、どうも小石=疑似餌説は違うらしいということがわかった。

また和歌山でも同じようにシロウオ漁が行われており、
漁とシロウオ祭りの様子を1日がかりで撮影したものの、
・和歌山では小石を投げない
・シロウオ漁をしている湯浅町が、
原発立地計画があった日高町から少し離れていて、
原発との関連性が見出せないとのことから、
私の判断で、和歌山のシロウオ漁の様子は、映画でまったく使わないことにした。

和歌山でもシロウオ漁があり、徳島でもシロウオ漁があり、
かつ双方ともに小石を投げ、それが疑似餌であれば、
映画全体をくくるタイトルとして「シロウオ」でよかったものの、
どうもそうではないらしいとのことから、
私の方では「シロウオ」というタイトルはやめて、
違うタイトルにしようと思っていた時期もあった。

私の方で考えた仮タイトルとして、
「いのちのリレー」「いのちのバトン」といった、
子や孫のために土地を守り、命を引き継いでいくという意味を込めた案があったものの、
あまりキャッチ―ではなく、
ありきたりな感じもあり、タイトル保留のまま、映画のロケを進めた。

■シロウオよりもウミガメ!
シロウオ漁の撮影を終えた2カ月後に、再び徳島にロケへ。
その際、原発立地が計画されていた蒲生田岬の集落にある、
「あたらしや」という民宿に宿泊した。
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当初「あたらしや」さんに映画に出演してもらう予定はなかったものの、
民宿の若女将にちらっと話をふってみると、
「お母さんは原発反対運動してましたよ!」との回答が。
その様子を子供ながらにいろいろ見ていたというのと、
若女将さんのこの土地に対する思いや故郷に対する思いが素晴らしかったので、
急きょ、映画に出てくださいとのことで出演をお願いし、
若女将のインタビューを撮影することになった。

若女将のインタビューの中でウミガメの話が出た。
蒲生田岬そばにある浜辺では毎年ウミガメが産卵のために帰ってくるという。
ウミガメはどんなに遠く離れても、必ず毎年、故郷に帰ってくる。
ウミガメが蒲生田に帰ってこれるのは、原発ができず、
豊かな自然が残されたからではないか。
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その時、ふと映画タイトルは、
「シロウオ」より「ウミガメ」の方がいいのではないかと思った。
原発計画を阻止したから故郷に戻ってこれるウミガメ。
でも原発を建ててしまった福島の原発立地自治体は死の町と化し、
故郷に住めなくなり、住む人は故郷に戻れなくなってしまった。

私もプロデューサーの矢間氏も、
この映画は徳島や和歌山を撮影していながら、
見てもらう人に考えてほしいのは福島原発事故のこと、
との思いでは一致しており、
「福島を舞台にせず、福島を描かずとも、
福島を浮かび上がらせる映画にし、
あらためて福島原発事故や原発の存在を問いたい」
との思いでは共通していたので、
私の中で「ウミガメ」というタイトルもおもしろいんじゃないかと思ったものの、
「ウミガメ」にしてしまうと、カメがテーマの、
生物ドキュメンタリーに間違われやしないかとの思いもあり、「ウミガメ」は却下した。

■「シロウオ」のシーンを全カット?!
すべての撮影を終えて、編集作業に入った。
10数名にインタビューし、1人1時間~3時間ぐらいインタビューがある。
それをどんなに長くても2時間以内にまとめるというのが、
監督の私に課せられた作業だった。
ここでなかなか撮影したものを切ることができず、
だらだら長々としたものになってしまうのだが、
私が全撮影映像を見て、はじめに必要なシーンを抜き出した第一段階の選別作業で、
3時間ぐらいに絞れたので、残り1時間程度、削ってうまくまとめればよくなった。

その中で迷ったのが「シロウオ漁」のシーン。
タイトルを「シロウオ」にしないのなら、シロウオ漁を使う必要はない。
シロウオ漁の部分をカットすれば、住民のインタビューを多く活かせる。
一時は思い切ってシロウオ漁を全カットしようと思ったのだが、
民宿「あたらしや」の若女将の「食は命の根源」という話を聞き、
地元のおばちゃんたちが、かわいそうといいながら残酷にも、
シロウオを生きたまま踊り食いで食べてしまうという話を聞き、
シロウオ漁は人間の命の源となる食の象徴として使えるのではないか。
それならタイトルがシロウオであっても、
原発映画としての意味合いになるのではないか。
何よりも「シロウオ」って覚えやすい映画の名前なのでいい。
そんなわけで映画タイトルを「シロウオ」にすることにした。

・・・・・
シロウオの名付けの親は矢間プロデューサーではありますが、
私の方で一度却下も考えたものの、シロウオにこの映画の根底となる、
テーマを表現することができると考え、シロウオというタイトルにしました。
映画の感想アンケートを見ると、私の解釈を感じ取った方もいました。
もちろん「そんな意味だったなんて知らなかった」とか、
「別の意味なんじゃないか」とか「別にたいした意味なんか見出せない」とか、
いろんな意見があっていいと思っているので、
私は上映後の監督トークで、見た人から質問がない限りは、
映画や映画タイトルの解説をしないようにしています。

ただ質問が多いのと、見た人には後で監督の解釈を知ってもらってもいいかな、
との思いで、ブログで紹介することにしました。

でもほんと映画っておもしろいですね。
この映画は感想アンケートをとると、回収率もよく、
びっしり書き込んでくれる人が多くいます。
何かいろいろと書きたくなる映画みたいで、それは私としては非常にうれしい。
なぜなら見る側に解釈の余地があるから。

それと映画の感想では真逆の意見がいっぱいあって、
「テロップをもっといっぱいつけるべきだ!」という人がいたかと思うと、
「テロップはなくてもよかった!」という人もいて、
「いや今のでちょうどいい」といった具合に、
人によってテロップ一つとっても意見が分かれて、
なんだか映画っていろんな見方があるから、おもしろいなと思っています。

6月以降も上映がありますので、ぜひ映画「シロウオ」を見ていただけたら、
監督としてうれしく思います。

※ちなみに「シロウオ」と「シラウオ」は別の魚です。
参考サイト
http://www.town.yuasa.wakayama.jp/kankou/sirouo/seitai2.html

・映画シロウオ上映情報
http://www.kasako.com/2013eiga4.html

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by kasakoblog | 2014-05-25 23:00 | 東日本大震災・原発

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