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料理の仕事だけはしたくないと思っていたのに料理家に~料理家タカコ・ナカムラ・インタビュー

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「絶対に料理だけは仕事にしたくない」。
50度洗い、低温スチーミング、塩麹のレクチャーほか、
ホールフード(まるごと料理)やベジブロス(野菜だし)などの普及に力を入れ、
料理家として活動しているタカコ・ナカムラさん(56歳)。
実は20代半ば頃まで、絶対に料理関係の仕事はしたくないと思っていた。

実家は山口にある割烹料理屋。
料理を仕事にする家に生まれたため、
家族でゆっくり食事をする時間がなく、
まるで料理は「戦争」のような大変な騒ぎ。
こうした経験から、料理だけは仕事にしたくないと思っていた。
理想は、静かなサラリーマン家庭を築くこと。
大学は京都産業大学の経営学部で学び、卒業後は大阪の一般商社に勤めた。

しかしこの頃、四大卒の女性の地位は低かった。
まるでコマのような扱い。
「このままでは自分の未来がない。何か手に職をつけたい」と考え、
思いついたのがメーキャップアーティストだった。
「人をキレイにしてあげることが好き」だったからだ。
商社に勤めながら、専門学校に通った。

しかし関西にいたのではメーキャップの仕事は少ない。
約1年で商社を辞め、上京。
自然食品を取り扱う店の化粧品部門で勤めながら、
メーキャップの仕事を模索していた。

タカコさんは仕事で出会うモデルさんたちを通じてあることに気づいた。
美しい人は必ずと言っていいほど食生活に気を使っている。
化粧で顔を塗りたくるだけで美人になるわけではない。
何よりも食生活が重要なんだということに気づかされた。

もちろん美しく魅せるという意味でメイクは重要な仕事。
でも表面だけキレイに見せても、中身がキレイでなければ、
本当の美しさを表せないと知り、食に興味を持つようになった。

そんな時、マクロビオティック(穀菜食が主体で肉類は禁止)の料理教室に誘われた。
何度か行ったものの、そこの教室での雰囲気は好きになれなかった。
新興宗教的な雰囲気もあり、何より料理が貧相でまずそうに見えたからだ。
でも理念は素晴らしいと感じた。
農薬や添加物は使わない。
野菜は根や茎などまるごと摂取するなど、
これまでの食生活とはまったく違う理念に共感。
きちんと食生活や料理のことを学ぼうと考え、
20代半ばからバックパックを背負い、アメリカに何度も勉強しに行った。

そこで出会った言葉。
それがホールフードだった。
ホールフードとは、普段、料理で捨ててしまう皮や根っこなども、
すべてまるごと食べること。
食べ物を無駄にしない概念に感銘を受けた。

でもそれ以上に、タカコさんがアメリカで感銘を受けたのは、
農業や環境、暮らし、すべてをひっくるめて、
安全、健康に気を使っている思想だった。

「食べ物だけ気にすればいいわけではない。
ホールフードとはライフスタイルも含めた生活提案なんだ。
この考えを日本で広めていきたい」
そんな思いを強く抱いて、アメリカから帰国した。

帰国後、タカコさんが29歳の時(1989年)に、
自然素材を使ったお菓子店のプロデュースを任されることに。
アメリカで学んだことを活かして、素材にこだわった商品を心掛け、
店の運営をしたところ、1年で売上が急上昇。
オーナーから居ぬきで店を購入することになった。
メーキャップアーティストめざして上京したはずが、
食関係の仕事につくこととなった。

「でも私自身が作っていたわけではありません。
私がしていたのは店の経営。資金繰りや経理のことばかりでした」という。

2003年には、ホールフードをコンセプトにしたカフェ、
「ブラウンライス・カフェ」を表参道にオープン。
これまで自然食というと貧相でまずそうなものが多かったが、
おいしくてオシャレな健康的な料理の提案をしたいと考え、このカフェで具現化した。

ホールフード普及の大きな足掛かりができたものの、
経営に追われる日々に疑問を持ち、自身は店のプロデュース面に徹して、
イギリスに本拠を持ち、エッセンシャルオイルなどを手掛ける、
ニールズヤードレメディーズに経営を任せることにした。

会社の経営から手を離れてラクになったタカコさんは、
ホールフード普及のため、ブラウンライス・カフェの隣で、
「ホールフードスクール」を開講。
料理の仕事は絶対にしないと思っていたにもかかわらず、
いつしか料理を教える先生になっていた。
料理だけでなく、ホールフードの概念を広めるため、
食と暮らしをトータルで教えている。

その後、表参道のスクールから独立。
大田区の洗足池に自身の料理教室をオープンし、
料理を教えることを中心に活動を行っている。

ただタカコさんには悩みがある。
なかなかホールフードの概念が広まらないことだ。

「私の場合、何を食べてはいけないといった決まりがあるわけではありません。
また、これを食べればキレイになる!とかダイエットになる!
といったように、単品のものを勧めているわけではありません。
このためなかなか広まりにくいのが現状です」

私個人は健康に気を使って、あれを食べちゃいけないとか、
これを食べちゃいけないとかいうのは正直どうかと思っている。
あれもダメ、これもダメといっていたら、人生楽しくないじゃないか。
体が健康になったとしても心が不健康になれば、いずれ体もおかしくなる。

「特に若い女性はあれもダメ、これもダメ、
これだけ食べれいればいいといった主義にハマってしまいがちです。
わかりやすいというのもあるでしょうし、ゲーム感覚でトライできるからでしょう。
でも本当の健康ってそういうことではないんです。
食生活ももちろん大事ですが、その食はどうやってできているのかとか、
生活全般をどんな風に過ごしているかも大事。
それもひっくるめてライフスタイル全般の提案として、
ホールフードの概念を広めていきたい」とタカコさんは言う。

「何を食べちゃいけないということより、
料理はできれば自分で作ることが、健康オセロの1枚目。
健康オセロの2枚目は、安全できちんとした作り方をしている、
生産者さんのものを物を買うことです」とアドバイスする。

「どんなにエクササイズをしようが、
食生活がダメだったら健康にはなれません。
人間は食べ物でできている。
だから食べる物にもっと関心を持ってほしい」


原発立地計画を断念させた町の住民に話を聞いた時、
私が一番、印象に残っているのは、「食は命の根源」という言葉だった。
また以前に、クスリ漬けの治療で治らなかったのに、
食生活を変えたら病気がよくなったという話を聞いたことがある。
利益至上主義のための現在の食のシステムのせいで、
ならなくてもいい病気になったりする人が多いのではないか。

人間は食べ物でできている。
食べ物について「ホールフード」という概念をもとに、
食生活や暮らし全般を見つめ直すことが必要なのかもしれない。

・タカコ・ナカムラホールフードスクール
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by kasakoblog | 2014-06-12 21:35 | 生き方

好きを仕事にするセルフブランディング&ブログ術を教えるかさこ塾主宰。撮影と執筆をこなすカメラマン&ライター。個人活動紹介冊子=セルフマガジン編集者。心に残るメッセージソングライター。


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